男子ツアーもいよいよ大詰め。賞金王争いやシード権獲得やら、話題はさまざまですが、先週は三井住友VISA太平洋マスターズ(静岡・太平洋クラブ御殿場コース)に今年のマスターズ覇者で世界ランキング3位のレフティーの飛ばし屋、バッバ・ワトソン(36=米)が招待され大勢のファンが詰めかけました。初日、2日目は石川遼(23)と同組でプレー。「異次元の人」と石川が表現した通りのすさまじいゴルフを披露して度肝を抜きました。4日間のトータルでは、後半のドライバーの不調から3日目に77を叩き、結局は通算3アンダーの24位に終わりましたが、
4日間で計2万1384人のギャリーを呼び込んだ凄みのあるゴルフは、少しも割り引かれることはありませんでした。対照的に、わが石川遼はいいところなく、通算5オーバーで66人中60位に終わる寂しさでした。
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晩秋の澄んだ空に、富士山がクッキリと浮かんだ光景は太平洋・御殿場コースの名物です。その舞台でバッバ・ワトソンのピンクのシャフト、ピンクのヘッドのドライバーが、ひときわ映えました。ピンク色のドライバー(ピン社製)は、がんの啓発活動にに協力して契約先のピン社が作った特別仕様の逸品。
バッバの顔を摸した人形のヘッドカバーやグローブとともに販売して、収益金を病院とか子供のラボとかにチャリティしているワトソンです。ピンクのドライバーは、制作時に限定5000本を発売したところ、あっという間に売り切れたというエピソードもあります。
そのピンクのドラバーが初日からギャラリーの目を釘づけにしました。常に超300ヤードのビッグドライブ。御殿場コースのパー4で最も短い378ヤードの15番。同組の石川遼や谷原秀人がバンカーやラフを警戒してドライバーを使わないこのホールで、バッバはピンク色をフルスイングしてグリーン近くまでかっ飛ばしました。第2打はもう短いアプローチ。ピンそばに寄せて楽々のバーディーに仕留めました。日本選手ならドライバーを避けるホールが結構あるこのコースで、パー3を除く14ホール中、11ホールでドライバーを握っていました。飛んで、曲がりも少ないのがバッバの魅力。前週、上海で行われたWGC-HSBCチャンピオンズで優勝したばかりのバッバが、好調をそのまま持ち込んできた感じの幕開け。バンカーショットをミスした7番(パー3)でダブルボギーを叩きましたが、別格の飛距離を武器に7バーディーを奪って5アンダー、67のトップスタートはさすがでした。
2日目は71で2位。3日目にスタートの打ち下ろしの1番(パー4)で350ヤード超を放ったドライバーが裏目に出て左サイドの池ポチャ。6番(パー5)でも第3打をグリーン右の池に入れて2ダブルボギー。77とスコアを崩して首位と8打差の24位に急降下。「優勝はコースレコードを出すくらいじゃないとダメになった」(ワトソン)ちょっぴり肩を落としました。最終日は、11番(パー5)で321ヤードを飛ばして楽々バーディーにし、ここから3連続バーディーで魅せましたが、次の池のある14番でまた池ポチャのダブルボギーにするなどで71。″爆発〝はなりませんでしたが、24位の賞金126万円のすべてを、日本のジュニア育成のためにと、日本ゴルフツアー機構を通じて寄付を申し出ました。
「いいゴルフができるときもあれば、そうでないときもある。御殿場のグリーンはオーガスタやUSオープンと同じくらい速かった。オーガスタはもう少し傾斜がきついけど・・。ピンクのドライバーは、みんなが「ワォ」といってくれるが嬉しいし、それを使えば飛距離の出る球が打てるんだ。今週はいい1週間だった。日程が合えば、また日本に戻ってきたい」(バッバ・ワトソン)
2日間、ワトソンと一緒に回って11ストローク差をつけられた石川遼は「バッバは僕らとは全然違うタイプの選手。パー5でも第2打をアイアンで打ったりする飛距離は魅力的だけど、それが曲がらないというのが彼の武器ですねぇ。調子の良しあし、グリーンのタッチによってですけど、普通なら20アンダーは出せると思う。バッバは、予想以上に球を上げたり低くしたり曲げたりできる選手。ドライバーは、一瞬僕らの視界からもボールが消えてしまう。ドライバーは真後ろから見ないと弾道を見失う。ここでPGAツアーをやったら、20アンダーを越す選手が何人かいると思う」と、″異次元の人〝を語っています。
バッバの圧倒的な飛距離は、今回4日間の平均(毎日2ホールで計測)で311.88ヤード。2位には8ヤード差をつけて断トツの1位でした。米ツアーはもう新しいシーズンが始まっていますが、今後は2週間休養したあと年内はタイガー・ウッズがホストを務める「ヒーロー・ワールドチャレンジ」(フロリダ)と「タイランド選手権」(タイ)の2試合に出場します。
もちろん米ツアーでも飛ばし屋のバッバですが、海外のこうした大型選手のゴルフをみていると、日本のゴルフコースは″短くなった〝と感じさせます。海外のコースは500ヤード台のパー4が次々と出現しています。ゴルフは飛ばすだけではありませんが、飛ばなければなかなか米ツアーは征服できないのではないでしょうか。
2日間バッバと同組で回り、落ち込んだままで60位に沈んだ石川遼クン。過去2勝と得意なはずの大会でこのありさま。最終日だけは6番(パー5)で238ヤードの第2打を6Wでピン右奥3㍍につけてイーグルを奪取。ようやくアンダーパーの71を出し、パーオン率88.89で全体1位を占めました。「スコアにつなげようという気持ちが足りないのかもしれない。へんてこなミスが多かった。米ツアーでプレーしているときのような1打に対する貪欲さが足りない。6番のようなピりッとした感じが、毎ショットに欲しかった。来週は攻略しがいのあるコースなので楽しみ」と、反省を込めて今季国内8戦目、松山英樹も出る2年ぶりのダンロップフェニックストーナメント(宮崎・フェニックス)へ、気合を込めていましたが・・。