もう名前も忘られる寸前でした。07年のプロテスト一発合格、08年には早々とツアー1勝目(SANKYOレディス)を挙げるなど、本格派プロとして脚光を浴びた若林舞衣子(28=新潟・開志学園高卒)。プロ2勝目を12年に挙げた後、さっぱり伸び悩んでスターダムから消えかかっていました。今季開幕第4戦、アクサレディス in MIYAZAKI(宮崎・UMK)の最終日、2番でホール・イン・ワンを達成すると、がぜん幸運が舞い降りてきて66の猛チャージ。通算9アンダーとして5年ぶりの4打差大逆転で通算3勝目。昨春3月、結婚したばかりのミセス初Vと、ダブルの幸運を両手につかんだ舞衣子の派手な復活劇でした。
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2番、153ヤードのパー3。1番でカート道路に当たった球が跳ね、フェアウェイに戻ってきた変なスタート。2オンさせた2㍍のバーディーパットを沈めたばかり。ラッキーな出足に舞衣子は「ちょうどいいぐらいの距離かな」と2番では6番ユーティリティを握りました。右からの弱い風。ドローヒッターの若林は「右からのドローで・・」と信じて振った一打は「イメージ通り」にグリーンに落ち、ボールは長い距離をコロコロと転がってストンとカップの真ん中から消えました。今度はホール・イン・ワン。2ホールを終わって早くも3アンダーです。が、舞衣子は冷静さを失いませんでした。「ショットが凄くよかったわけじゃないし、ホールインワンが出たからといって大喜びしたいところですが、気持ちをしっかりと自分に喝を入れました」。
最終組から4組も前。優勝争いという感じではなかったのです。その冷静さがさらに幸運の女神を引き寄せました。4、5番で7㍍、5㍍と長いバーディーパットが連続で入ります。8番のパー5では、6㍍が決まってどんどんとスコアを伸ばし、9番はボギーにしましたが、アウトは「31」の快進撃でした。
スコアボ―ドはほとんど見ないでプレーしていましたが、インへのターンのときに「8アンダーがトップ」の情報で、自分が並んでいるのが分かりました。その後半に入ってから、不安定だったショットがよくなってきて13番のパー3。10㍍もあったスライスライン「タッチが強すぎた!」と思ったのに、ラインに乗ったボールはまたど真ん中からズドンと消えました。
「ホントに長いパットがたくさん入ってくれたのはよかったですね」という通り、最終日は1パットが8回で計26パット。0パットも含めて、まさにグリーン上での勝負に勝った逆転劇でした。
アマチュア時代は「新潟に舞衣子あり!」といわれるほどの天才児でした。小学6年でジュニアの大会に優勝。中3の03年には関東ジュニア、日本ジュニア(12~14歳の部)を制覇。04年は関東女子アマ優勝。05年はJGAナショナルチームのメンバーとなり、世界ジュニアで団体、個人(15~17歳の部)2冠を果たしました。高3の06年にサントリー・レディスで8位タイに入り、日本女子オープンでは6位に食い込みローアマをとるなど、無敵の戦いぶりでプロ入りを果たしたのでした。
07年のプロ入り後は8月のデビュー戦(ヨネックスレディス)で9位タイフィニッシュ。08年5月、クリスタルガイザーでの古閑美保とのプレーオフ負けは記憶に残る1戦でした。プロ2勝目をマークした12年には全英リコー女子オープンでメジャー初出場、賞金ランクも自身最高の20位にまで駆け上がった舞衣子でした。均整のとれた体躯から本格的なスイングを身につけたゴルファーとして脚光をあびていたのに、勝負の世界は無情です。14年にはパッテイングの悩みを抱えて、7年間守ったシードを失う苦悩も経験しました。それも1年でシード選手に復帰。
今回の5年ぶりのカムバックVは劇的でした。 結婚を期に、新婚1年目での3勝目を素直に喜ぶ若林舞衣子のコメントです。
「結婚して初めて勝ってホントにうれしい。主人の前で一度は優勝したいと思ってたのですが、今回は来ていなくて・・。毎年一生懸命にやってて、去年なんかはいいところまでいったのに勝てなかった。気持ちの弱さだと思っていました。最終日は、バーディー、イーグルと出たので、自分の気持ちの弱さに勝てるように頑張ろうと思ってやりました。結婚して、一緒にいるとゴルフを忘れられるというか、別な楽しいことを考えられるのでいい。家に帰ったらオフになる。一緒にいるとき、気持ちがオフになります。以前は予選落ちしたらこの世の終わりかというくらい落ち込んでいたけど、いまは予選に落ちても、まぁいいか、と気持ちの切り替えができてます。主人がソフトボールやってるので、ついて行ってキャッチボールしたり、一緒にショッピング行ったりしています。今年は早く勝てたので、これまでの自身の獲得最高賞金額の5000万円を超えたいですね。それには、いままでやっていない複数回優勝が出来ればいいなと思っています。子供も欲しいですが、30歳まではがむしゃらにゴルフを頑張ろうと思っています」
昨年3月、会社員の男性と入籍、オフ12月に挙式して今季新たなスタートを切ったばかりでした。岡本綾子プロの門下生となってもう5年。プロ10年目の16年には最愛の伴侶も得た舞衣子に、どうやら新たな幸運が巡ってきたようです。プロ11年目の17年は、目を離せない女子プロといえそうです。
(了)