“鉄人”の異名をとる室田淳(59)が、シニアツアー「富士フィルム選手権」(優勝1400万円、千葉、ザ・CCジャパン11月6~8日)で通算14アンダーで今季9戦目で初優勝。シニアツアー通算12勝目で今季の賞金は3596万円。倉本昌弘(59)を抜きランク1位に浮上。昨年に続く2年連続4度目の賞金王に王手をかけました。残るツアーは28日からのいわき白露シニアの1試合。最終戦で単独3位以内なら今年もマネーキングの座につきます。シニアツアーに留まらず、レギュラーツアーでも日本オープン6位など今季も12試合に出場、全米プロシニア(5月)にも出て9位。7月には韓国PGA傘下のシニアにも遠征して優勝するなど、59歳にして鉄人の名をほしいままにしています。シニアの帝王・室田の強さの秘密は?
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予選落ちのない富士フィルムシニア、ホストプロの青木功(72)も参加して大会を盛り上げ、好天に恵まれた最終日は4632人ものギャラリーが足を運びました。シニアツアーでは倉本昌弘新会長らの発案で、最終日はレジェンド枠を設け、スコアに関係なく人気プロをTV放送にも写る最終組近くのペアリングに組み入れる粋な計らいも実施しています。今回は2日間で4オーバー、本来なら″裏街道(インコース)スタート〝の青木功を、最終組から3組前のアウトスタートに組み入れて活性を図りました。
シニアならではの試みですが、そんな中、最終日は1位のポール・ウェセリン(英国)のあとを追って1打差の2位には室田淳、飯合肇ら5人がひしめく大激戦でした。インコースに入ってからは室田とタイの強者、ルアンキットとの一騎打ち。一組前のルアンキットが16番(パー4)、17番(パー3)でバーディーを連取して室田を1打リードします。最終組の室田。この大詰
での2位後退は絶体絶命かと思われましたが、ここからがしぶとい室田の真骨頂です。16番で2㍍を入れたバーディーに続き、冷たい雨になった17番。グリーン左に外しながら「信じられない」(室田)という13ヤードの寄せが直接入るチップインで連続バーディー。またリードを奪い返します。なんという粘り強さなんでしょう。打ち下ろしで2オン可能な最終18番(パー5)。1打差のルアンキットはバーディーを取れば追いつくチャンスがありましたが、2打地点でグリーンのあくのを待っていた室田の前で、なんと3パットのボギー。ルアンキットの自滅でした。
「18番は(昨年池ポチャしてボギーを叩き優勝を逃がした)池には入れないようにパーでいいと思っていたら、ルアンキットが3パットしてボギーでしょ。これで3パットしても優勝だと楽になった」(室田)。2打目は、左の池を嫌ってグリーン右エッジに外しましたが、チップで寄せてダメ押しの3連続バーディーの締め。通算14アンダーとした室田は、終わってみれば2位ルアンキットに3打差をつけた強い強い優勝でした。
☆室田の優勝コメント
「よく優勝できましたよ~。運があったんですね。1番でも左に引っかけてOBかと思ったんですが、傾斜でよく止まってくれた。この運を大事にしようと思ってやりました。17番のチップインもよく入ったね。ライがよかったからね。ボールが浮いていた。あれが逆目だったりしたらたぶんボギーだね。運は、引き寄せて取り組むというより、気持ちが大切。ゴルフはバーディーが出たりボギーになったり・・。自分のことだけでなくて、相手もバーディーをとったりボギーにしたりするでしょ。そうしたちょっとしたことで気持ちが変わるから気をつけないと・・。きょうは上がり3ホールでああなったんだけど(連続バーディー)、まあ我慢できたかな。最近はテレビでビデオをみても、下を向いて歩いてる。これじゃ人気も出ないなと・・ね。家族にもいわれるんですよ。″もっと笑ったら〝っていうけど、あまりヘラヘラもできないでしょ。このところ優勝争いに負けて″もう60だし、ムリだろう〝とか″もうダメかなぁ〝とか落ち込んでたから、いつもはメールなんかくれない一番下の娘(三奈ちゃん、中2)が″勇気を出して頑張れ〝ってメールをよこしたんですよ。三奈ちゃんが運を持ってきてくれたのかな」
05年にシニア入りして今年で10年目の節目を迎えている室田です。レギュラーツアーでは6勝(73年以降)。シニアでは今回で12勝。08年を除く毎年、勝利を挙げています。昨年はレギュラーの賞金ランク85位で賞金シード(70位まで)を失いましたが、最終予選会(QT)に出て16位。14年も大半のレギュラーツアーに出られる切符をつかみました。今季はレギュラー12試合の中でも日本オープンで6位タイに入ったのは大きな出来事でした。
「自分の日本オープン最高位を、59歳で出せたのは嬉しかったし、自信になった」(室田)
この日本オープン6位で650万円を稼ぎ、1133万余としてレギュラーの賞金ランク57位にまで上げていますが、最終的には今季から改訂された「60位まで」の第1シード入りは難しくなりそうです。しかし、シニアツアーの方は、出場9戦中、優勝を含む6試合がトップ10以内(2位2回)。賞金トップに立ち、昨年勝った優勝1200万円のいわさき白露(鹿児島・いぶすきGC開聞)を1試合残すだけです。この試合は今年も好成績が期待されますから、2年連続の賞金王獲得は濃厚です。賞金ランク2位倉本昌弘との差額は867万円、3位尾崎直道とは1115万円差。2位以下が逆転するには、最終戦での優勝が最低条件。室田は3位以内で賞金王が決定します。
レギュラーもシニアも試合がほとんどなかった7月末には、日本で戦っている金鍾徳(キム・ジョンドク)に誘
われて韓国PGA傘下のシニアの試合にまで挑戦。優勝をさらってくるしたたかなところをみせています。同世代の好敵手、中嶋常幸、尾崎健夫らが故障などで下降ぎみなのに比べて室田のしぶとさはひときわ目立ちます。腰痛を持病に持っている室田ですが、今年3月頃には右足かかと痛に見舞われ、それをかばうあまり、夏には腰痛が再発したりと、室田なりに体調とも戦っています。しかし、シニアでは周りも一目置く鉄人の強さが、まだ室田にはあります。試合があればどこにでも出向いていくしたたかさも、59歳にしてまだ失っていません。
「いいの?オレが賞金王で。順番、順番にだれかがねぇ・・。でもオレはあまり気にしない。最後の試合は自分の力を出し切ってくるよ。結果は結果だから。考えてゴルフはできないから・・。いいプレーを南国、鹿児島・指宿の人に見せてくるよ。体調を整えてね」
59歳室田淳の闘志は健在ですー。