「芹沢プロのお力!」ープロ8年目、33歳の西山ゆかりに、遅咲きの花を咲かせた芹沢信雄プロ

プロ8年目、初勝利が遠かった西山ゆかり。ショットの前に必ず右腕を胸の前に合わせてから構えに入る。
プロ8年目、初勝利が遠かった西山ゆかり。ショットの前に必ず左腕を胸の前に合わせてから構えに入る。

プロ8年目、33歳の西山ゆかりが、この試合限定でキャディーを務めた師匠で男子ツアー5勝、シニアツアー1勝の芹沢信雄(55)の支えを得て、劇的なツアー初優勝を成し遂げました。meiji カップ(北海道・札幌国際CC島松コース、8月7~9日)での出来事。「ショットは1級品なのになぜ勝てない?!」(芹沢プロ)と精神面、ゲームマネジメントにクサビを入れた″芹沢調教師〝の腕前は見上げたもの。通算8アンダーで並んだ鈴木愛(21)とのプレーオフ2ホール目、6㍍のバーディーパットを決め

て悲願の1勝を勝ち取りました。珍しいドラマで初Vを果たした2人は、手を取り合ってギャラリーに向かって万歳三唱、喜びを爆発させました。

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平均飛距離は250ヤード。正確なショットは「一級品」(芹沢プロ)の折り紙つきの西山ゆかり
平均飛距離は250ヤード。正確なショットは「一級品」(芹沢プロ)の折り紙つきの西山ゆかり

初日は3アンダーで3位。2日目は2アンダーで通算5アンダーでトップタイに立った西山。最終日、最終組と優勝争いの中心で戦いました。首位で並んだのは世界でもトップ10に入るフォン・シャンシャン(中国)。小差で追いかけてくるの賞金ランク1位のイ・ボミ(韓国)。昨年大会覇者の申ジエ(韓国)。昨季最年少20歳で日本女子プロを制した鈴木愛・・とそうそうたる強敵ぞろいでした。その中で負けなかった西山。「芹沢プロのお力です。感謝の一言です」(西山)。
その最終日は前半、好ショットを次々と繰り出して4バーディー。単独トップを奪いました。勝負のバックナイン。さすがに西山の足どりが止まりました。なかなかバーディーが取れません。芹沢師匠からは「スコアが伸びないこういうときは、セーフティにいこう」と、助言されて落ち着きました。大詰にきた17番(パー3)ではボギーにして、スコアを伸ばしてきた鈴木愛に並ばれ、そのままプレーオフへともつれ込みました。「命までとられるわけじゃない。まだトップタイなんだから、やることに集中していけ」と芹沢。「一言一言が自分のプレーを最後までさせてくれて、いままでの自分とは全然違いました」と西山。

最終日、67で追い上げ通算8アンダーでプレーオフに持ち込んだ鈴木愛。2ホール目に2㍍のバーディーパットを外して、西山ゆかりの初V成る。
最終日、67で追い上げ通算8アンダーでプレーオフに持ち込んだ鈴木愛。2ホール目に2㍍のバーディーパットを外して、西山ゆかりの初V成る。

18番(パー5)でのプレーオフ2ホール目。2打目を打ち終わって歩いているとき、西山は師匠にいいました「どうしても勝ちたいです」-。すると師匠「その気持ちが大事なんだよ。やることに集中してやるしかない。どっちかがバーディーをとるんだから頑張れ」。鈴木がバーディーをとるんだったら私もバーディー・・。「そんな気持ちでグリーンに上がっていけました」(西山)。鈴木が2㍍につけ、西山は6㍍。先に打つ西山。師匠と見たラインはスライスと決まりましたが、「タッチを出せ」と芹沢プロ。西山は「スライスだけど、カップのセンターを意識して打ちました。強い、と思ったんですけど、カップの手前で曲がって入ってくれました。何ともいえない気分でした」と西山。しかし師匠はすぐ「愛ちゃんのパットが残っている。ここで気持ちを切らさないようにしなきゃあね」と一言。「その一言で、喜びというより引き締まった気持ちでした」(西山)。

