アラフォー族をまた勇気づけた藤田寛之、45歳のゴルフ人生!! 17勝中11勝が40代で

6打差17位から65を出し通算12アンダーでプレーオフに持ち込んだ″アラフォーの星〝藤田寛之は、5ホール目にパーパットを

″フェードボールを打つ藤田寛之〝への原点復帰を目指す華麗なドライバーショットが生きた。(福岡・芥屋GC)=提供:JGTO
″フェードボールを打つ藤田寛之〝への原点復帰を目指す華麗なドライバーショットが生きた。(福岡・芥屋GC)=提供:JGTO

外した中国の梁津満(リャン・ウェン・チョン=36)を制して大逆転優勝を遂げました。6月16日に45歳になった藤田は、通算17勝のうち40歳以降で11勝目。尾崎将司(63勝)、杉原輝雄(21勝)、青木功(18勝)に次ぐ4人目の快挙。″アラフォー族〝を再び勇気づける逆転劇でした。今季は4月のつるやオープンに続く2勝目。この時も韓国の朴相賢(パク・サン・ヒョン)をプレーオフ1ホール目でくだしており、POは5勝3敗の強さです。これで賞金ランク2位に浮上し、12年以来2度目の賞金王もチラリ。ひそかに夢みているのは、3度目のマスターズ出場ですが・・。(アールズエバーラスティング・KBCオーガスタ 8月28~31日=福岡・芥屋GC)。

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今季2勝目を地元福岡で初めて挙げた藤田寛之。両手に花の優勝カップを抱く。(福岡・芥屋GC=KBCオーガスタ)=提供:JGTO
今季2勝目を地元福岡で初めて挙げた藤田寛之。両手に花の優勝カップを抱く。(福岡・芥屋GC=KBCオーガスタ)=提供:JGTO

福岡出身の藤田。前夜は香椎の実家で心筋梗塞などを患い自宅で静養している父親・寛美さん(75)や母親・美登子さん(72)との久しぶりのお手製すき焼き鍋を囲みました。香椎中2年、14歳のとき、藤田は父に連れられ、初めてプロツアーを見たのがこの大会でした。青木功、中嶋常幸、中村通らのトップスターのプレーに目を奪われ、藤田がゴルフを目指すきっかけになった観戦でした。闘病生活でこの日はコースには来られなかった父親は、最終日を前に首位と6打差の17位タイまでに落ちて里帰りしてきた一人息子に容赦はありませんでした。

「お前、なんで16番でダボを打つかな?今年も優勝はムリだな!」

「親父には、いつも怒られ、文句ばかりいわれてる」(藤田)というプロですが、その本人も、翌日まさか6打差から優勝するなんて思ってもいなかったでしょう。しかし、思えば大差をひっくり返した自己最大の逆転劇は、父親からの厳しくも愛情のこもった一言が、力したようにも思えます。グリーンサイドでの優勝インタビューで「ゴルフ人生初めて泣いた」(藤田)とあふれ出た涙も、両親のいる生まれ故郷で初めて勝てた感激の涙だったのでしょう。

 

藤田寛之のコメント

「福岡で初めて勝てたですからね・・。福岡のギャラリーの方はイントネーションもちょっと違うし、他の地域より声援が耳に入ってくるんですね。父親も2年前、ここに観戦にきて医務室のお世話になったんです。で、最近は観にこられなくなって・・。そんな親のことをいわれたので、声が詰まってしまって・・。優勝しても泣かないんですけどね。(仲間の)宮本(勝昌)の優勝と、(師匠の)芹澤(信雄)さんの優勝のときは涙が出ましたけど。自分自身もケガとかで苦労してるので・・プラス親のことをいわれたので・・。きょうは、こういう形で勝ったことがない展開でした。優勝を意識せずにプレーしてましたから。(3連続バーディーをとって3位浮上したあと)14番ぐらいからもしかしたら上に届くかも、と思いだし少しずつ緊張が増してきましたね。プレーオフはティーショットがずっと右にばかりいって、5ホール目でやっとフェアウェイにいった。フェアウェイをとらえていたリャンさんが初めてラフに入れて展開が変わりました。今回は技術じゃない気がします。自分がパーをとり続けてたからリャンさんがしびれを切らした感じですね。高麗芝の芥屋GC用に少し重たい大き目のマレット型のパターにしたのが、ボールをよく押してくれました。パターで凌げましたね」

芥屋GCは、いまや男子ツアー唯一の高麗グリーンです。普段はスピードのあるベントに慣れているプロたちにとっては神経を使うグリーンです。プレーオフでも劣勢が多かった藤田にとって特に1ホール目、下り4㍍のパーパットを入れたあたりは大きな勝因でした。「4㍍の下りですが、3カップぐらい曲がるフックラインでした。あれが入って、リャンさんがパターを外したのがポイントでした」(藤田)。

6打差15位からプレーオフに持ち込んだ藤田(左)は、5ホール目でパーパットを外したリャン(右)を下す。(福岡・芥屋GC)=提供:JGTO
6打差15位からプレーオフに持ち込んだ藤田(左)は、5ホール目でパーパットを外したリャン(右)を下す。(福岡・芥屋GC)=提供:JGTO

梁津満(リャン・ウェン・チョン)は日本ツアーには00年から参戦しており、本格参戦してからも10年目。07年、アジアンツアーの賞金王の実力者ですが、日本での勝運に恵まれません。プレーオフ4ホール目までは藤田を圧倒しながらバーディーパットが入らず、5ホール目についに力つき、日本初Vはまたお預けになりました。

藤田の方は「決して好調ではない」という。今季は「フェードボールを打つ自分の原点回帰を思い起こしながら戦っている。まだ自分のその原点に届いていない」と自らを採点しています。ここ数年「ゴルフに対する考えが変わってきて、ゴルフに対する入り込み方が緩くなってきている。去年ぐらいから感じていますね。こういう勝利を励みにして、もうひとつ上にいくチャンスを頂いたという感じ」と自分を見つめる藤田です。12年は賞金王になりながら13年は背中の故障もあって未勝利。今年、春先から痛めている左肩痛は、ゴルファーの職業病ともいえる左肩甲骨付近の筋肉炎症。太田敦トレーナーと懸命のリハビリを続けながら後半戦にかけていました。

45歳にして、一種の悩みを抱えながらのゴルフ人生。
「賞金ランク2位といっても、(賞金王へは)いまは荷が重いですね。2勝したといっても調子が悪い中での2勝なので」と、あくまでも控えめなアラフォーです。しかし、4試合目になる新しい外国人のプロキャディー、ピーター氏について「びっくりするくらい冷静。本当にいいキャディーさんで助かってます」と、当分は採用を続ける意欲をみせています。すべてに温厚で控えめな藤田ですが、内に秘めた勝負根性は、これまでの実績が物語っています。2年ぶりに挙げた年間複数勝利は、男子ツアー、秋の陣に何かの影響を与えそうです。