アルバトロスとイーグルを同日達成した渡辺彩香(あやか)の″奇跡”!

280ヤード超を飛ばす渡辺彩香のドライバーが、アルバトロスを生んだ。
280ヤード超を飛ばす渡辺彩香のドライバーが、アルバトロスを生んだ。

一般アマチュアでは100万ラウンドに1度以下の確率ーといわれるアルバトロス(パー5で2)を達成したかと思うと、7ホール後に今度は95ヤードの第2打を直接放り込むイーグルまで決める離れ技を演じた女子プロがいます。飛ばし屋でツアー2勝の渡辺彩香(あやか=21)。NEC軽井沢72(長野・軽井沢72・北コース。8月14~16日)の第2日に記録された快挙ですが、渡辺はそのおかげで予選落ちを免れると、最終日には7バーディー、ボギーなしの65で回って2打差の2位タイでフィニッシュ。生涯忘れられない1週間でした。アルバトロスとイーグルの同日達成は、11年、スタンレー・レディス第1日の有村智恵以来、ツアー2人目の″奇跡〝でした。
優勝は、テレサ・ルー(台湾=27)が通算14アンダーで今季3勝目。

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ティーグラウンドで打球方向を確かめる渡辺彩香。
ティーグラウンドで打球方向を確かめる渡辺彩香。

300ヤードドライブもやってのけるツアーきっての飛ばし屋・彩香ならではのハプニングでした。2日目、インスタートの16番(480ヤード、パー5)。やや左曲がりのこのホール。500ヤードを切っている短めのロング。渡辺の第1打は、左の林すれすれを狙った280ヤードショット。残りは195ヤード。渡辺ならアイアンで届く距離が残りました。4番アイアンを振り切ったたナイスショットは、グリーン手前のウオーターハザードとバンカーを越え、グリーンいっぱいで弾むと、そのまま転がってカップイン。パー5のところ「2」で入るめったに見られないダブルイーグル(アルバトロス)の達成でした。打ったフェアウェイからボールが転がり入るところを見届けた彩香は、両手をバンザイして大喜び。「ショットもよかったし、ラインも完ぺきにいったのでうれしかった。私は(パー5で)2オンすることが多いので、他の人よりは(アルバトロスの)チャンスが多いと思っていました。一度はやりたかったから・・」(彩香)と、会心の1打でした。
第1日にはこのホール、残り205ヤードでフォローの風。同じ4Iで打ってグリーンオーバーしていましたが、この日は逆風。残り距離も195ヤードと短かかったのですが「4番アイアンでちょうどいい」と、計算ずくのショットでした。

打順を待つ渡辺彩香。
打順を待つ渡辺彩香。

インを33でターンした渡辺は、7ホールあとの5番(361ヤード、パー4)では、残り95ヤードの第2打を58度のウェッジで打ってまたも直接カップインさせるイーグルまでやってのけました。後半を34で回って通算67。この日は朝からパットに苦しみ、バーディーチャンスも逃がし続けていただけに、値千金のアルバトロス&イーグル。この2ホールで5打縮めた渡辺は、通算5アンダーで14位へ。もし、この2ホールの奇跡がなければ、通算イーブンパーで予選落ちのところでした。

1ラウンドで2度までも、″見えない遠いカップ〝へ直接放り込んだ離れ技は、ラッキーそのものですが、人より1クラブでも番手の大きいクラブを使える飛距離を持っている飛ばし屋の有利さは、隠せません。これで調子づいた渡辺は最終日、7バーディー(ボギーなし)の65をマーク。優勝こそおよびませんでしたが、2位タイに食い込みました。まさにアルバとロスさまさま。予選落ち転じて、貴重な賞金632万円をゲットしたのです。

ティーグラウンドで日焼け止めクリームを使って、″いざ、出陣!〝の渡辺彩香。
ティーグラウンドで日焼け止めクリームを使って、″いざ、出陣!〝の渡辺彩香。

☆通算12アンダーで2位タイフィニッシュした渡辺彩香のコメント

「最終日はパットが入るようになって気持ち的に乗っていけた。アルバトロスをとった16番は、力が入ってショットを曲げてしまった。2オンが狙えずに第3打もチャンスにつけられなかった。テレサは14アンダーくらいはいくだろうと思ってやっていましたが、(自分に)あと1個がなかなかこなかったです。でもこの試合で問題だったパッティングがよくなったので、これからの試合が楽しみです。好きな試合も続くので・・」

渡辺彩香は静岡・熱海市出身。10歳からゴルフを始め、08年は日本ジュニア優勝。10年関東高校選手権、11年東日本女子パブリックアマを制し、高3では女子主将で全国高校選手権団体優勝に貢献。09年からはJGAナショナルチームのメンバーになる。埼玉・栄高時代は、熱海から新幹線通学で話題になったが、高校卒業した12年、7月のプロテストで一発合格。14年3月、アクサレディス宮崎で最終日、6打差を追い、最終18番でグリーン脇からチップイン・イーグルで逆転初優勝。飛ばし屋の名を一躍高めた。今季は4月、ヤマハ・レディスで2勝目。

2014年ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた渡辺彩香(左)と鈴木愛(中)、勝みなみ(右)=都内のホテルでの表彰式
2014年ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた渡辺彩香(左)と鈴木愛(中)、勝みなみ(右)=都内のホテルでの表彰式

アルバトロスは別名ダブルイーグルともいいます。パーより3つ少ないスコアで上がる快挙で、パー5を2打で入れるか、パー4を1打で入れるしかありません。アルバトロスの語源は、ポルトガル語のアルカトラズ(鵜の総称=アホウドリ)。並外れた飛翔力を持っていることからゴルフ用語となったとされます。1935年、マスターズの最終日、 ジーン・サラゼンがオーガスタの15番(パー5)で第2打をバッフィー(4W)で直接入れて首位をとらえ、翌日のプレーオフで勝利した。この時のサラゼンの快打は、「ダブルイーグル」と報じられました。鷲が国章となっている米国では、アルバトロスよりダブルイーグルの名称が多く使われている。(ゴルフ雑学事典=毎日新聞社刊より)

日本では1989年5月の「三菱ギャラン」の初日、18番(503ヤード、パー5)で中尾豊健が第2打、218ヤードを3Wで直接入れるアルバトロスを達成。その約3時間後、新井規矩雄が同じ18番で第2打、210ヤードを2番アイアンで直接カップインさせるアルバトロスを成し遂げ、同日同ホールでの2個のアルバトロスは″世界初〝と騒がれました。国内女子では過去11回達成されており(今回で12回目)、有村智恵が2回達成。男子ツアーは、記録が残る85年以降で34回。ほとんどがパー5の第2打を入れているが、中嶋常幸が98年中日クラウンズの1番パー4の第1打を入れた珍しい例も残っています。

最近の国内では、女子は13年CATレディスの佐々木慶子以来、男子ツアーでは今季マイケル・ヘンドリー(ニュージーランド)が達成しています。いずれにしても″奇跡〝に近い快挙を樹立した渡辺彩香の残る今シーズンは注目です。