“イーグル王”から“賞金女王”へ。森田理香子、POでさくらを降す実力が・・。

開幕戦をプレーオフで制し、笑顔で優勝トロフィーを掲げる森田理香子
開幕戦をプレーオフで制し、笑顔で優勝トロフィーを掲げる森田理香子

 ドライバーで270ヤード近く飛ばすロングヒッターが、見事に開幕戦(ダイキンオーキッドレディス・沖縄琉球GC)を制覇しました。プロ6年目の森田理香子(23)。4つ年上の横峯さくら(27)とのプレーオフを1ホール目のバーディーでねじ伏せる堂々のプロ3勝目。昨季は11イーグルをマークして、ツアー年間最多イーグルを16年ぶりに塗り替えた本格派の登場です。ルックスもA級。3年連続で女王の座を奪われている手ごわい韓国勢をむこうに回して、4年ぶりの日本人賞金王へ、夢ではないロケットスタートです。

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 米女子ツアーの今季開幕戦に勝った申ジエ。昨年の米賞金女王・朴仁妃(パク・インビ)はいませんでした。2年連続日本賞金女王を目指す全美貞(ジョン・ミ・ジョン)は下位に沈み、昨季日本ツアーで3勝して賞金ランク2位のイ・ボミは予選落ち。全米女子プロと日本女子オープンの日米両メジャーを制覇したフォン・シャンシャン(中国)の顔も見えませんでした。手ごわいアジア勢の主力が不在の上、地元の宮里藍はタイで玉突き事故に巻き込まれ、首の“むち打ち症”で欠場・・。大きなチャンスのある舞台でした。

ドライバーは270ヤードを楽に飛ばす飛ばし屋・森田理香子
ドライバーは270ヤードを楽に飛ばす飛ばし屋・森田理香子

 森田は、その好機を逃がしませんでした。初日から68を出して2打差の4位スタート。2日目はさらに伸ばして67で1打差の2位にピタリ。1位に立ったのが、初日はプロ2年目の山村彩恵、2日目も若い木戸愛と、森田にはくみし易い相手でした。最終日は先頭を走った2人が落ち、66のベストスコアで浮上してきた横峯さくらとの勝負。並んでいた17番では、フェアウェイからの105ヤードを1メートル弱にからませて森田がバーディー。1打リードで迎えた最終18番。理香子は第2打がグリーン左のバンカーにつかまって、脱出にも失敗。4打目でピンそばにつける冷や汗のパー。2オンした横峯さくらのバーディーで13アンダーに並ばれましたが、今年の理香子は少しも慌てませんでした。バッグを担いでもらったのは、男子昨季の賞金王、藤田寛之の専属キャディーの梅原敦氏(38)。「藤田さんと変わらないくらい落ち着いていて、常に上位を目指しているのは凄い」と梅原さんも賛辞を惜しみませんでした。

 2人のプレーオフは18番。ドライバーを右ラフに入れた理香子は5Wで刻み、残り45ヤードをピン4メートルにつけて粘りました。5メートルに3オンしたさくらのバーディーパットが外れたあと、理香子はスライスラインに乗せた4メートルのバーディーパットを、真ん中から決めてベテランさくらをつき離しました。09年は2オーバーの43位。10年は初日首位も2日目以降崩れて3オーバー32位。11年は6アンダー、5位。12年は7アンダー、9位。13年、5度目の挑戦で高麗芝の琉球GCを13アンダーでついに征服しました。このスコアをみても、年々着実に腕を上げている理香子のゴルフは明確です。

 京都市生まれ。8歳からゴルフを始め足立香澄プロに師事してアマ時代から大型選手として注目されました。京都学園高2年で全日本のメンバーとして活躍。高校の1年後輩に同期プロ入り(08年)の櫻井有希がいますが、いまでは大きく水をあけたといえそうです。09年からは岡本綾子の門下生となりましたが、表純子、服部真夕、若林舞衣子、青山加織らの岡本門下の中でも最も若い生徒です。10年からは岡本の計らいで、シーズンオフはソフトボール、日本リーグの日立マクセル京都のメンバーに交じってハードなトレーニングを続けています。
 164センチの上背を生かした本格派のスイングは日本の女子プロでも大きな期待がかかっている選手です。岡本綾子のゆったりした大きなスイングをお手本にして「リズムよくテンポよく」を肝に銘じて練習を続け、師匠の岡本プロからも「ずいぶんスイングはよくなってる。自信を持ちなさい」と、いわれているそうです。昨季、11イーグルを奪って、福嶋晃子がもっていた年間9イーグルを久々に更新したばかり。今季も開幕戦の初日11番(パー5)で、残り192ヤードの第2打を4番アイアンでピン5メートルに2オン。これを決めて早くも今季1個目のイーグルを記録しています。

体いっぱいを使って振る森田理香子のドライバーショットは、女子プロトップ級の長打力を秘めている。
体いっぱいを使って振る森田理香子のドライバーショットは、女子プロトップ級の長打力を秘めている。

 開幕戦で優勝できた理香子今季は洋々たるものがあります。ルックスもよく、しかも“飛ばす女子プロ”は、より大きな魅力を秘めています。8月1日開幕のメジャー、全英リコー女子オープン(セント・アンドリュースオールドコース)は、理香子が所属契約を結ぶリコーのスポンサー試合です。昨年は出場を見合わせたので、今年こそ出場して好成績を残したい。これが今季の第1目標でもあるそうです。海外メジャーを好成績でクリアできれば、その先には日本のマネークイーンが待っています。

 開幕戦に勝つと、気が緩むのか、そのあとがさっぱりで竜頭蛇尾のシーズンに終わる選手も少なくありません。理香子は「岡本さんからまた課題をもらっていけば、賞金女王も夢じゃない。残り35試合、死にもの狂いでやっていきたい」と、強い意思でこうしたジンクスも吹き飛ばしたいと意気込んでいます。
プロ6年目。勝って泣く、“泣き虫・理香子”も返上した今年、3年連続で韓国勢にさらわれた女王の座奪回へ、日本勢の先頭に立ったといえるでしょう。
理香子の優勝コメント

 「これまで2勝してすぐ泣き、負けては泣いていましたけど、今回は笑顔でいれました。泣いてばかりだと、あんまり格好よくないかなと思ったのと、気持ち的にも少し余裕ができたんだと思います。スイングが去年よりよくなって、もう曲がらなくなったと思える自分がいて、落ち着いていました。岡本綾子さんから紹介してもらったソフトボールのマクセルさんいお世話になるようになってもう4年目。それから自分の体や精神的なことが変わってきたんじゃないかと思います。オフにやったからということじゃなくて、ずっとやり続けてきたことが開幕戦にで出ただけで、開幕から勝てるとは思っていませんでした。岡本さんの昔のスイングを、Youtubeで見て、自分のスイングと違うところを探したりしています。左手のリストの使い方とかは、課題にしているところなので特に注意してみています。一緒に回ったさくらさんがバーディーラッシュで凄いなぁと思って、でも勝負は後半からだと、いつも言われているので、気持ちはそんなに焦りとかはなかったです」