61歳の室田淳が最終18番で劇的なイーグルを決めて2年連続4度目の大会制覇を果たす超ドラマがありました。シニアツアー今季第7戦目、「ファンケル・クラシック」(静岡・裾野CC)での出来事。シニアツアー最多のギャラリーを毎年集める人気のトーナメント。今季も3日間で延べ20877人と例年通り2万人を超す賑わいをみせた中での室田の快挙。ツアー通算16勝目。″若返り”の波が押し寄せているシニアツアーでみせた″鉄人”のパフォーマンス。優勝賞金1500万円に加え、今年から新設のグランドシニア特別賞(60歳以上)の300万円も合わせてゲット。優勝副賞のトヨタ クラウンハイブリッドその他と、盛り沢山のプライズを得た室田は、一気に賞金ランキング2位に浮上。2年連続5度目の賞金王獲りを目指さないわけにはいかないでしょうー。
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1週間前には米オハイオ州コロンバスでの全米シニアオープンにトライしていた室田。荒天で月曜日決着と伸びた日程で、水曜日の17日に帰国したばかり。試合は56位(16オーバー)と振るいませんでしたが、日本に帰ってくると″鉄人”に蘇ります。18日にはプロアマ戦に出場。時差ぼけにも負けず19日からの裾野に臨んだのですが、さすがに初日は1アンダーで19位発進。しかし2日目には67で回り、通算6アンダーでトップタイに浮上。10番(パー5)では13㍍のイーグルパットを決めるなど、強気な″室田ゴルフ”が頭をもたげ優勝争いにからんできたのです。
61歳になった今季。強かったころの室田淳のゴルフが影をひそめ、国内シニアツアーで3試合(ファンケルで4試合目)しても優勝からは遠く、掛け持ちするレギュラーツアーは7戦して予選落ち4回、棄権1回。左手首痛にも悩まされてパッとしない日々が続いていました。この試合も悪い出足でしたが「アメリカへいっていてハードスケジュールもあったし、″カタクいこう”としたのがよくなかったので、2日目に開き直っていったらバーディーがき始めた。悪いことを考えながらのゴルフではダメだめ。伸びない。人のことを考えず自分自身でバーディーチャンスを作ることだけを考えてプレーした」という。
最終日。前半で3つ伸ばし、「このコースのキーポイントと思っている」(室田)という10、11番を連続バーディーとして勢いづきました。独走態勢に入ったかに見えたとたん、14番で短いパーパットをミスすると、あっという間に3連続ボギーに襲われたのです。「ゴルフは何が起こるかわからない!」ー。
★最終18番(パー5)で7㍍に2オン。これを見事に決めて勝利をつかんだ室田淳のコメント。
「リズムを壊して3連続ボギーでスキをみせたけど、逆転まではされていなかったのがよかった。逆転されたらバーディーが必要になるんだけど、その意味で焦りはなかった。最終ホールが勝負になったけど、2オンして7㍍くらいの下りラインだったのがよかった。でも考えずに無心で打った。プロ生活34年。最後にいいのを決めて優勝したのは初めてですよ。自分でもこういうことが出来るんだなぁ、と思いました。これまで優勝するにも余裕があったことが多かったので、今回はこんな勝ち方になって思わずガッツポーズが出ちゃったですね」
60歳を過ぎて「歩く姿、構える姿が悪くなった」ーと自らトシ認める?鉄人・室田サンです。ショットでグリーンを外すことも多くなったし、ミスパットをしない盤石さも薄れてきました。確かにスキをみせる試合は増えてきましたが、ここという勝負にかかったときの″勝ち方〝は、まだまだ他を圧するものがあります。2位以下の追撃も弱かった!
今年はまだ出場資格を持っているレギュラーツアーですが「向こうへいくとティーショットで50ヤードも60ヤードも差をつけられる。もうレギュラーへの出場はいいかなぁ・・。自分で感じるところもあるし・・」と、現実を見つめる目も持っています。調子が悪かった今季。「もう今シーズンは勝てないと思っていた。まあ、この1勝でラクにはなりましたが・・」と。苦戦が多くなったとはいえ、はまったときはこんないい試合もできるのですから、まだまだ諦めるわけにはいかないでしょう。
「(フックかストレートかで弾道調整をしている)スイングをうまくつくり直して、シニアツアーは盛り上げていきたいですね。これからシニアに入ってくる選手にもいい環境になるようにね。そういう中で今年もあと1回くらい勝てたらいいね」と、つい本音!?
シニアツアーでは4度の賞金王(06、07、13、15年)。シニアの若手が台頭してくる中で、こんな勝ち方をすると、5度目のシニアキングをひそかに狙う貪欲さも捨てきれません。いま鉄人の胸中は、複雑なものが渦巻いているようです。