戻ってきた″攻めの孔明〝! 最強の男・小田孔明、初の賞金王の夢は、マスターズへもつながるか?!

5ヵ月ぶり、今季2勝目の優勝カップを抱える小田孔明(ブリヂストンOP、千葉・袖ヶ浦CC)=提供:JGTO
5ヵ月ぶり、今季2勝目の優勝カップを抱える小田孔明(ブリヂストンOP、千葉・袖ヶ浦CC)=提供:JGTO

今年の男子プロで最強の男・小田孔明(36)が、秋の陣でまた本領を発揮し始めました。ブリヂストンオープン(千葉・袖ヶ浦CC袖ヶ浦、10月23~26日)。最終日、小田は首位を走りながら45歳の藤田寛之に追い上げられ15番、17番で2度までも並ばれる展開。しかし、小田は上がり4ホールで3バーディーを奪う″強さ〝で、1打差の通算15アンダーでトップを守り切りました。
今季は5月の関西OP以来2勝目で7度目のトップ10入り。9月末以来、藤田に譲っていた賞金ランク1位の座を4試合ぶりに奪い返して、残り6試合に初の賞金王獲りをかけます。

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今季の男子ツアーで最も多くの優勝争いを演じてきたのが小田孔明です。夏、7月。米ツアーから一時帰国して長嶋茂雄招待セガサミーカップに出場。小田孔明とのプレーオフを制した石川遼がいみじくもいいました。「今年、日本ツアーで一番強い小田孔明さんに勝てたのが嬉しい」ー。7月の全英オープン、8月の全米プロと4年ぶりに海外メジャーにも挑戦。ともに自身初めての予選を突破した経験も大きな自信になっています。
BSオープン。2日目の65で首位に立った小田は最終日、14番グリーン脇のリーダーボードで11位から出た3組前の藤田寛之が15番でこの日7個目のバーディーを奪って13アンダーで並ばれているのを知りました。スタート時、5打差あった藤田との差がなくなったのです。
「″えっ〝と思ってボードを2度見直した。やばい、ここから気合を入れていくぞと思ったね。自分が一番強いんだという気持ちでやった」(小田)。

最終日、5打差をはねかえし2度までもトップ小田孔明に並んで脅かした45歳・藤田寛之(ブリヂストンOP、千葉・袖ヶ浦)=提供:JGTO
最終日、5打差をはねかえし2度までもトップ小田孔明に並んで脅かした45歳・藤田寛之(ブリヂストンOP、千葉・袖ヶ浦)=提供:JGTO

その言葉通り、次の15番で1.5㍍を入れ、16番(パー5)は2打目でグリーンをオーバーさせたましたが、これも1.5㍍に寄せて連続バーディー。「自分でもやるなと思いました」と、自画自賛した小田が、17番(パー3)で1㍍のパーパットを左へ外すポカ。先にホールアウトしていた藤田に再び並びます。勝負は最後までわかりません。18番(パー5)。フェアウェイから2オンを狙った小田の3Wがアゲンストの風で右に流され、グリーン右のバンカーのさらに右のラフ(ピンへ30ヤード強)へ。大ピンチです。普通は打ったことのない場所からのアプローチで、小田は中間にあるバンカーにもズカズカと入って行ってピンまでの距離を測りました。
「30ヤードほどでした。25歩のところに落とさないと寄らない。あとはオーバーしても仕方ない。(グリーン)手前に落とすのが最悪ですから、25歩以上打つんだというアプローチをしました。あれは10回打って1回寄るかどうかでしたね。その1回が出てくれたんでよかったです」(小田)。
SWでフワリと上げたアプローチは、グリーンいっぱいに落ち、スルスルと転がってカップ1㍍手前につきました。この緊張の中でこのアプローチ。しかも17番では左へ外したのと同じ1㍍の優勝パットが残りました。
「10㍍ぐらいに感じましたね。何でもいいから入ってくれ、手が動いてくれと思いながらでした。久々でしたね。あれぐらい緊張したのは・・。パターイップスにかかった3年前以来くらいですかね」(小田)

17番、18番と相次いで襲ってきた重圧のゴルフを語りましたが、見た目では何でもなさそうに簡単に打ってバーディーフィニッシュにしたあたりが、小田孔明の強さ、メンタル面でのタフさなのでしょう。

今年は海外メジャーにも2度挑戦して、いろいろなラフも体験してきたのが薬になっているそうです。「去年までならああいうアプローチはできていないでしょう」と、振り返っていました。

ドライバーを0.25インチ短くして(45.75インチ)攻めのゴルフを取り戻した小田孔明のショット(ブリヂストンOP、千葉・袖ヶ浦)=提供:JGTO
ドライバーを0.25インチ短くして(45.75インチ)攻めのゴルフを取り戻した小田孔明のショット(ブリヂストンOP、千葉・袖ヶ浦)=提供:JGTO

今年の小田は開幕から3位、9位、5位、優勝・・と順調な足取りでしたが、海外メジャー遠征のあと夏場から8戦連続トップ10を逃がす″不調〝を味わいました。知り合いから「ボギーを恐れて守りのゴルフに入ってるのでは・・」と、指摘されてハッと気が付いたそうです。「いい成績が出なかったのは、攻めてなくて守っている気持ちがあったからだ、と思ったんです。攻めるスタイルが自分のゴルフ。日本オープン(16位)が終わって気持ちがひと段落したので、今週は絶対引かないと誓っていた。自分が一番強いんだという気持ちを言い聞かせながらプレーしました」(小田)

今週はいままで使っていた46インチのドライバーを0.25インチ短く切り、45.75インチのドライバーにしたそうです。長打力が小田の魅力の一つですが、積極的に打っていっても曲がりの危険が少ない″短め〝のドライバーにしたのも、自分を取り戻す一つの要素になったのでしょう。部門別データでは、イーグル率、バーディー率ともに3位、ドライビングディスタンス8位(293.11ヤード)で、攻撃ゴルフは一応健在ですが、「バーディー、イーグル両部門は常に1位にいたい」と、本来の小田ゴルフの姿を思い浮かべています。

ギャラリースタンドを埋めた大勢のギャラリー。千葉・袖ヶ浦コース1番ティーグラウンド(ブリヂストンオープン)
ギャラリースタンドを埋めた大勢のギャラリー。千葉・袖ヶ浦コース1番ティーグラウンド(ブリヂストンオープン)

攻めの孔明〝が戻ってきた秋の陣。小田の獲得賞金は、今回の優勝3000万円を加えて約1億600万円。1ヵ月ぶりにランキング1位に返り咲きました。2位に後退した藤田も1億円の大台に乗り、トップとの差は約600万円。最終戦まであと6試合。まだまだ賞金王の行方は分かりませんが、今年の日本男子ツアーでは「本命は小田」といってもいいでしょう。「賞金王をとるには、これからも1勝、2勝しないといけないし、それぐらいにしないと世界ランキング50位にも入れないでしょう。最大の目標はマスターズですから、それには世界ランキングの50位ですね」(小田)

日本の賞金王になっても即マスターズ招待、というカテゴリーはありません。僅かに特別推薦出場という望みはありますが、いまは「世界ランク50位以内」というのが、マスターズへの門を開ける近道です。

初の賞金王と初のマスターズ出場! 36歳・小田孔明の、ゴルファーとしての大きな夢が近づいてきたことは確かです。