女子大生(日体大)プロは返上! 専業プロにかけた成田美寿々(21)に早くも”大物”の片りんが・・

167cmの恵まれた体から平均260ヤードのドライバーを飛ばす成田美寿々。
167cmの恵まれた体から平均260ヤードのドライバーを飛ばす成田美寿々。

21歳成田美寿々、プロ3年目で国内メジャー初制覇。ワールドレディス・サロンパス杯(5月8~11日、茨城GC西コース)。3日間首位に立っていた12年の全米女子プロ選手権覇者・フォン・シャンシャン(24=中国)を逆転しての大金星です。日体大2年だった12年に現役女子大生でプロ転向。毎年1勝ずつし、これで3年連続優勝という実績を積み上げました。今年1月には日体大を3年生で中退。女子大生プロの肩書を捨てて臨んだ今シーズン。開幕10戦目で早くも初メジャーをゲットした21歳は、大物感漂う期待の新鋭の登場といっていいでしょう。まだシーズンは序盤戦ですが、賞金ランキングでは1位に浮上、今季の賞金女王レースに堂々と名乗りを上げてきました。

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15歳のアマチュア、勝みなみの話題でもちきりだったこの試合。「みなみちゃんにできるのに、自分にはできないのか」と、自らにカツを入れた成田は、翌3日目には「66」のベストスコアを出して2位に急浮上してきました。3週前からパターのグリップを、いまはやりの″太グリップ〝にし、ショートパットが入り始めたそうです。手先で操作しないで体(肩)で打てるようになって、この3試合は6位(KKT杯バンテリン)、2位(フィジサンケイ)、13位(サイバーエージェント)と好調を維持。照準を合わせていたこの試合にもすばらしい結果を呼び込みました。3日目、最終日と連続でベストスコア。最終日は6バーディー(1ボギー)を奪う盤石のゴルフ。前半で3つ伸ばし、2打目をカップ50㌢につけた7番で首位を捉え、フォンがボギーにした9番で再び首位に食い下がるなど負けませんでした。後半に入っても持ち前の飛距離と好調のショートアイアンを武器に、パー5を確実にとってフォンに対抗。同じ9アンダーで18番を迎えました。

このホール、残り134ヤードを8番で攻めた成田はピン奥5㍍。フォンはバンカーに落としましたが、そこから″あわや〝というカップをかすめるバンカーショットを見せられて、肝を冷やしました。成田の5㍍のバーディーパットは入らずにパー。「プレーオフ勝負」(成田)と思っていたその直後、フォンが「1ヤード(90㌢)。ストレートと思って打ったら右に切れた。ラインが読めなかった」(フォン)と、このショートパットを右カップにけられて外します。成田が残していた50㌢のパーパットが、突然ウイニングパットに変わったのです。成田は一瞬天を仰ぎ、両手をぶらぶらと振って緊張をほぐし、心を沈めました。「世界のフォン・シャンシャンさんがあれを外すとは・・。もう、いままでにないくらい手が震えてきました」と成田。「最後はガーッと握ってバーンと打ちました」というパーパットがカップに消えて、成田の劇的な逆転Vが決まりました。

成田美寿々の優勝コメント。

昨年大会で優勝した茂木宏美(産休中)の佐藤キャディーを譲り受けた成田美寿々。佐藤キャディーは2年連続で勝利を もたらした。スタート前、打ち合わせする成田美寿々(左)と佐藤キャディー(右)=茨城・茨城GC西コース
昨年大会で優勝した茂木宏美(産休中)の佐藤キャディーを譲り受けた成田美寿々。佐藤キャディーは2年連続で勝利を
もたらした。スタート前、打ち合わせする成田美寿々(左)と佐藤キャディー(右)=茨城・茨城GC西コース

「嬉しすぎてまだ手が震えています。きょうもしっかり攻めようと思っていました。最終日、最終組で60台を出したいと思って、あんまり意識せずにやっていたら結果的にアンダーが出て・・。シャンシャンさんは崩れないと思っていたので、最後までくっついていってプレーオフ、と思っていました。でも正直、海外メジャーにも勝っている人なので、勝てるとは思ってなかった。キャディーさんが、去年勝った茂木(宏美)さんのキャディーさんなので、手前から転がしたりとか、私では考えれないような攻め方なども教わった。去年も勝っていて、この人にはサロンパスの女神がついていて、それに私がつていった感じです。=茂木が産休に入った昨年8月から成田のバッグを担ぐ佐藤大輔キャディー(43)=産休の茂木さんが復帰するまで担いでもらおうかと思ってます。母の日に勝って、母の誕生日(3日目の10日で59歳)と合わせて初めて優勝プレゼントができて、喜んでくれていると思います」

167cm、60kgの、日本人としては恵まれた体格。千葉・市原生まれで、12歳から父親の手ほどきでクラブを握りました。拓大紅陵高ゴルフ部で本格的な競技ゴルフを始め、日体大1年の2011年にプロテストを受けましたが不合格。日体大は休学してゴルフに打ち込み、11年秋のQT(ツアー出場予選会)に挑戦、26位で通過。TPD単年登録で12年からのツアー出場権を 確保しました。その12年は、10月の富士通レディスで念願の初Vなど、賞金ランク27位で堂々の賞金シードをゲットしました。LPGA新人賞、日本プロスポーツ新人賞、GTPAルーキー・オブ・ザ・イヤーと新人タイトルを総なめにしてプロ1年目を終えました。13年は2月に、パットの名コーチといわれるデーブ・ストックトン(米)のレッスンを受け、課題とされてきたパッティングやショートゲームの精度を上げ、夏には2度目のプロテストを受験して合格。8月のNEC軽井沢72で2勝目を挙げるなど、順調な足取りで階段を上ってきました。

今年初めには休学していた日体大を3年で中退。専業プロとして、夢としている16年のリオデジャネイロ、20年の東京五輪での活躍を目指すアスリートでもあります。このオフは「これで結果が出なかったらやってられない」というほどのハードなトレーニングをこなし「国内メジャーを含む3勝」をターゲットとしてシーズンをスタートさせました。その国内メジャーを早々と達成「こんなに早い時期に勝てるなんて・・。シーズンオフのトレーニングが報われました」と、喜びは隠せません。ドライバーの飛距離は260ヤード。課題のアプローチとパターにも改善の兆しがみえてきた成田美寿々。アマチュアや10代の活躍が目立つ今シーズン。大物感あふれる21歳の躍進は、女子プロ人気をさらに広げることになりそうです。 美寿々(みすず)の名前は、ニュースキャスター田丸美寿々から命名。