“女王”全美貞を追い詰めたが・・自ら失速したさくらに麻子。 外国勢に席巻された3ツアー!

164センチの上背に長い足。体格にも恵まれた藤本麻子の力強いドライバーのダウンスイング。勝っていけば人気上昇は間違いない!
164センチの上背に長い足。体格にも恵まれた藤本麻子の力強いドライバーのダウンスイング。勝っていけば人気上昇は間違いない!

 10月最後の週は男子、女子、シニアの3ツアーとも外国人に優勝をさらわれて日本勢はそろってしょんぼりの日曜日でした。男子のマイナビABC選手権は韓国生まれ、2歳のときに米国に移住した韓国系米国人、ハン・リー(35)が日本ツアー参戦5年目で悲願の初優勝で賞金3,000万円。女子の樋口久子・森永製菓ウイダーレディスは賞金レース、トップを走る全美貞(ジョン・ミ・ジョン、29=韓国)が抜群の強さで初日からの首位を守りきり、今季4勝目の1,260万円。シニアの日本シニアオープンのメジャーではフランキー・ミノザ(比国、52)、中嶋常幸(58)、室田淳(57)、井戸木鴻樹(50)が雨中のデッドヒートを演じた末、中嶋、室田が大詰で約1メートルのパットをともにミスしてF・ミノザが“ゴッツアン”のシニアツアー2勝目。賞金1,600万円を持ち去りました。中でも女子の新鋭・藤本麻子(22)は、最後まで全に食い下がってツアー2勝目を目指しましたが、全の厚い胸に跳ね返され、悲しい3位でした―。

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横峯さくらのドライバーショット
横峯さくらのドライバーショット

 千葉・森永高滝CCで繰り広げられた女の熱い戦い。初日から首位を走る“女王”ジョン・ミ・ジョン打倒に燃えた日本勢。森永製菓とスポンサー契約をしている宮里美香も米ツアーから帰ってきて参戦していました。今季優勝のない横峯さくらもシーズン終盤にきてあせって?います。今秋の米ツアー予選会に挑戦している有村智恵も、森永とスポンサー契約をしている一人。昨年プレーオフの末に初制覇をした大会だけに気合が入っていました。服部真夕や藤本麻子の若手もあわよくばと今季2勝目がターゲットでした。
 最終日、最終組まで粘ったのは、全のほか藤本、さくらの2人。今季、出場27試合目で実に11回目の最終日、最終組の全美貞の壁は高くて厚いのですが、3位からの逆転を狙ったさくらはショットが不安定です。2番では10メートルのバーディーパットを決めるなど2つ伸ばした出足でしたが、7番で3メートルのパーパットを外し、8番では3パットの連続ボギーを犯して流れを自ら止めてしまいました。結局パープレーでスコアを伸ばせないのでは全は掴まえられません。
 

今季も未勝利の横峯さくら。復活近しといわれながら、なかなか優勝に届かない。今季も残り3試合。さくらスマイルは出るか?!
今季も未勝利の横峯さくら。復活近しといわれながら、なかなか優勝に届かない。今季も残り3試合。このさくらスマイルは出るか?!

 「全然ですね。感触は悪くなかったんだけど、徐々にそれがなくなってきて・・。最後の方は“あれっ、どうだったっけ”となってしまった。やっぱりティーショットですね。不安があってどのショットにも影響してしまった。先週は自分のプレーに徹することができたのに、今週はちょっと慣れてしまって疎かになった」と敗戦の弁。

 前週のマスターズGCレディスでは、最終日に73と失速してプレーオフに持ち込まれ、敗退するという最悪のパターンでした。2週続きで韓国選手に敗れ「ミ・ジョンはすごい。パッティングもうまいし、ショットもうまい。優勝するときって、あんな感じなのかな?」と、ハットオフするばかりで、強かったときのさくらの勢いがまだ戻ってきていません。結局、全には7打差をつけられ通算5アンダーで4位タイに沈みました。

プロ4年目。体育会系のたくましいスイングで魅力を発散する藤本麻子。ツアー2勝目が早くほしい。
プロ4年目。体育会系のたくましいスイングで魅力を発散する藤本麻子。ツアー2勝目が早くほしい。

 最後まで、全に食い下がったのは若い藤本麻子でした。2打差の2位で出て前半終了時点では1打差と迫りましたが、全は11、13番で着実にバーディーを重ねて差を開きます。15番では、横峯さくらが「あんなドラマがあるなんて・・。ゴルフは奥深い」と感嘆した20メートル近い長いパットを、しかもほぼ半円を描くフックラインを読みきって30センチに寄せるパーセーブですきをみせません。逆に、追う藤本が16番(400ヤード、パー4)で右のクロスバンカーにつかまり、9Wで2オンを狙った第2打をトップして低いアゴにあて、右後方に跳ね返るドラブル。第3打もグリーンをオーバーして痛恨のダブルボギー。追撃もここで息絶えました。
 「自分でつぶれてしまった。9番ウッドがトップ気味に入ってアゴにあたった。まあここまではなんとかついてきてたんですが、12番のロングとかバーディーチャンスのタッチが弱くて打ち切れず、相手に余裕を持たせてしまった。ミ・ジョンさんを追いかけられたのは、15番まででした。でも3日間、自分らしいプレーができたと思う。ミ・ジョンさんの、“攻めながら守りきる”プレーはすごく勉強になった」

安定したショット、パットで断然の強さをみせる全美貞。初の賞金女王にも“王手”をかけている。
安定したショット、パットで断然の強さをみせる全美貞。初の賞金女王にも“王手”をかけている。

 藤本は70では回りましたが、ヤング・キム(韓国)に抜かれて4打差の単独3位。賞金は490万円を得て、1,994万5,000円。ランク50位に低迷してシード権キープが危なかったのですが、この単独3位で43位に上昇。シード権は“当確”となりましたが、残る試合は2試合。このどちらかに勝てば最終戦のLPGAツアー選手権リコー杯に出られます。「あと2試合(LPGAツアー選手権リコー杯を除く)、体調を整えて勝って、リコーカップに絶対出たい。最後まであきらめません」と、敗れていま一度、気合を入れなおす麻子でしたが・・。

 迫ってくる日本勢を次々と振り落とす全美貞の強さは格別です。後続に一度も並ばれることもなく5アンダー、1ボギーの68で回り、通算12アンダーとして初日からの首位を守りきる完全Vでした。07、09年に続く年間自己最高の4勝で、ツアー21勝目。
 「きょうは楽しかった。ショットもパットも思い通りに打てました。年間4勝を更新して、賞金女王もとれるなら・・」
 と余裕の優勝コメント。
すでに1億円を超えている獲得賞金は、2位のアン・ソンジュ(韓国)を約2,300万円の大差をつけて引き離し、初のマネーキングへ大きく前進しました。
 外国勢に蹂躙(じょううりん)される女子ツアーですが、今年もあと3試合、最後の激戦をみせてほしいものです!