昨季7勝を挙げた賞金女王は強かった!ツアー史上初となった同一大会5年連続プレーオフのヨコハマタイヤPRGRレディス(高知土佐CC)。女王イ・ボミ(27、韓国)は飯島茜(32)、柏原明日架(20)との3人プレーオフを4ホール目のバーディーで制して今季初優勝。早くも賞金1440万円を獲得しました。プロ入り3年目で初のシード選手になった新鋭・柏原明日架が、プレーオフ3ホールまでいずれも一番カップに近いところに2オンしながらウイニングパットを決められず、プロ初優勝を逃がしました。今季も国内女子ツアーは2戦目を終わって外国勢(テレサ・ルー、イ・ボミ)の連覇で幕を明けました。
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国内女子ツアーは、2戦目で早くも大詰のドラマを見せてくれました。本戦の18番。まず飯島が7㍍のバーディーパットを沈めて8アンダーで抜け出すと、同組の柏原もほぼ同じ距離のバーディーパットをねじ込んで8アンダー。続いてきた最終組のイ・ボミの18番は第1打を右ラフに入れ、立木が障害となってピンを真っ直ぐには狙えず、左から10ヤードも右に曲がるスライスボールを放ちました。134ヤードを8番アイアン。これが見事に決まってグリーンエッジに落ちたボールは、右にキックしながらカップに寄り、あわや逆転イーグルかと思わせた打球はカップ脇30㌢。奇跡的なバーディーで8アンダーとしたイ・ボミもプレーオフに追いついたのです。
プレーオフはこれまで6勝1敗 。断然の強さをみせるイ・ボミから無言の威圧を受けたのでしょうか。相手の2人は次々の″入れれば勝ち〝のバーディーパットを外します。1ホール目、飯島の2㍍バーディーパットはカップに蹴られて入らず、柏原1.5㍍の″プロ初優勝パット〝も「下りで難しいラインだった」(柏原)と、決まりません。飯島の3ホール目は、入ったかと思われた7㍍のバーディーパットが、カップをのぞいて止まる不運。柏原は3ホール連続でいずれも一番カップに近いところに乗せながら1発も決まりませんでした。2打目をグリーン手前にショートしたり(2ホール目)、5㍍のバーディーパットをショートさせたり(3ホール目)と、危ない橋を渡ってきたイ・ボミは、相手2人のパットミスに乗じて4ホール目に6㍍近い下りフックラインをすかさず沈めて勝負を決めました。
プレーオフはこれで7勝1敗。ツアー制施行後は不動裕理の9勝5敗に次ぐ勝利数。スロースターターのイ・ボミ(昨季は開幕11試合目で初V)にしては開幕2戦目の初優勝は「本当に信じられないくらいうれしい。体もしんどかったし、心の中ではいろんなプレッシャーがあった。でも集中するところだけ集中できた。まだ意識はしてませんけど、去年の賞金女王なので3勝はしたい。リオ五輪にも代表になりたいし(現在韓国8番手)・・」とイ・ボミ。2月最終週に米ツアーのタイでのホンダLPGAに出場(24位)のあと前週の国内開幕戦(6位)。そして今週と3週連続出場で体も疲労のピーク。しかし、勝負どころは逃がさず、決めるところは決める強さがイ・ボミにはあります。
このイ・ボミを支えている専属キャディーの清水重憲さん(41)が、この勝利で男女ツアーで通算32勝というご祝儀もありました。近大卒業し田中秀道、谷口徹、上田桃子らのバッグを担ぎ、イ・ボミとのコンビでは12勝目。非公式ながら尾崎将司の専属だった佐野木計至元キャディーに並ぶ最多勝タイ。いまではイ・ボミから全幅の信頼を受ける名コンビです。
それにしてもこの強敵、イ・ボミを下してプロ初優勝ーのビッグチャンスを逃がした柏原明日架には悔いが残ります。宮崎出身のプロ3年目。アマチュア時代(宮崎日章学園高)には英国で開催された男女混合16歳以下のジュニアオープン選手権で女子の優勝を遂げて″世界一”になった経験もあります。14年8月にプロ入り。昨季は下部のステップアップで主に戦いましたが、20試合に出場したツアーで日本女子オープン4位が光り、賞金ランク50位でギリギリのシード入り。今季は待望のツアー本格参戦中です。昨季出場したほけんの窓口レディス(5月)では、6位タイに入る健闘でしたが、2日目にスコアを崩したとき、パターでグリーン面をたたきつけるマナー違反を犯し、協会から厳しい注意を受けた″脱線”がありました。明るく強気な性格で親しまれている選手ですが、早く1勝することがもっと大きな飛躍につながるでしょう。
昨季も平均パット数1.8467の成績を残し、今季開幕まだ2試合ですが、平均パット数1.7049で1位。平均バーディー数も4.2で1位に立つなど、パッティングが上手い若手で、注目の今季は好スタートをみせています。
「プレーオフを逃がしたのは残念ですが、収穫も多かったです。プレーオフに入ってから、パットが緊張で入らなくなった。チャンスがあったんですけど・・。下りラインについて仕方がないかなって思ったんですけど、ボミさんは(下りラインも)しっかり入れてきた。その辺りが差かなって感じました。キャディーさんに狙い方や、試合前の考え方とかいろいろ教えてもらって、優勝はできなかったですけどそれ以上の価値がありました。前半戦で1勝したいので、これからも休まずできるところまでやりたいです」
柏原は、逃がした魚の大きさをにじませながらも、プロ初優勝への手応えは感じたようでした。168㌢、63㌔と均整のとれた大型選手。「体の割にはもっと飛距離が欲しい」との声はありますが、国内女子プロ、今季の期待の星なのは間違いありません。柏原明日架の初Vはいつ?