男子ゴルフツアーを統括する日本ゴルフツアー機構(JGTO)の第4代会長に、永久シード保持者の青木功(73)が就任しました。選手出身の会長は初代の故島田幸作氏以来。青木氏を支える副会長には、6年間日本プロゴルフ協会会長を務めた松井功氏(74)、日本の男子ツアー発足に尽力した元ダンロップの大西久光氏(現ゴルフ緑化促進会理事長)、さらに今季選手会長に選ばれた宮里優作ら4人。自身が務めていた特別顧問に尾崎将司(69)、新設の相談役には丸山茂樹(46)を指名。男子ツアー活性化へ豪華布陣で「青木丸」が船出します。任期は2年。退任する海老沢勝二前会長は名誉会長。
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3月4日、都内のホテルで定時社員総会と理事会を開いたJGTOは、かねてから交渉を続けてきたプロゴルファーの青木功氏を満場一致で新会長に選出しました。プロ通算85勝、賞金王5度。日本男子では初の世界ゴルフ殿堂入りし、08年には紫綬褒章、15年には旭日小綬章を受賞するなど、経験豊富な日本ゴルフ界のレジェンド。理事は17人で、会長以外にシニアで青木ファミリーの一人、渡辺司ら選手会から6人が名を連ね、男子ツアー改革へ現場の声も強く反映させようとする体制を整えました。
女子ツアー人気に後れを取る男子ツアーは、低迷の数年間を過ごしています。試合数は減少傾向を続け、今季は海外と提携した2試合を含めて26試合。女子ツアーは、3月3日から11月末までほとんど休みなしで38試合。賞金総額でもいまや女子に抜かれた男子ツアーは深刻な状況を抱えています。ジュニアや選手育成、プロ資格の授与やシニアツアーを抱える日本プロゴルフ協会(PGA)と違って、プロツアーを統括するJGTOとしてはツアー競技の減少は死活問題といえます。低迷する男子ツアーの立て直しは、もう待ったなしの現状なのです。
男子ツアーの選手会は、すでに数年前から世界のアオキ、国内でも知名度の高い青木功プロをJGTOの会長として先頭に立ってもらうプランで、アプローチを続けていました。しかし、その都度青木氏は断ってきた経緯があります。今回、海老沢勝二前会長(元NHK会長)の2期目の期限切れに伴い、選手会からの推薦を受けたJGTOが再度の青木氏勧誘に乗り出しついに承諾を得たものです。
選手会からも熱いラブコールを受けた青木氏は語りました。
「自分の年齢的にもそうなのかなと思ったり、2度も3度も要請を断るのもどうかなと思って決意した。でも私が会長になったからといって男子ツアーが盛り上がるんじゃない。選手がゴルフに対して責任感を持ってやっていくことが、低迷から這い上がれる道ではないか。私に託されたものは重いと思ってる。ゴルフだけをやってきた人間だし、会長職は難しいかもしれない。松井(功)さんや大西(久光)さんたちの助言も受けながら、スポンサーさんやマスコミにも意思がよく伝わるようにしていきたい。難しいことがあってもぶつかっていき、お世話になってきたゴルフ界に精いっぱいお返しをしたい」
自身が務めていた特別顧問には、長年の盟友・ジャンボ尾崎に自ら電話をかけ″顧問就任〝を要請。協会入りには関心を示していなかった尾崎将司の承諾をとりつけました。丸山茂樹には「自分と若い選手とは40歳くらいの年齢差がある。自分がいうと押しつけがましくなることもある。丸山クンにはその中に入ってクッションになってもらいたい。ジャンボはゴルフ界にいろんなものを残しているのだから、そのうち何か一つでも残して欲しい。ジャンボの目が光る中で若い人がやっていけば、ゴルフ界がよくなるに違いない」と、青木氏の思いが豪華シフトに広がりました。
前週、青木氏は女子プロツアーの開幕戦、「ダイキンオーキッド」のプロアマ大会に出場。上田桃子や関連企業の人と同組でプレーしましたが、女子選手たちがお客さんと数多く会話を交わしスポンサーには気遣いをしているのい驚いたそうです。男子プロはややもすればスポンサー企業やファンへの対応に問題があるともいわれてきました。女子のような丁重なもてなし意識やコミュニケーションを高める必要性もあるでしょう。 青木新会長は、プロアマ大会での会話を増やすためにも「プロとアマ、同じティーグラウンドを使用する方式に見直しを検討したい」と、早くもプロアマ大会改革を提起しています。
また青木新会長は「現在26試合のツアーを、できれば35~36試合くらいにしたい。スポンサーを回って、青木がいるなら大会をやってやろうというところが出てくればうれしいが、まあ1つでも2つでも増える方向にもっていきたい」と意欲をみせ、選手が社会人としても向上してほしいと訴える。その実現へ「人を育む」とのJGTO理念を掲げているの0も注目です。
会長職に就いた青木功プロの試合出場は、どうなるのでしょうか。「いままではプレーに専念してきたが、これからはそうはいかないでしょう。ただ、選手会からは多少は出場してもいいですよ、と許可をもらってる。年齢的にも試合数は減るかもしれないが、できるだけ両方とも頑張ってやってみたい」と、まだ″現役〝にも未練を残す青木会長に、横に座っていた松井副会長は「いや、会長職を優先してもらいますよ。メジャーなどには出場しても構わないが、それ以外はツアーのために仕事をして欲しい。そうは出しませんよ」と、クギをさして青木会長も苦笑いでした。
青木会長と同年配の松井副会長は、同じ″功(いさお)仲間〝として昔から気心の合う二人です。記者会見の席上でも、答えにくい質問にはすかさず松井氏が助っ人役で口をはさむなど、早くもいいコンビぶりをみせていました。松井氏がPGA会長時代に実績を残したシニアツアーの試合数増加へのノウハウを、もう一度JGTOでの営業活動で活用することになるでしょう。青木・松井の″功コンビ〝に大きな期待がかかります。「何とか青木さんのビッグネームと人間性をお借りして試合数を増やし、組織の改革もやっていきたい。青木さんとともに、人生最後の大勝負です」(松井副会長)。
多彩な技と勝負強さで一世を風靡(ふうび)した青木ゴルフが、今度は背広を着てのJGTO改革。どこまで氷河期の男子ツアーを蘇らせるでしょうか?