もっと試合に出たい欲が出てきた!1試合2度のエージシュート(6回目)。多彩な技で魅せる71歳青木功

最終日、71で1試合2度目のエージシュートを達成した青木功。同伴競技者の初見充宣と握手。
最終日、71で1試合2度目のエージシュートを達成した青木功。同伴競技者の初見充宣と握手。

 71歳の青木功が1試合(3日間)で2度のエージシュートを達成して驚かせました。国内シニアツアー、今季11試合目。富士フィルムシニア(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)で初日に71、最終日にも同じ71で回って2度のエージシュート。青木は今年10月の日本プロシニアでも初日に71を出したのに続き今季3度目。通算6度目のエージシュートでした。試合は通算イーブンパーで24位。今季、青木のシニアはこれが最終戦でしたが「自分がやろうとしてきたことが少しずつ出来ている。もう少し試合に出たいなって欲が湧いてきた」と、70歳代にしてまだまだ意気軒昂な“世界のアオキ”です(年齢以下の打数で回るのがエージシュート)。

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 最終日、4846人ものギャラリーがコースに足を運び、最も応援が多かったのが青木の組でした。この8月31日に71歳の誕生日を迎えた青木ですが、お腹も出ずすらりとした180センチの体躯は、若いときそのままです。頭こそ白髪が目立つようになりましたが、華麗なアオキ・スイングで270ヤードは飛ばします。初日雨の中、1アンダーの71で回り、8位につけた好スタートでした。2日目も2000人を上回るギャラリーが詰めかけて青木はご機嫌。
 「平日にも関わらずたくさんのギャラリーも来てくれたから最後(18番、パー5)は狙っていったけど、ボギーじゃダメだわ。やってはいけないところでボギーを打っちゃう。コースのワナにはまった。でも18番以外はそれほど悪くない。最終日を楽しみにして!」

71歳になっても力強いスイングでフアンを魅了する“世界のアオキ”(富士フィルムシニアで)
71歳になっても力強いスイングでフアンを魅了する“世界のアオキ”(富士フィルムシニアで)

“青木さんを見たい”と集まってくれるファンが多ければ多いほど、青木は燃えるのです。いまだにそのサービス精神を忘れないプロフェッショナル。2日目にスコアを2つ落としましたが、最終日にまた1アンダーの71で回り、通算でイーブンパーでフィニッシュしたのですから大したものです。初日には4番(190ヤード、パー3)で23度ユーティリティを操り、あわやホールインワンか、と思わせるスーパーショット。最終日、9番(パー4)では、第2打がグリーン手前のエッジにショート。緩い上りのピンまでは20メートル近くありましたが、これをアイアンでなく、3Wでの転がしアプローチで巧みな技を披露、ファンを喜ばせました。この寄せは、4メートルほどショートしましたが、パーパットを鮮やかに沈めてまたまた大拍手。誇らしげな71歳でした。4番カラーからの3パットボギーを悔しがりましたが、後半は11番、13番でともに6メートルのバーディーパットを沈め初日と同じ1アンダー、71でのホールアウトでした。

 プレー後は、この大会のホストプロとしてもファンへのサイン会や写真撮影など、ファンサービスに時間を割いて笑顔で取り組むアオキさん。
 ファンサービスを終えたあとの青木功コメント。

最終日、一度は首位に立った室田淳。終盤に乱れて2位。しかし、1試合を残して今季のシニアツアー6年ぶり3度目の賞金王を決めた。(富士フィルムシニア)
最終日、一度は首位に立った室田淳。終盤に乱れて2位。しかし、1試合を残して今季のシニアツアー6年ぶり3度目の賞金王を決めた。(富士フィルムシニア)

 「エージシュートとかみんな言ってくれるけど、60台を本当は出したいんだよ。肝心なパーパットとかもう少し入ってくれればよかったんだけどな。でも2日目にオーバーパーしたけど最後にパープレーに戻した。自分がやろうとしてきたことが少しずつ出来ている。日本のゴルフでは、組み立てとか、毎日のパートナーもあるし、自然というのもある。いろんな意味で難しいけど、それを自分が選んだから、どれだけできるかということだよ。普段、トレーニングをして練習もして、たとえケガをしても、自分にはこれしかないと思ってやっているから、きょうもこういう結果が出たんだよ。これからはもうちょっとそういう問題をかかえないで、プレーができるような体にしたいなとうのが願望だね」

