強い韓国パワーにまた一人、強力なニューフェースが参入してきました。開幕第5戦、「ヤマハレディス葛城」を通算9アンダーで制したのは、今季から日本ツアーに参戦5戦目のイ・ミニョン(25)でした。韓国ツアーではすでに4勝している実力派ですが、昨年12月、日本ツアーの最終予選会(QT)に挑戦、4位の好成績で今季の出場資格をゲットしたばかりでした。さらに驚くことは、若くして腎臓がんを患い、23歳だった約2年前の3月30日に部分切除手術を受け、一時はゴルフもできなかった辛い時期を乗り越えての日本初優勝だったことです。これで開幕から5戦中3試合(アン・ソンジュ、全美貞、イ・ミニョン)は早くも韓国勢が優勝。
今季も恐るべし、更なる韓国軍団のパワーアップです。
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韓国ツアーでは4勝を挙げ、トップ10フィニッシュの常連選手だったそうですが、日本では「イ・ミニョン」の名はほとんど知られていませんでした。まさに突然の来日で、いきなり優勝するのですから、韓国勢の底力や恐るべしです。コンパクトなバックスイングから正確なスンィングプレーンで打っていく狂いのないフェードボールは、安定そのものです。目下、日本5試合でのドライビングデスタンスは、239.14ヤードで10位。パーオン率9位(70.1389)。平均パット数10位(1.7960)。今回、一緒に最終組で優勝争いをした飛ばし屋・渡辺彩香の飛距離には遠く及びませんでしたが、日本では上位に入るドライバー。「(イは)3日目からほぼミスなし。ショットも全然曲がらない」(渡辺彩香)と、1打差の2位に終わったライバルも、ミニョンの強さにはハットオフでした。
1打1打に一喜一憂せず、淡々とした表情でホールを重ねるミニョンの冷静さ。それは25歳になったいま、一時は死とも直面した強烈な過去が生み出している強さなのかもしれません。
「いいえ、今日(最終日)はスタート前からドキドキしていました。プレーでも本当はドキドキしていましたけど、それを外に出さないように気をつけていたんです。渡辺さんに追い上げられましたけど、そのたびに自分のプレーをしようといい聞かせていました。16番で渡辺さんがダブルボギーをしましたけど(2打差に開く)、その時も2ホール残っているので、まだまだだと思っていました」(イ・ミニョン)
3日目、68で首位に立ち、2打差をつけての最終日。最終組3人が、バーディー合戦でした。渡辺の連続バーディーで追いつかれた直後の13番(パー4)。登り坂の第2打、約130ヤードを「8番でコントロールショットした」(ミニョン)と、ピン1㍍以内にピタリつけて奪ったバーディーは、追う渡辺にとどめを刺す1打でした。1打リードの最終18番(パー5)では、3オンして最後は約80㌢のウィニングパット。「手が震えてましたけど、これは練習だと思って打ちました」と真ん中から沈めました。名匠・井上誠一氏設計の戦略性高い葛城・山名コース。しかも最終日の難しいピン位置を果敢に攻め抜いたミニョン。白熱の優勝争いにも最後まで負けることなく、渡辺や申ジエを突き放した堂々の勝利でした。
母国・韓国を離れて日本ツアーを選んだのは「韓国から近いし、日本ツアーは出たことがないので好奇心もあった」と説明。さらに「日本のギャラリーは韓国に比べてマナーがいい。今年はメジャーも含めて多くの試合に出たい。海外の試合にも出ていきたい。4、5年前のエビアン女子(米ツアー)にも出たことがあるから」と、今年からは日本ツアーに足場をおいて、世界への挑戦にも意欲をみせるミニョンちゃんです。
現在も年に1度は検査を受ける必要があるという体を駆使してプレーを続ける不屈のゴルファー。「自分が活躍することで、同じような病気で苦しんでいる人たちに勇気や希望を与えたい」とのコメントも、胸を打ちます。また一人加わった異色パワー。2年連続賞金王のイ・ボミを筆頭に日本ツアーを蹂躙(じゅうりん)する韓国勢打倒をうたう日本女子の目標は、ますます険しくなってきそうです。
★イ・ミニョンの日本ツアー参戦5試合★
ダイキンオーキッド 35位 +6
ヨコハマタイヤPRGR 予落ち
Tポイント 8位 -5
アクサレディス 6位 -5
ヤマハレディス 優勝 -9