国内男子ツアーは、開幕第3戦の日本プロゴルフ選手権日清カップヌードル杯(5月14~17日、埼玉・太平洋クラブ江南)でまたも豪州のアダム・ブランド(32)が通算16アンダーでリードを守って優勝。ビッグ賞金3000万円を獲得しました。開幕戦の東建はマイケル・ヘンドリー(ニュージーランド)、第2戦の中日クラウンズはI・J・ジャン(韓国)。そしてブランドと、開幕から3戦連続外国人が勝ったのは、95年以来20年ぶりです。豪州出身選手が日本プロに勝ったのは初、レフティーが日本プロに勝ったのも初(国内ツアーでも左打ちの優勝は、91年にダイドー静岡OPを制した羽川豊以来24年ぶり)という″珍現象〝で今年初のメジャーは幕を閉じました。日本ツアー本格参戦2年目のブランドはほぼ無名選手。右利きから14歳のころ左打ちに転向したという異色男。最終日は大詰の17、18番を連続ボギーにしながら追い上げてくる選手がなく、圧勝で日本初Vをメジャーで飾りました。日本人選手の元気の無さはどうでしょう。倉本昌弘PGA会長も苦言を呈しましたが、これでは、人気の女子にますます″差〝をつけられる男子ツアーですー。
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4月16日開幕という出遅れ?の男子ツアーですが、さらに飛び飛び日程の上、3試合目にはもう今季初のメジャーが組み込まれる慌ただしさです。今年で83回目の開催となる日本プロ。プロゴルファー日本一を決める国内3大メジャーの第1戦です。数々の名勝負や名場面を歴史に刻んできたこの大会。今年は一風変わった大会として記憶に残るでしょう。初日には日本本格参戦2年目のK・T・ゴン(32=韓国)が単独首位に飛び出し、2日目からはアダム・ブランド(豪)がトップを奪って突っ走りました。3日目は岩田寛、川村昌弘が上がってきましたが、すでに6打差をつけたブランドが17アンダーで独走態勢でした。4位タイには、開幕戦で勝った日本ツアー3年目のマイケル・ヘンドリー(35)や李 尚熹(イ・サンヒ=韓、23)ら外国勢がつけていました。
日本勢の主役になるはずの片山晋呉やホストプロの池田勇太、ベテラン藤田寛之らはあえなく2日間で予選落ち。昨季の賞金王、小田孔明や谷原秀人、谷口徹らも予選は通ったものの下位に低迷して意気が上がりません。宮里優作、聖志兄弟が3日目に同組でプレーしたのに話題が集まったくらいでした。2位に食い下がって最終日の巻き返しに期待がかかった日本の川村昌弘、岩田寛も、川村がアウト7、8、9番で、岩田はインの14、15、16番でともに3連続ボギーを叩く致命的なミスで追撃に力が入りません。最終組の4組前、9打差にいた小平智が1番で奥のカラーから放り込むイーグル発進。2番もバーディーにして追撃態勢。6、7番も連続バーディーで1時は13アンダーにスコアを伸ばして色めき立ちましたが、8番ボギー、9番パー5では3パットして自ら流れを切ってしまいました。最後は23位に沈むありさまです。8位にいた藤本佳則が、68で回って3位に上がってきましたが、これも最終18番では第1打を左に大きく曲げてボギーにするなど、到底トップには届きません。通算12アンダーで日本人最上位の4打差3位で終わったのが精いっぱいでした。開幕して3試合目。日本選手の調子もまだ上がっていないうちに早々とメジャー開催で、追っ手もバラバラ。充実している外国勢に遅れをとる一因になったのかもしれません。
追いかける側にとっては歯がゆい一日。「ブランドはスキだらけだったのに・・」(岩田)と悔しがったように、最終日のブランドはショットは不安定。前半はパーオンが出来ずになんとか″拾うゴルフ〝で凌いでいたのです。つけ入るスキはいくらでもあったのに、追撃の手が生ぬるかったのが、ブランドを立ち直らせ、楽に逃げ切らせてしまいました。
★日本ツアー参戦2年目で初優勝したA・ブランドの優勝コメント★
「嬉しい。久々の優勝だったし、このように大きな試合で勝ったのは10年ぶり(05年のウエスタン豪州PGA選手権以来)だったから。最終日は前半、緊張してショットが左へ行ったが、ラッキーに助けられた。バックナインではパッティングがよくなった。大量リードでのスタートは守りに入りがちで難しいものだけれど、今日は攻めて20アンダーくらいを目指してプレーしていた。パットは、開幕戦の東建で悪かったのでオーストラリアに帰って1日6~7時間練習した。肩が揺れていたので、右肩を低めにキープするアドバイスをコーチから受けてよくなった。自分は右利きだけど、13~14歳のとき左で打ち始めたら、しっくりきて上達も早かった。ここ数年はメンタル面で悩み、プレーするのも嫌だったこともあった。メンタル面を強化して立ち直れた。きょうは、18番にきて、もうダブルボギーでも勝てる、と思った。米ツアー挑戦は将来の目標だが、当分は日本ツアーでプレーしたい。日本のコースは自分に
合ってるし、日本食も好き。寿司が一番好き。(2人の子どもがいるので)日本とオーストラリアは近いからいいです」
05年にプロ転向してからはカナダ、米下部ツアーなど各地のツアーを渡り歩いてきた強者。日本でレフティーの優勝が珍しいことについては「日本にはレフティーが少ないということでしょう。カナダなんかは右利きと左利きとは半々くらいいる」と話し、外国人の優勝が続いていることには「みんな日本好きで日本でのプレースタイルが合っている選手なんだと思う」と、日本礼賛のコメント。日本プロ優勝で得た「5年シード」は宝物のように嬉しかったようです。
開幕から3戦連続で外国人選手が勝ったのも今季の大きな特徴です。アジアンツアーなど海外に数多く遠征しているプロ5年目の川村昌弘は「インターナショナルツアーみたいでいいじゃないですか。強い外国人選手がこぞってきているので、外国選手が勝ってもあまり気にしてません。同じツアーメンバーですし、海外に行ったら同じ日本ツアーのメンバーですから」と、国際派らしい前を向いた意見。アジアンツアーの出場権を持っている川村は、先週もアフリカ東部インド洋諸島でのモーリシャスオープン(欧州・アジアンツアー)で5位に入り、月曜日に帰国したばかり。今週は日本で健闘しました。このモーリシャスでゴルフで川村が訪れた国は計22ヵ国。まさに世界を股にして羽ばたくたくましい21歳です。
しかし、外国人選手に蹂躙される?日本ツアー。日本プロゴルフ協会倉本昌弘会長は苦言を呈しています。
「実力者といわれる人達が早々と予選落ちでいなくなるのは寂しい。もっと粘ってほしかった。それに2番手の選手たちが追いかけてもらいたかった。追いかける方が、入れかわり立ちかわりになって、優勝したアダムに逃げ切る余裕が出てしまった。人気回復のためには、プロアマやファンサービスも重要ですが、それは当たり前のこととして、もっと選手には死にもの狂いで練習してほしいですね」
優勝したブランドを称賛しながらも、日本選手への奮起をうながす倉本会長です。
過去、外国勢開幕4連勝はありません。飛び飛びだった日程も、ようやく次週は21日から関西オープン(滋賀・名神八日市)が控えています。日本勢が意地をみせられるかどうか。奮起が待たれます。