海外嫌いな横峯さくらが、29歳にして米ツアー挑戦!とは。”変身”のカゲには何が・・?

黒のドレスに身を包み、すっかり落ち着きはらった新妻の雰囲気を漂わす29歳の横峯さくら(昨冬12月、LPGAの年間表彰式で=都内のホテル)
黒のドレスに身を包み、すっかり落ち着きはらった新妻の雰囲気を漂わす29歳の横峯さくら(昨冬12月、LPGAの年間表彰式で=都内のホテル)

海外には苦手意識を持ち、米ツアー挑戦も封印してきた横峯さくら(29)が、一転して米ツアー本格挑戦を宣言。暮れの12月には5日間を戦う過酷な米ツアー最終予選会(QT)に初挑戦。11位で通過して世界最高峰への挑戦権をつかみました。29歳になったさくらの″変身”は、いったい何だったのでしょう。10年間で通算23勝。生涯獲得賞金も10億円を超え(史上2位)、文字通り、日本女子ゴルフの人気を支えてきた″日本代表〝です。国内で若い世代の台頭が著しい中、29歳のベテランが改めて示した存在感。その裏には昨年4月、メンタルトレナーの森川陽太郎さん(33)との結婚が大きく作用したようですが、年も明けてもう間もなく、さくらは最愛の夫と二人三脚で米ツアー参戦へ渡米します。

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今季は新婚夫の森川陽太郎メンタルトレーナーと二人三脚で米ツアーに挑戦する横峯さくら(昨冬12月、LPGA年間表情式で=都内のホテル)
今季は新婚夫の森川陽太郎メンタルトレーナーと二人三脚で米ツアーに挑戦する横峯さくら(昨冬12月、LPGA年間表情式で=都内のホテル)

「ことしはもう優勝できないかなと思っていたのに、最終戦のエリエールで勝てて本当によかった。うれしかった」ー昨冬12月、日本女子プロ協会の年間表彰式に都内のホテルに姿を見せたさくらは、安堵の表情をみせて話しました。国内ツアー最終戦のLPGAツアー選手権リコー杯は欠場して、米フロリダ・デイトナビーチのLPGAインターナショナルでの米ツアー最終予選会から帰国したばかり。土壇場で今季初勝利を挙げ、勢いをつけての渡米は大きかったのでしょう。5日間90ホールを戦う過酷なQT。4日目、72ホールで上位71人に絞られ、さらに18ホールの決勝ラウンドを戦うサバイバル戦でした。初日73の1オーバー72位と出遅れたさくらですが、日ごとに順位を上げる力を発揮。4日目の予選カットも9位でクリアして決勝ラウンドへ進みました。緊張で張りつめた最終日。強風と寒さが襲うハードな条件となって苦しみました。スコアを落とし、17番では5つ目のボギー。「心臓がバクバクした」という最終18番(パー4)。残り170ヤードの第2打を渾身の力で打ち、8㍍に2オン。カップ30㌢に寄せてパーでしのぎました。
「あと1打落としたら、(上位20位に入る)プレーオフに回るところでした」(さくら)というきわどいフィニッシュ。上位20位までが今季ほとんどの試合に出場できるのですが、11位に入って貴重な出場権をゲットしたのです。

「大変な5日間でした。QTの経験も初めてだったし、最終日は特に緊張しました。4日目までは天候もよかったのに最終日は冷たい風と寒さでひどかった。あと1打悪ければ落ちるところでした。よかったです」(さくら)。

大きなバックスイングからフルショットする横峯さくらのショットは、米ツアーでも話題を集めそう。
大きなバックスイングからフルショットする横峯さくらのショットは、米ツアーでも話題を集めそう。

ジュニア時代からしのぎを削ってきた好敵手、同期の宮里藍(29)に報告したら「ギリギリでも20位に入ればいいのよ」と、祝福され、励まされたそうです。「去年までは違うフィールドで戦っていて、刺激になっていた。今年もそれは変わらないでしょうけど、米ツアーでは先輩の藍ちゃんがいてくれるのは心強い。何かと相談もできる」とさくら。大きなテークバックをとる特徴的なスイングをするプレヤーとして本場・米ツアーでも注目されているさくらです。14年シーズンは、米ツアーでプレーする藍ちゃんも宮里美香も不振を極め、有村智恵もシードを失う苦戦を強いられました。そんな中で日本を代表する実力者、さくらが米ツアーに乗り込みどこまで戦えるか、興味深いところですが、29歳になってどうしてこんな苦しいQTまで受けて米国へ行く気になったのでしょうか。

大柄ではないが大きな飛距離を持つさくら。米ツアーへ行っても外国選手に対抗できるだろう。
大柄ではないが大きな飛距離を持つさくら。米ツアーへ行っても外国選手に対抗できるだろう。

さくらは海外を苦手として、国際舞台には必要最小限の試合にしか出場してきませんでした。そんなさくらを変えたのは、明らかに森川陽太郎さんの出現でした。2年半の交際から昨年4月に入籍した人生の大きな転機。3年前の12年はショットに悩み、0勝の苦しい1年を経験しました。翌13年、森川さんとの専属トレーナー契約を結ぶと年間4勝を挙げて見事に復活。14年4月には結婚を決断したあたりからさくらのゴルフへの執念が蘇ってきたのです。元サッカー選手でスペインやイタリアでのプレー経験もあって語学にも堪能な森川さん。その後、心理学などを学び、多くのアスリートのメンタル面をサポートする会社(東京)を27歳で設立。代表取締役も務める青年実業家です。

勝負強さでは日本ツアーでも抜群。10年間で23勝の実績はダテではない。
勝負強さでは日本ツアーでも抜群。10年間で23勝の実績はダテではない。

「ゴルフともっと向き合ってみたい」ー海外嫌いだったさくらが、29歳にして世界をリードする最高峰の米ツアーで自分の力を確かめてみたいと思うようになったのです。日本ツアーを背負ってきた自信はあるでしょう。加えて全面的にサポートしてくれる最高の伴侶を得た心の余裕。「主人と二人三脚でトライできるのは大きいです」と、さくら自身も夫の存在がいままで封印していた海外挑戦への扉を開けてくれたことを否定しません。

ただ、29歳のさくらには、もう悠長な時間はありません。さくらによれば「いまの段階ではアメリカは長期ではなく、1年間限定で行ってきたい。でも行くからには優勝したい気持ちは強い」と、1年勝負ですぐにでも結果を出したいとの思いのようです。
米ツアーの今季の開幕戦は1月28日からの「コーツ選手権」(フロリダ・ゴールデンオカラGC)。この開幕戦から参戦予定で、1月中旬には夫とともに渡米します。米国内の生活は一応ホテル住まい。旧冬12月20日には、森川さんとの結婚披露宴も内々で済ませたさくらの、心機一転のゴルフが見ものです。