「孔明さんのゴルフは世界のどのコースでも通用する」ー石川遼 パワーゴルフで36歳の初賞金王となった小田孔明の涙ー!

永久シード選手、青木功(左)からトロフィーを受けて喜ぶ小田孔明(右)=12月8日、パレスホテル東京2F「葵」
永久シード選手、青木功(左)からトロフィーを受けて喜ぶ小田孔明(右)=12月8日、パレスホテル東京2F「葵」

36歳、プロ15年目の小田孔明が初の賞金王に輝きました。今季2勝。ツアー通算8勝。獲得した今季の賞金は1億3731万円。
パワーを生かした世界レベルのショットを武器に、今季は2勝を含めた5位以内は8回を数える安定したゴルフで他を圧倒しました。最終戦の日本シリーズJTカップ(東京よみうりCC、12月4~7日)では、藤田寛之、近藤共弘、岩田寛の3選手が優勝すれば逆転賞金王のチャンスがありましたが、3人とも振るわず、小田は優勝した宮本勝昌(42)に3打差の通算6アンダーで3位でした。賞金王獲得で来季の全英オープン出場権もゲット。今週のアジアンツアー、タイ選手権(11~14日)に出場、現在世界ランク54位を50位以内に挙げれば、来季のマスターズ出場の夢もかないます。雌伏15年、36歳の九州男児に遅まきながら大輪の花が咲きました。

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小田孔明のドライバーショット(東京よみうりCC#1ティーグラウンド)
小田孔明のドライバーショット(東京よみうりCC#1ティーグラウンド)

ライバル3人の低迷で賞金王レースはほとんど小田に傾いてはいましたが、3日目までは9位と順位が上がらず、小田自身も生みの苦しみを味わっていました。3日目をホールアウトした時も、TV解説の青木功から「相当苦しめられてるね。でも自分に負けちゃダメだよ。気をしっかり持って・・」と、声をかけられて「ハイ」と、思わず涙声になった孔明でした。最終日も11番までは一つスコアを落とす苦戦続き。12番で6㍍のバーディーパットが入ってやっと落ち着きました。
「11番終わってキャディー(宮田一幸さん=34)に、″頭が上がってるから、下げていきましょう〝といわれて、この言葉に助けられた」(小田)そうです。14番で2㍍が入り、16番では1.5㍍を決め、17番パー5では2オンは逃がしたものの2㍍に寄せて連続バーディー。奥から手前へ強い傾斜のあるグリーンで難ホールの18番パー3は、上り6㍍を見事にねじ込み、上がり3ホール連続バーディー(最後の7ホールで5バーディー)とし、大ギャラリーの前でカッコいいガッツポーズで締めくくりました。

☆自身初の賞金王。小田孔明のコメントです。

最終日3位で終わった小田孔明。初の賞金王が決定してバンザイ(東京よみうり)=提供:JGTO
最終日3位で終わった小田孔明。初の賞金王が決定してバンザイ(東京よみうり)=提供:JGTO

「最後の18番は、弱気に打ってショートするのは恥ずかしいから、頭を残して強めに打った。入ってくれて最高でした。最終日も自分が有利なのは分かっていたけど、相手が藤田さん、近藤さんですから、もう自分のゴルフをするしかなかったですね。初日トップでしたからね。普通の状態なら優勝できていた週だったかもしれないけど、2日目、3日目がね・・。でも今回ばかりは仕方ないです。今年、遼と松山(英樹)がアメリカへ行ったんで、僕ら30代や40代で頑張ろうというのもあった。まだ僕も36歳ですからね。これからは20代も背負っていってくれるでしょうからね。2014年はゴルフ界を引っぱっていけたから来年以降も盛り上げていきたい。今年賞金王になって、これで終わりと思うとズルズルいってしまう。賞金王になった次の年、1勝もできないなんて言われたくないし、やることはまだいっぱいある。いろんなことを考えてまたゴルフをしたい。昔からずっと、最後は賞金王になりたいという強い気持ちをもっていたのが後押ししてくれたと思います」

