プロ8年目、通算12勝中、8勝が9月以降というスロースターターの″秋男〝池田勇太(28)が、最高峰・日本オープン(千葉・千葉CC梅郷、10月16~19日)を涙で制しました。ツアー参加2年目の09年から6年間、毎年1勝以上は連続して挙げている勇太ですが、1勝目の日本プロ選手権と日本オープンのメジャー2冠を20代で達成したのは、ジャンボ尾崎以来2人目の偉業です。アマチュア時代に2度とっている日本オープンローアマ(最優秀アマ)に続き日本オープン優勝を果たしたのは、中嶋常幸、片山晋呉らに続き7人目。大きな勲章をつかんだ池田勇太へ、最終日1万人余のギャッリーが熱狂して浴びせた大声援は異常なほどでした。トップに立った3日目の最終18番グリーンでは
「お前のプレーなんか、見たくない!」と叫んだ逆ギレ?の女性ギャラリーが、運営スタッフに排除されるハプニングもあるなど、異様に盛り上がった今年の日本オープンの舞台でしたー。
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松山英樹、石川遼が米ツアーに去った?あと、スター不足でファン離れが懸念される日本ツアーをなんとか支えられる男はといえば、池田勇太と片山晋呉でしょう。その2人が、今年の日本オープン最終日最終組で回ったのですから最高でした。3日目トップに立った12アンダーの勇太。3打差2位タイにつけた晋呉。日本オープンは3日目から2サム(2人組)で回りますが、2人の役者がそろった最終組には1ホール全体を囲んでしまうほどのギャラリーが集中しました。
前日まで好調だったパットが決まらずショットも不安定な勇太は、前半9ホール、バーディーなし。しかも5番では右の林に打ち込んでボギーが先行する苦しい展開になりましたが、追っかける晋呉も前半で一つ落とす足踏み状態。6位からスタートの小平智が2つ伸ばしてきた程度のおとなしい戦いになったのは、勇太にはラッキーでした。11番、12番でようやく連続バーディーがきて安堵の胸をなでおろしたと思うと、最難関(513ヤード、パー4)の14番でボギー。16番のパー3(204ヤード)では「力が入っちゃった」(勇太)と、5番アイアンでグリーン左奥のバンカーに入れダブルボギーの洗礼。片山、小平に1打差に詰めよられました。
危なかった勇太ですが、「4日間やればこういう日もある。まだ1打のリードがある。ムリしてバーディーをとりに行くんじゃなく、我慢して冷静にいけたのがよかった」と振り返りました。17、18番で堅実にパーを拾い、追ってきた2人を1打差の抑えての逃げ切り優勝。最終日、結局は2つ落としながら勝ったのですから、ラッキーというか、それほどに日本オープンの最終日は誰にも重圧がかかる戦いだったのです。
最高峰のメジャーを勝ち取った池田勇太のコメント。
「初優勝がメジャー(日本プロ)だったから、自分ではメジャー優勝の感触とか、重みとか何も分からないで勝ってしまった。この4日間戦ってみて、メジャーに勝つというのはこういうことなのか、とかみしめながらやりました。ダボ(16番)のあと、17番のティーショットとセカンドが一番だった。特にセカンドは199ヤード。左いっぱいのピン。風も左からのアゲンスト。前のホール(16番)で5番アイアンでグリーンオーバーさせたけど、ここでは左からの風にぶつけてカットして打てばオーバーはしないと思った。あれを打ててあそこにつけられる(ピン右手前7㍍)のは、なかなかいないぜ。今年の日本オープンのセッティングは(ラフも無理に長くせず)みんなにフェアだった。深いラフでウェッジで出すだけで、距離が残るからそこからグリーン狙っても止まらない。それじゃプロにとっては面白くない。ここ1、2年はプロの技術を試せる、心をくすぐるセッティングにしてくれているので、これだったらやる気になれるな。頑張ってみようと思っていたし、勝とうと思って勝てたよ」
今季の勇太は開幕直後からケガが続きました。ムリをおして出た日本プロ日清カップ(ホスト大会)などで、腰痛から左足首、左ひざと次々と故障個所が続発。夏以降は「体幹トレや体を捻転(ねんてん)するストレッチを増やして、ホテルの部屋でも毎日続けた」(トレーナー)
得意の秋が近づいた8月末から9月。腰の痛みが改善されてきてからというもの、7試合中4戦でトップ10入りとやっと調子を上げてきました。
昨年から選手会長を務め、プレー以外でもツアー機構などとの折衝に時間と神経を費やすなど二束のわらじをはいての奮闘が続きます。この優勝で来季の全英オープンの出場権も獲得しました。09年の全英オープン。10年にはメジャー4大会すべてに出場。マスターズでは初出場ながら29位と健闘しました。11年にはマスターズ、全英、全米プロに出場。それ以来の海外メジャーですが、米ツアーへの本格挑戦には″まだ早い〝と足元をみつめています。
「日本オープンに勝ったからすぐ海外、というのじゃなく、こちらで2勝、3勝、4勝して賞金王とって、鳴り物入りで向こうにい行かなくちゃ面白くないでしょ。そこにたどりつくまでは日本でやりたいね」(勇太)
勇太の夢はまだまだ大きいです。4000万円の国内最高額の優勝賞金を獲得して賞金ランクは4位に上がってきました。トップの藤田寛之とは約2300万円差の6264万8770円。「このタイミングで優勝できたから、もう1、2試合勝ちたいよね。欲だけは人一倍あるから」。やはり狙いは、選手会長での賞金王獲りでしょう。
″秋に強い勇太〝は、長年クラブ等の使用契約を結んでいる今週のブリヂストンオープンを始め、実績を残してきた大きな残る7試合に次の照準を合わせています。強気のセリフや、尊敬するジャンボ尾崎にならって3タックのパンツをいまだに愛用するバンカラ男。3日目の最終グリーンでは、そんな勇太に反発するような大声のヤジ。男子ツアーにつきまとっている″追っかけおばさん〝の仕業?だったようですが、いってみれば池田勇太らしい出来事でもありました。なにかにつけて、いま日本男子の″〝NO1男〝の復活は注目です。