1試合だけの里帰りであえなく予選落ち。米ツアー10年目、シード権も失くした宮里藍の苦悩は深刻?!

大勢のギャラリーが見守る中、テーショットを放つ宮里藍(ワールドサロンパス杯=茨城GC東コース)
大勢のギャラリーが見守る中、テーショットを放つ宮里藍(ワールドサロンパス杯=茨城GC東コース)

今季国内初参戦の人気者、宮里藍(29)があっけなく予選落ちしてファンをがっかりさせました。女子の国内メジャー初戦のワールドレディス・サロンパス杯(5月7~10日、茨城・茨城GC東コース)。藍ちゃんが″特別承認〝の出場資格で帰国、初出場するとあって、ゴールデンウイーク明けにもかかわらず、大勢のファンが集まりました。女子プロ人気の日本のゴルフツアーですが、この週ばかりは宮里藍を取り囲むギャラリーが断然トップ。そんな期待を一身に受けながら藍ちゃんは72、77とアンダーパーはなく、通算5オーバーで予選カットラインに1打足りず、2日間で姿を消しました。昨季は米ツアーで賞金ランク86位でシード権(80位まで)を落とし、苦しみの日々を送りましたが、今年6月19日には30歳を迎える藍ちゃんに、大きな″かげり〝が見え隠れしてきたのは寂しい限りですー。今一度のカムバック、成りますか?!

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ゆっくりしたリズムで大きなスイング・・宮里藍独特のドライバーショット(ワールドサロンパス杯)
ゆっくりしたリズムで大きなスイング・・宮里藍独特のドライバーショット(ワールドサロンパス杯)

初日から5000人に近いギャラリーが、藍ちゃんを一目見ようとコースに詰めかけました。もうじき30歳になろうかという藍ちゃんですが、その人気度には驚かされます。大ギャラリーを引き連れてのラウンドとなった初日は、イーブンパーの35位発進。「日本の女子プロ人気はすごいな、と感じました」(藍)と、なにはともあれ集まった観衆の多さに目を白黒。スタートの10番で米ツアー昨季2勝、賞金ランク16位と飛躍中の招待選手、ジェシカ・コルダ(米国)が、8㍍のバーディーパットを沈めると、負けじと4㍍を入れ返すバーディー。いいところを見せましたが、そのあとはホールを追って思うようなプレーが出来なくなりました。ショットがピンに寄らず、長いパットが残る苦しい展開。ボギーも重なってパープレーがやっとでした。2日目は肝心のゴルフますます悪くなり、特に短いパットを簡単にミスしてしまうのは、一流選手のプレーにはほど遠い内容で、顔を曇らせました。16番ではダブルボギー、17番(パー3)ではボギーを連続して叩くなどいいところなく、予選ラインを突破できませんでした。

お里帰りの藍ちゃんを見ようと人気沸騰の女子プロツアー(ワールドサロンパス杯=茨城GC東1番ティーグラウンド)
お里帰りの藍ちゃんを見ようと人気沸騰の女子プロツアー(ワールドサロンパス杯=茨城GC東1番ティーグラウンド)

昨季の米ツアーでは、終始パットの不調で苦戦。シード落ちの大きな要因となりましたが、その修正が今年もうまくいっていないという印象でした。シーズオフの練習で、たまたま父親が使っていたオデッセイの″2ボールパター〝を手にして好感触を得、「自分も以前(10年ほど前)好きで使っていたパター」(藍)と、このパターに戻すことを決意したいきさつがあります。そして、最大の課題になっていたパッティングに今季は復調の兆しを見せているといわれてきました。これまで今季米ツアー9戦戦って予選落ちはなし。3月のファンダーズ・カップ17位(今季最高位)。4月、今季初メジャーのANAインスピレーションは初日68で2位発進しながら、スコアを落として41位で終了。続くハワイ・コオリナでのロッテ選手権でも、3日目6位に追い上げながら、最終日78を叩いて18位に後退して終わる歯がゆい連戦が続いています。

そして期待の中で帰国した日本ツアー出場。そこで予選落ちした悔しさはかなりのものでしょう。

★2日間5オーバーで予選カットの宮里藍のコメント★

宮里藍のドライバーショット(茨城GC#1ティー)
宮里藍のドライバーショット(茨城GC#1ティー)

「なかなか流れが自分のところに来なくて、踏んだり蹴ったりの一日でした。一番苦かったのは、やはりグリーン上。(ボールを)右に押し出す感じが続いていて、修正しようとやってたけど、上手くいかなかった。しっかり打てたときはラインの読み違いだったりして、うまくかみ合わなかった。グリーンの状態は素晴らしかったのに、私の読み違いとパッティングの修正ができなかったという感じです。(16番のダブルボギー)バンカーに入ってライも悪くなかったのに失敗した。砂の量が多いところが多くて、エクスプロージョンで打ちたいのに飛んでしまいそうで、イメージの切り替えができなかった。ショットの感覚もアドレスでしっくりこなくて、思うようなタイミングで打てなかった。パッティングの流れも悪く全体的に調子が上がらなかった。収穫もなしというところですね。治すために″これだ〝というのは分かっていないですけど、微調整だと思っているので、その辺を修正して来週以降につなげたいです」

藍ちゃんは日本はこの1試合だけで、またすぐ米国に戻ります。今週はキングスミル選手権(バージニア州14~17日)、次週はエアバスLPGAクラシック(アラバマ州21~24日)と続きます。今季はシード権をなくしていますから、各試合の予選会など面倒な段階を経ないと出られない試合もあります。トッププレヤーだった藍ちゃんに、苦しい試練が押し寄せています。それが勝負の世界の掟というものでしょう。

第一打を打ち、いざスタート!宮里藍(ワールドサロンパス杯=茨城GC東コース)
第一打を打ち、いざスタート!宮里藍(ワールドサロンパス杯=茨城GC東コース)

03年、東北高3年、18歳でミヤギTV杯ダンロップにアマチュア優勝。その9日後にプロ宣言し、現役高校生プロの誕生でした。あれから12年。05年12月、5日間通算17アンダー、2位には12打差をつける圧倒的な強さで米ツアー最終予選会をトップ通過。06年からは本格的に米ツアーに参戦しました。米国を本拠としてから今季は10年目を迎えています。その間9勝(国内14勝)。ここ2年ほどパットの不調に悩み、13年、14年と2年連続で未勝利です。昨季はベスト10にも一度も入れませんでした。

藍ちゃんの強さの秘密は、精神面の強さと技術面の安定にありました。ゆったりとした大きなフォームから、常に同じリズム、タイミングでショットを打ちます。パットも正確で、リズムが崩れません。その長年の藍ゴルフが、30歳を間近にしてパッティングの崩れからおかしくなっています。特に飛ばし屋でもないので、ドライバーなどの飛距離は多くは望めません。今季も米ツアー9戦で平均飛距離は244.89ヤード。ランク102位という現在のドライビングアベレージです。藍ちゃんの主武器は、なんといってもアイアンの切れと小技。そしてパットにあります。トシだとは言ってもまだ30歳前です。まだまだ宮里藍は″死ぬ〝わけにはいかないでしょう。

今年は、やはり30歳になる横峯さくらが米ツアーに挑戦しています。スタート戦線で苦労したさくらも、じわじわと本来の調子を取り戻してきて期待が膨らんでいます。4月末現在では、世界ランキングでさくらが日本勢トップに上がってきました。″僚友〝さくらの頑張りもいい刺激にして、藍ちゃんのいまいちどのカムバックを期待しましょう。年齢のハンディを乗り越えて・・。