プロ入り10年、30歳になった″若大将〝、池田勇太が悲願の賞金王に登りつめました
。今季3勝、2位6度などで稼いだ賞金は、13年の松山英樹以来4人目の2億円超え。2億790万1567円。年間表彰対象となる全17部門のうち、7個を獲得しました。今季最終戦、日本シリーズJTカップ(東京よみうりCC)で年間4勝目を狙った池田は、優勝争いの末に12アンダーで惜しくも1打差2位。有終の美を飾ることはできませんでしたが、賞金王を最後まで争った谷原秀人(38)の追撃は振り切りました。3年務めた選手会長を辞し、クラブやウエア、キャディーも替え、3タック、頭髪の角刈りもやめるなど一大変身を敢行した勇太がつかんだビッグな栄冠。松山英樹、石川遼が米ツアーに抜け出した日本男子ツアーを背負う、文字通りのNO1スターの座につきました。
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ツアー最終戦の日本シリーズJT杯。その最終日最終ホールまで優勝の行方が決まらなかった激しい戦いでした。3077万円差で賞金レースを追い上げてくる谷原秀人。池田の賞金王獲得へは、谷原が優勝した場合でも、池田が単独3位以上なら「賞金王」は勇太のものでした。とはいえ、初日谷原がボギーなしの1イーグル、3バーディーで65を出し、トップスタートを切ったのは、池田も心穏やかではありませんでした。3打差の7位と″出遅れた〝池田でしたが、この劣勢に負けてはいませんでした。2日目3日目と連続67をマーク。首位が小平智に入れ替わった3日目には、3打差の2位にまで浮上。最終日は優勝争いに加わってきた底力は、今季の勇太の強さの証明でした。
最終日、66で追い上げた池田は、首位に1打差と迫った最終18番(パー3、227ヤード)。最難関といわれる傾斜の強いグリーンへ、カップ左5㍍という最高のラインへ乗せてきました。これを入れればプレーオフへ持ち込めます。大きなスライスラインに乗ったボールは、そのままカップインかと思わせましたが、カップ50㌢手前で届かず、 首位に並ぶバーディーは成りませんでした。
同じ組の朴相賢(パク・サン・ヒョン=韓国、33)が、グリーン右ラフからの約8㍍を、見事なロブショットで直接入れる奇跡の逆転バーディ劇がありましたが、池田は無念の1打差2位。「100点満点じゃない。″中の上〝かな」(勇太)。賞金では頂点に立ちながら貪欲な池田の一言でした。
今季これで6度を数えた″2位〝の座。全米オープンの最多優勝者のジャック・二クラウスは、また最多2位でもあるという事実があります。華やかな優勝者の陰にはそれを逃がした人の忘れられない存在があるのです。池田勇太もプロ生活10年目を経て、ひとつひとつ新たな歴史を作り上げてきたといえるでしょう。これまで年間4勝を挙げた09年と10年には、石川遼、金庚泰(キム・キョンテ)に賞金王の座を阻まれた苦い経験もあります。ついに到来した今季の″爆発〝には、いくつもの「変化」がありました。3年間務めた選手会長を宮里優作に譲りました。シーズンへ向けて初めて本格的な筋力トレーニングを採り入れました。用具契約もクラブはフリーにし、ウエア類も一新。アマチュア時代からジャンボ尾崎を慕い、愛用してきたジャンボと同じ3タックのだぶだぶズボンをやめ、細めのノータックパンツ。タイトなシャツと、いま風のゴルフウエアにチェンジしました。頭髪も角刈りをやめた新しいヘアスタイルは、まるで別人のようなイメージチェンジでした。
「何か行き詰まった部分を感じていた。30歳を迎えて何かを変えたいと思った」(池田)という心境の変化は、7月のリオ五輪出場のあと、9月、7年半コンビを組んできた福田央(ひさし)キャディーとも別れる決断をしました。9月のフジサンケイからハウスキャディーを随所で使い、2位5回。10月の本間ツアーワールドには坂井恵キャディーを起用。今季2勝目を挙げました。11月のカシオワールドにも再び坂井キャディーで今季3勝目。最終戦も坂井キャディーで2位と息の合った新しいコンビぶりを披露しました。9月以降で2度の優勝、2位も6回とすばらしい追い上げを見せた新生・勇太でした。
全日程を終えた翌5日には、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の年間表彰式が東京都内のホテルで行われました。黒のタキシードに身を固めた池田は、晴れやかな壇上に7度も登り、平均ストローク、平均パット数、パーオン率、MIP賞(最も印象的な選手)=昨年までのファン投票から、青木功会長が最も深く印象に残った選手を選出する方式に変わった=など、計17部門のうち、7冠を獲得。青木功会長からカップや賞状を手渡されました。まさに生涯最高の日だったでしょう。
★表彰式後の池田勇太コメント
「きのうは優勝できなかった悔しさでいっぱいだったけど、一晩寝て、今日は賞金王になれた実感が湧いてきた。7つの賞をいただいて、自分なりに1年間やってきたことが報われたと思うと、嬉しさがこみあげてきた。谷原(秀人)さんと最後まで賞金王争いをしたが、あの谷原さんがいたからこそ、自分がここまでの成績が挙げられたと思う。感謝しています。今年の頑張りもそうだけど、来年以降もいろいろな意味で頑張っていかないといけない。(青木功会長が選んでもらったMIP賞には)会長から″あとは頼むぞ〝といわれた気がする。来年からはワンランクアップした池田勇太をおみせしたい。マスターズでは上位で優勝争いをするのが目標です」
すでに世界ランク50位内に入っていた池田は、この日37位から34位にランクアップしました。″年内50位以内〝を確保し来年4月のマスターズ出場が決まっています。マスターズは過去2回出ている池田は、初出場の10年が29位。連続で出た11年は、予選落ちでした。それ以来6年ぶり3度目のマスターズ出場になります。今年のマスターズは松山英樹一人で寂しかった日本選手が、来年は2人出場で賑わしてくれそうです。
(了)