6位で出た宮本勝昌が通算9アンダーで逆転優勝。今季2勝目を挙げた(東京よみうりCC)=提供:JGTO
6位で出た宮本勝昌が通算9アンダーで逆転優勝。今季2勝目を挙げた(東京よみうりCC)=提供:JGTO

海外メジャーにも夢を持っている孔明です。これで全英の権利はとりましたが、来年はセント・アンドリュースが会場。4年前のセント・アンドリュースでは予選落ちしている孔明です。「今度は予選を通りたい」。そして今週のタイ選手権に出場し、世界ランクを50位以内に上げればマスターズ出場の夢も果たせます。それ以上に孔明が以前から持っている目標は、日本オープンをとること。「日本のチャンピオンになりたいんです。小さいころからとりたいと思っている大会。ひとつ肩書がついたんで、あとは国内メジャーもとって世界でも活躍して、将来はジュニアにも教えられる存在になりたいです」
小田孔明の夢は、次から次へと広がっていきます。

表彰式で並んで壇上に立った小田孔明(左)と石川遼(右)=8日、パレスホテル東京
表彰式で並んで壇上に立った小田孔明(左)と石川遼(右)=8日、パレスホテル東京

日本シリーズでh15位に終わった石川遼が小田孔明についてコメントしました。

「孔明さんのあのショットがあれば、米ツアーでも通用するんじゃないかと思います。日本の賞金王をとったことはびっくりするようなことではありません。ドライバーは飛んで曲がらない。ショットもうまいし、レベルも高い。世界中のどのコースでも通用すると思います。僕としても、世界でやっている孔明さんをみたいなと思います。それくらい世界のトッププレーヤーにひけをとらない精度・音・球筋・スピン量だと思います。世界と同じレベルです」

米ツアーで戦っている石川遼の言葉は、決してお世辞でもなんでもありません。遼が本当にそう思い、孔明を見ているのです。この夏、遼が帰国して長嶋茂雄招待セガサミーカップで小田孔明をプレオフで下して優勝した時も「いま日本で一番強い孔明さんに勝てたことが嬉しい」と、ぽつりと語ったことがあります。遼も認める小田孔明のいまの実力は、まさに日本NO1といっていいでしょう。

2014年度ジャパンゴルフツアー表彰式で壇上で挨拶する池田勇太選手会長(8日、パレスホテル東京)
2014年度ジャパンゴルフツアー表彰式で壇上で挨拶する池田勇太選手会長(8日、パレスホテル東京)

男子ゴルフツアーは日本シリーズJTカップで今季の全日程を終了。翌8日にはパレスホテル東京で年間成績の表彰式が行われました。

賞金王に輝いた小田孔明は、最優秀選手賞、平均ストローク賞(70.08)、記者が選ぶゴルフ記者賞を受賞。他にバーディー率2位(4.12)、パーオン率3位(68.92)、平均パット数5位(1.7416)、イーグル率4位(8.40)、総合ポイント2位(158)・・と5部門でベスト5に入る実績で″最強プレーヤー〝を証明してみせました。

福岡・田川市生まれ。三国志の大ファンだった父・憲翁さんが「頭のいい子になるように」と諸葛孔明から命名した。千葉・東京学館浦安高時代、全国高校選手権団体優勝。研修生を経て2000年プロ転向。07年、初の賞金シード獲得。08年「カシオワールドオープン」でツアー初優勝。以来通算8勝を挙げてついに初の賞金王に登りつめました。
青木功からは「来年からはみんながお前を目指してくる。守るのも大変だけど、それに耐えていくんだ」と、叱咤激励を受けてまた目をうるうる。8日の表彰式では、その青木功からトロフィーを受けて感激ひとしおでした。36歳の賞金王・孔明の来季が楽しみです。