ゴルフの普及と活性化を目的にできた新たなトーナメント3年目の「ダンロップ・スリクソン福島オープン」(7月21~24日)。無名の時松隆光(22)が大会新記録の通算25アンダーでツアー初優勝しました。優勝賞金は1000万円(総額5000万円)。総事業費用のスリム化を図り小規模な試合ですが、同様のトーナメントが各地で開催されるようになるためのモデルケースを目指した大会です。優勝した時松はプロ5年目。昨年の賞金ランクは112位。シード獲得の経験はなく13年の関西オープン5位が最高成績。7月上旬のチャレンジ・ツアー(下部ツアー)で初優勝。チャレンジ優勝の権利でレギュラーツアーに参戦して優勝したのは史上初の出来事でした。話題の少ない男子ツアーに久々のホットな話題を投げかけた″無名男”の今後が気になります。
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チャレンジツアー「ジャパンクリエイト・チャレンジin福岡雷山」(6月30~7月1日)で優勝、次週の日本プロ日清カップへの出場がかない、37位(通算1アンダー)でフィニッシュ。今季の初賞金37万5000円を獲得したばかりの時松でした。これが今季2戦目のツアー出場で、ツアー初優勝という大魚を捕まえました。初日「65」で飛び出した時松は、2日目1打差の2位に後退したものの「ショットがいいから」と3日目は10バーディー(1ボギー)もたたき出してコース記録タイで自己ベストの「63」をマーク。「どうなっているのか、自分でも分からなかった」と猛烈な勢いを加速させ通算21アンダーで単独首位に立ちました。ショット、パットともにほとんど素振りなしで構えたらポンと打つ。「いっちゃいけないところだけを決めたら、さっと打つことにしている」と、思い切りのいい独特のゴルフが目を引きました。
突然訪れたツアー初優勝への大好機。2位に5打差をつけて自身初めての最終日最終組。「2位との差はあまり考えず、気持ちのコントロールに気をつけた」といいながら「(ショットを曲げた)6番ぐらいから緊張してきたな、という意識があったけど、気負わずにいった」と、最終日最終組の重圧との戦いにも負けず5バーディー、1ボギーの「68」は立派でした。
「自分でも優勝できたことに驚いています。レギュラーツアーに出場できるだけで嬉しかったのに、優勝とはー。シード権獲得が今季の目標だったのに一気にすべてが達成できて本当に嬉しい」(時松)
同い年ですでにツアー2勝している仲のいい川村昌弘は「時松は昔からゴルフはうまいんだから一つ勝ったらこのまま勝っちゃうんじゃないですか」と、高い評価を示しています。海外志向が強くすでに毎年海外ツアーに挑戦している川村ですが「自分は日本ツアーで力をつけて、毎年シードを取り将来はメジャーにもトライしたい」と、親友の後を追って海外への意欲もチラリとみせる時松です。
福岡県出身。沖学園高出。11年には九州アマ選手権に優勝。プロに転向した12年、知り合いの僧侶の勧めで本名の「源蔵」(げんぞう)から「隆光」(りゅうこう)に改名。「プロで活躍できるから」とのお墨付きをもらっているとか。幼くして心臓病を患い「3歳か4歳のときに手術した」(時松)という。5歳のときに健康のためにと自宅近くの「桜美ゴルフハウス」に通い、当時からの師匠、トップアマだった篠塚武久コーチから教わったベースボールグリップを今も続けています。プロに入ってからオーバーラッピング・グリップなど一般的なグリップに変えることも勧められましたが「他のグリップでは曲がるし当たらない」と、珍しい10本指で握る″野球グリップ”をいまも通している珍しいプロです。またパットの巧さにも定評があります。
今大会はダンロップスポーツと福島中央テレビ、日本ゴルフツアー機構が共催して大会を運営しました。試合数が激減している男子ツアーには、優勝賞金1000万円のスリムなトーナメントでもいい、こうした地域と密着したぬくもりのある大会が増えることが望まれます。ビッグネームの欠場は気になりましたが、そんな中でシード権もなかった男がみせた強烈な個性。シンデレラボーイ・隆光の夢が開くのはこれからでしょう。