鈴木のバーディーパットはカップを外れ、西山の記念すべき初優勝が転がり込んできたのです。

☆8年目のツアー初Vをつかんだ西山ゆかりのコメント

「まだ夢の中にいるみたいで実感が湧いてきません。朝から緊張で食事ものどを通らなず、芹沢プロに″夢の中にいるみたいです〝といったら″夢の中にいる気分でやれ。集中したらそんなもんだ〝といわれました。いまもその気分です。昔から敬愛する芹沢プロなので、こうやってバッグを担いで頂き、それだけでも夢の3日間だったのに優勝までさせて頂き感謝です。芹沢プロの持っているパワーというか、明るさと的確なアドバイス、弟子を思ってくれる気持ち・・。凄いです。そのおかげで、私にも笑顔が出来ました。″18ホールを終始笑顔で回らせることが、僕の仕事です〝というきのうのコメントをみたとき、本当に私のことを分かってくれていて何とも言えない気持ちでした。私には私に合ったアドバイスをしてくれて、基本も忠実にいってくれました。こんなことまで考えてプレーするんだと、私の頭の中にはないことばかり。くまなく教えて頂き、記憶を振り返って自分のものにしていきたいです。3日間(録音)レコーダーを持って回りたいぐらいでした」

プロ8年目のビッグプライス、1620万円のチェックを受け取る喜びの西山ゆかり 
プロ8年目のビッグプライス、1620万円のチェックを受け取る喜びの西山ゆかり

精神面ではもろい自分が、師匠の一言一言で前を向いて集中できた、と感謝する西山。
まさに貴重な3日間だったようですが、師匠から指示される即席アドバイスを、実戦の中で一つ一つ実行に移せたのは、33歳の経験があったからでしょう。″芹沢効果〝てきめんの珍しい優勝でしたが、西山が自分の力で勝つゴルフができるかどうか。本当の戦いはこれから始まるといっていいでしょう。

遅咲きの西山ゆかりです。神奈川・藤沢市出身。中学では陸上(中距離)、藤沢西高ではハンドボール。高卒後、18歳でゴルフを始め静岡・朝霧CCの研修生で7年間、名コーチといわれた時任宏治プロに師事。08年、3回目のプロテスト受験で26歳で合格。
昨年、Tポイント5位などで賞金ランク43位で初賞金シード。2年前から芹沢プロに師事し「チーム芹沢」の一員となり、今年1月は千葉、2月にはハワイキャンプにも参加するなどで充実したオフを過ごしました。

師匠・芹沢信雄プロとの初タッグ。バーディーを決めて″こぶしタッチ〝する二人(フジテレビの実況から)
師匠・芹沢信雄プロとの初タッグ。バーディーを決めて″こぶしタッチ〝する二人(フジテレビの実況から)

それにしても、男子のツアープロが女子ツアーでキャディーを務めるのは珍しいことです。芹沢信雄といえば男子ツアーでも人気の高いプロですが、ゴルフを教えるコーチとしても名をはせ、藤田寛之、宮本勝昌の男子プロ。女子では木戸愛、前田陽子、佐藤靖子らが門下生となっている「チーム芹沢」を立ち上げています。今年4月には神奈川・箱根の大箱根CC内に芹沢が校長を務める会員制の「チーム芹沢ゴルフアカデミー」を開校。高田順史プロらレッスンプロが常駐、アマチュア向けにもゴルフのノウハウを教えるスクールを設立しました。

西山プロについて芹沢プロは「ショットは一級品なのに、なんで賞金ランク40位だったりで勝てないの?」と、今大会限定でキャディーを買って出たという″親心〝でした。その1回のチャンスを、しっかりとモノにした西山の吸収力も凄いものがありました。

「ボクはボランティア。(西山の)実家でお寿司をご馳走になれば十分」と師匠・芹沢の弁。西山の実家は藤沢・湘南台で寿司店を営み、今大会は店を臨時休業にして両親揃って応援に駆けつけていました。その目前での快挙でした。遅咲きながらドラマを演じた西山ゆかりのゴルフ人生は、今後何色に輝くでしょうか?