 さらに青木のゴルフに対する思いが続きます。

悲願のシニア初優勝をシニア4年目で決め、優勝カップを掲げる奥田靖己(富士フィルムシニア=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)
悲願のシニア初優勝をシニア4年目で決め、優勝カップを掲げる奥田靖己(富士フィルムシニア=千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)

「70歳を過ぎて50年も55年もゴルフ場生活をしていると、いろいろなきしみとかが出てくる。大きなケガもしてないし、ついてる方かもしれない。ただ、やっぱり膝とか腰、腕などは消耗品なんでね。すり減ってくるというのは仕方ないことで、その中でやっていかなきゃいけないっていうのが我々の仕事。やるからには、痛いとか悪いとか、そういうことをいうのはオレはしないよ。出来ないで痛いなら痛いでやめればいいだけのことだから。途中でああでもない、こうでもない、というのはプロゴルファーとしてよくないことだよ。だからオレは途中でやめない。3日間競技なら2日目、4日間72ホールなら36ホールは最低の仕事だからね。恥かいたって何かいたって、仕事は遂行しないとな。そういう気持ちでやっていれば、自然に自分のしたいことができるようになるかもしれない。逃げなければね。逃げたって人生は逃げ切れないんだから。入ったからにはどっぷり浸かって、もうもがくだけだよ。もがいた結果が喜びであるか、悲しみであるかは、本人だけだからね」

 来年8月31日には72歳を迎える青木功ですが・・。

「来年に備えるっていっても、そんなにああでもない、こうでもないっていうことはしないよ。もう筋力を強くするっていうトシでもないからね。ただ半月板(ひざ)とか、腰とか、そういうものと仲良くね。お友達と仲良く『オレがゴルフをやってるときは出ないでくれよ。普通のなんにもないときは出てもいいからさ』みたいな会話もしたいよな。最終日は(ひざに)サポーターしてあげた。“少しはオレのこともカバーしろよ”って言っていたからな。この年齢になると、こんな面白い会話もしながらゴルフをやっていかなきゃいけないんだよ」

 スポンサーの富士フィルムにも・・。

富士フィルムシニアで1試合2度のエージシュートを達成した青木功(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)
富士フィルムシニアで1試合2度のエージシュートを達成した青木功(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)

 「長いこと富士フィルムさんにやってもらって(今年で第6回大会)、オレもホストプロとして少しはお返ししようと自分でできる限りのことはやってきた。サービスとかもやってきたつもり。これからもみんなの手をかりなきゃいけないこともあるかもしれないけど、そのときはお願いしますよ」ー。
 青木のエージシュートは6年前、2007年の日本シニアオープン(くまもと中央CC)、65歳で最終日に65を出して初の達成でした。この時は室田淳と優勝を争い、6打差の5位から出た最終日、8バーディー、1ボギーの7アンダー。最終18番では6メートルのフックラインを読み切ってバーディーをとった。逆に室田が最終ホールで入れればプレーオフ、の3メートルを外し、青木は人生初のエージシュートを日本シニアオープン優勝で飾りました。15歳の新星・石川遼(東京杉並学院高1年)がレギュラーツアーで初優勝して世間を驚かせたその年に、“世界のアオキ”がシニアとして輝きを放ったのでした。

 いまでは年間10試合前後、レギュラー、シニア両ツアーに出ている青木です。毎朝のトレーニングは欠かさずやるなど、まだまだ戦闘意欲は十分です。試合での優勝争いはさすがになくなりましたが、日本のゴルフ界を支えてきた巨星、磨き抜かれた多彩な技を見たくて青木功を追っかけるファンは後を断ちません。来季、72歳の青木功もまだ楽しみです。

 ★青木功のエージシュート

2007年 日本シニアオープン(熊本・くまもと中央CC)最終日 「65」 65歳

2008年 鬼ノ城シニアオープン(岡山・鬼ノ城GC)3R 「66」 66歳

2011年 コマツオープン(石川・小松CC)1R 「69」 69歳

2013年 日本プロシニア(茨城・サミットGC)1R 「71」 71歳

2013年 富士フィルムシニア(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)1R 「71」 71歳
2013年 富士フィルムシニア(千葉ザ・カントリークラブ・ジャパン)最終日 「71」 71歳