森田理香子、全美貞を振り切った“無名”の24歳。「2位じゃダメ。勝って有名になりたい」ー有言実行を果たした一ノ瀬優希!

ピンゴルフと用具契約している一ノ瀬優希。ピン首脳との2ショット。同じピンゴルフと用具契約を結ぶ大山志保とは1月米アリゾナ州フェニックスで約1ヵ月一緒に合宿し、いろいろアドバイスを受けた。
ピンゴルフと用具契約している一ノ瀬優希。ピン首脳との2ショット。同じピンゴルフと用具契約を結ぶ大山志保とは1月米アリゾナ州フェニックスで約1ヵ月一緒に合宿し、いろいろアドバイスを受けた。

 「2位じゃ覚えてもらえない。優勝して早く有名になりたいんです」ー不動裕理、古閑美保、上田桃子らを輩出した熊本生まれ。負けず嫌いな24歳・一ノ瀬優希が、開幕第3戦、Tポイントレディス(鹿児島高牧CC)で、やっと訪れたビッグチャンスを手に入れました。2日目に首位に立ち、今季日の出の勢いの森田理香子、前週優勝、昨年の賞金女王・全美貞(ジョン・ミ・ジョン)らの強敵を振り切っての1打差14アンダーでの勝利。またひとり、肝っ玉の据わったニューヒロインが、女子プロ界に誕生しました。熊本出身の女子プロツアー優勝は、一ノ瀬優希で11人目、合計129勝目の“王国”を誇っています。

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開幕戦から3戦連続3位以内。ツアー制施行後では初の快挙の森田理香子
開幕戦から3戦連続3位以内。ツアー制施行後では初の快挙の森田理香子

 父親はシニアの一ノ瀬喜一郎プロ。小学校時代はバトミントンに熱中したそうですが、中学に入って「父親がやっているゴルフをしようかな」と、12歳で軽い気持ちでクラブを握ったとか。もちろん師匠は父親。「才能がなければ努力しろ」と厳しい叱咤(しった)を受け、負けず嫌いの性格も手伝って「遊びもせずに」練習に没頭したそうです。16歳で日本女子アマに出ていきなりベスト16入り。17歳の05年には九州女子アマ2位で、その年JGAのナショナルチームメンバーにも選ばれています。Tポイントで最終日、デッドヒートを演じた一つ年下の森田理香子は、そのナショナルチーム時代の僚友で、ジュニア時代は親しくしていた後輩でもありました。

 未勝利の優希にとってプロ初めての最終日、最終組。森田理香子と全美貞が同組というしびれる組み合わせでした。3打のリードで迎えたその最終日、1番では2メートルのパーパットを外してボギースタート。森田の激しい追い上げは4、5番で連続バーディー。一瞬首位に並ばれましたが、そのホールで3メートルのバーディーパットを入れ返す“根性”はさすが熊本娘。13番のパー5でも、飛ばし屋の森田がセカンドショットでグリーンエッジまで打ってきたのを見ながら、優希は第3打(残り75ヤード)をピンそばに打ち返して、バーディーで譲りませんでした。1打リードをキープしてきた最終18番でも、2メートル弱のパーパットを残しましたが、このウイニングパットも外しませんでした。

通算12アンダー単独3位に昨年の賞金女王・全美貞
通算12アンダー単独3位に昨年の賞金女王・全美貞

 「18番はもう入れるしかないと思ってましたが、すごい手が震えてました。でも真っ直ぐのラインだったので、あとは自分のストロークを信じて・・。あまり覚えてませんけど2メートルはあったと思います。いや~こんなに緊張するとは思わなかったです。1番からボギー発進で・・自分できつい状態にしたんですけど、とにかくチャンスについたら入れようと思って。我慢するところは我慢してメリハリをつけて、あとはいつも通りと思ってやってました。理香子に勝ててうれしいというより、自分が1打リードした状態で逃げ切ったというか、このプレッシャーの中で、我慢できたことがすごく自信になります。もうちょっと伸ばしたかったですけどね。やっとこのときがきました。長かったです。周りが次々優勝するから、私も今年できるかなと毎年思っていて・・だけどそんなに簡単じゃなかった」

 07年、高校を出てプロテストは一発合格。12月の新人戦「加賀電子カップ」では自己ベストの65を出して逆転優勝。同期には佐伯三貴、三塚優子、服部真夕、若林舞衣子ら粒ぞろいが並ぶ。11年にはいったんシード権を失う痛手をこうむりましたが、12年はQTからのカムバックを果たし、厳しい練習を課して這い上がってきました。その昨年は、ヤマハレディス2位、サントリーレディス3位、富士通レディス11位・・。全英リコー女子オープンにも参加し、強風の中、26位と粘って自信をつけて帰国しました。賞金ランキングも自己最高位の33位でシード復帰。遅咲きながら堂々の花を咲かせた肥後もっこすの本領は、いよいよこれからです。「プロとしての目標は不動裕理」と明言してはばからない24歳。その名はもうすぐ“全国区”になれますよ~。