国内復帰待望論に背を向け、米ツアー復帰を目指す! 5ヵ月ぶり腰痛回復の石川遼。

前週から2週連続優勝を狙った石川遼。大勢のギャラリーに囲まれたが、惜しくも2位(フジサンケイ=山梨・富士桜CC)
前週から2週連続優勝を狙った石川遼。大勢のギャラリーに囲まれたが、惜しくも2位(フジサンケイ=山梨・富士桜CC)

石川遼(24)が帰ってきた日本男子ツアーがにわかに活気づいて盛り上がり、″遼人気”はいまだに健在です。腰痛による約5ヵ月間の休養のあと、前週、福岡でのRIZAP・KBCオーガスタで復帰(7月の日本プロでは予選落ち)していきなり優勝。2週連続で出場したフジサンケイ(山梨・富士桜CC)でも優勝争いのあと2位タイと好成績。ギャラリーも増えて低調続きの男子ツアーに久々の脚光が当たりました。遼は来週のANAオープン(札幌GC輪厚)にも出場した後(もう1試合も検討中)米ツアーの新シーズン(10月13日開幕セーフウエーOP=米カリフォルニア州)に本格復帰する予定ですが、このまま日本に留まってほしい!との強いカゲの声が聞こえてきますが・・。

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最終日、富士山ろくの富士桜CCには遼クンを見たいファンが1万人近くも集まった(フジサンケイ=山梨・富士桜CC)
最終日、富士山ろくの富士桜CCには遼クンを見たいファンが1万人近くも集まった(フジサンケイ=山梨・富士桜CC)

しばらくファンの目から遠ざかっていた遼クンのゴルフが変わってきました。前週のKBCオーガスタでも初日に66でトップに立つと4日間首位の座を譲らず完全優勝を果たしました。″攻めるゴルフ”を貫いて、林に入れても果敢にそこからグリーンを狙っていく見せ場を作りました。確かにフェアウェイキープ率は悪いのですが、精度の高いアイアンを駆使してグリーンを捉えていくゴルフは見どころ満載といっていいでしょう。雷雲接近で3時間近くも中断した最終日もリードを守りきり、2位に5打差をつけた快勝でした。ドライバーが曲がる欠点はまだ解消できず、危なっかしいところはぬぐえませんが、曲げても粘り強くピンチを脱出していくのが遼のゴルフなのです。

「故障をする前に比べれば、スイングとかリズム感は一定になってきている」と遼。長い苦しみから抜け出した成長のあとでしょう。7月、復帰第1戦の日本プロではさんざんの内容で予選落ちしましたが、その後も相当の練習量をこなした成果がここへきて現れてきました。フジサンケイの開催コース富士桜CCは7524ヤードでパー71というモンスターコース。「米ツアーをやっても、おかしくないコース」(遼)という日本ツアーでも屈指の難コースなのも、米ツアー復帰を目指す遼にはやり甲斐があったはず。最終日は首位のチョ・ミン・ギュ(韓国)に5打差をつけられたところからの逆転を狙いました。6番(596ヤード、パー5)では、フェアウェイからの第2打にドライバーを握りました。「グリーン手前の易しいバンカーまで届けば寄せられると思った。ドライバーなら280ヤード飛べばバーディーチャンスになると・・。(少しダフって)距離が出なくて中途半端なアプローチになってボギーにしてしまった」(遼)。あわよくばイーグルを狙った攻めの姿勢も、結果はグリー手前の深いラフに入れて失敗でしたが、「追いかける立場ととして間違っていなかった」と遼はキッパリ言っていました。5打差をひっくり返すには″直ドラ〝も辞さないこうしたプレーがファンを引きつけるのでしょう。

石川遼らの追い上げを退け、3打差の7アンダーで逃げ切ったチョ・ミン・ギュ(韓国)ツアー2勝目(フジサンケイ)=いずれもJGTO提供
石川遼らの追い上げを退け、3打差の7アンダーで逃げ切ったチョ・ミン・ギュ(韓国)ツアー2勝目(フジサンケイ)=いずれもJGTO提供

まだまだ不安の残るドライバーに反して、精度をグンと上げたアイアンの巧さとパターの安定度は、再出発の遼クンを支えています。フジサンケイ最終日も前半でミスショットが多く、チョを捉えきれませんでしたが、後半9ホールは安定したドライバーと高度なショートゲームを随所にみせてくれました。大詰の17番(パー5)では3打目のアプローチを1.5㍍に寄せてバーディー。最終18番(パー4)ではセカンドショットを4㍍に。スライスラインを見事に決めて連続バーディーフィニッシュ。大勢集まったギャラリーを喜ばせました。

★国内3試合を終えた石川遼のコメント。

「富士桜ではいい当たりといい球筋で打てていた。自分としては4日間であと4つ5つは伸ばすことができたと思う。それが出来なくても、ズルズルいくことなく粘れたのでいいゴルフができたと思う。自分のドライバーからパッティングまで、やるべきことと、出来ているとき、出来ていないときのことが分かるようになってきた。修正点も反省点もあるのでそこを毎日直していけば、もっとよくなってくると思う。すばらしいコースで4日間やれて非常に勉強になった。思っていた以上にやれました。自分の体の状態も分かってきたし、いい状態になってきた。試合カンやショートアイアンなどもっと苦しむかと思っていたのだけど、いい準備ができていた。10月から本格的にPGAツアー(米ツアー)に戻るので、それに向けて頑張るし、日本での次のANAオープンがすごい楽しみです」

前週のKBCでは、最終日、雨にたたられたにも関わらず超1万人のギャラリーを集め、フジサンケイでも台風気配の中、最終日は1万人近くのファンが富士山麓に詰めかけました。石川が出場することによって集客効果が即、現れるのですから、新しいスターが出現しない男子ツアーは、のどから手が出るほど遼の国内復帰を待ち望んでいるのです。3試合に出た石川遼は、それだけで2704万円を稼ぎ早々賞金ランク12位につけているのですから。

しかし、石川の米ツアー挑戦の意思は依然として強いのです。ほぼ1年を棒に振った腰痛の回復具合も「やっと手応えを感じるようになった」と、自信を回復しているのは朗報ですが、遼は「10月からはPGAツアーに本格復帰します」と、国内復帰への″望み”などはおくびにも出していません。来季は米ツアー挑戦5年目です。僚友・松山英樹がすでに米ツアー2勝目を挙げていることもあり、どうしても米ツアーで「1勝」は挙げるのが遼の夢なのでしょう。

石川は今春、腰痛による戦列離脱した米ツアーに公傷制度を申請して認可され、来季は「20試合程度」は出場できる見込みという。
その中で戦う石川には、かなりなハンディですが、優勝すれば文句はないし、125位以内に入るポイントを稼ぐことが必須です。もし125位に入れなければ、シーズン後過酷な「入れ替え戦」に臨まなければなりません(14年に一度経験した。今季は岩田寛が今週、入れ替え戦に出場)。国内なら″救世主”になれるはずの石川遼が、あえて挑戦する米ツアー5年目が見ものです。