PGAの国内シニアツアーも遅まきながら開幕戦です。名門・箱根CCでの「ノジマチャンピオンカップ箱根シニア」。2日間競技ながら、昨年の賞金総額3900万円から今季は4500万円に増額。優勝賞金も2日間で800万円をもらえるとあって、大会はヒートアップしました。最終日、首位に6打差の20位から出た真板潔(57)が、7バーディー、ボギーなしの65の猛チャージで追い上げ、通算8アンダーで並んだ井戸木鴻樹(55)とのプレーオフ1ホール目に会心のバーディーで制して大逆転。シニア8年目で通算6勝。うち4勝を2日間大会で挙げ、「2日間の帝王」の異名をいかんなく発揮したVでした。今季のシニアツアーは、昨季より1試合増の18試合で、賞金総額は8億7500万円が用意されています。
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2日間の短期戦では試合の展開が激しく変わります。初日は冨永浩が7アンダーの65で飛び出したのですが、このリードを守りきれませんでした。それにしても「初日のスコアではまさか優勝は考えてませんよ。うちの嫁さんもびっくりでしょうね」(真板)というのもうなずけます。ところが、3番で短いパットのチャンスを逃がしたあと、4番で初バーディーがきました。すると6番(パー3)で6㍍が入り、7番(パー4)でも5㍍が決まって 調子に乗りました。8番(パー5)では1㍍、9番(パー4)は2.5㍍も入って4連続バーディーでアウト「31」。インにターンして10番(パー3)ではカップ横からの6㍍も決まって、なんと5連続バーディーでグングン追い上げます。「気合が入ってきて、2ケタまでいけば、と考えました」と真板。6打差はみるみる縮まり、一時は5人が首位に並ぶ大混戦へと様相が変わりました。勝負事は、波に乗るとコワイ、とはこのことでしょう。難ホールの最終18番(427ヤード、パー4)では7アンダーまで伸び、1打差の2位。左のラフから170ヤードのセカンド。右からのアゲンストをついて7番アイアンでピン3㍍へ。これを入れればプレーオフ、という緊張の場面で、見事に沈めて8アンダー。井戸木とのプレーオフ決戦へ持ち込んだのです。
だらだら登りでやや左へ曲がる18番。プレーオフでも木の枝がかかる左ラフへ曲げた井戸木に対して、真板はフェアウェイへ290ヤードのロングドライブ。「残り129ヤード」(真板)をPWで1.5㍍へ2オン。2打目をバンカーに落とした井戸木をしり目に、このウィニングパットも楽々決め、難関の18番ホールを本戦、POと連続でバーディーに仕留める″強さ〝でした。全米プロシニアチャンピオン(13年)の井戸木鴻樹を、有無を言わせずねじ伏せた真板の完勝といえる見事な逆転劇でした。
★″2日間大会の帝王〝真板潔の優勝コメント
「開幕戦から勝てるとは思ってなかったので本当にうれしい。でもきょうはショットがよかった。プレーオフは完ぺきだった。2日間大会に強いといわれても、別に狙ってるわけじゃないよ。狙って勝てるわけないじゃないですか。(昨年は左ひざを痛め)オフは昔みたいなハードトレはやめてジムでやった。ラウンドも寒いときだから10ラウンドくらいしかやっていない。今週は運がよかった。みんなが伸びなかったので勝てた。だからこの1勝だけじゃダメです。だからといって何勝したいとか、たいそうなことはいわないけど、できるだけ多く稼ぎたいです。そして3日間、4日間でも勝ちたいねー」
昨季の3勝はすべて、この開幕戦と同じ2日間大会。ドライバーで290ヤードも飛ばす飛ばし屋で、昨季はバーディー数も1位。飛距離をスコアに結びつけることができるゴルフ巧者でもあります。賞金ランクは2840万円余で自己最高の5位。「ご利益があったから」とこのオフ、1年前と同じように家族と高尾山にお参りし、ゲンを担いでディズニーランドにも前年と同じように遊びに出かけたという。表彰式では倉本昌弘PGA会長からも「2日間大会はこれで4勝です」と紹介されて苦笑い。6勝中4勝が2日大会とあれば、そういわれても仕方ないが、今季シニアツアーの日程は、2日間競技が8試合あるので、″短期戦の鬼〝には絶好のチャンスが待っています。レギュラーツアー時代は、サントリーOP(2000年)の1勝があるだけ。シニアで大きな花を咲かせているプレーヤーの一人です。
今季シニアツアーには、50歳から参入できる「ルーキー」として川岸良兼、河村雅之らがデビューしました。この開幕戦は、河村が1打差の3位タイ。川岸は4打差の12位タイと、上々のスタートを切りました。次戦は6月1日~3日の「すまいーだ杯シニア」(栃木・イーストウッドCC=新規開催)と、しばらく間があきますが、熱戦が待たれます。レギュラーツアーとはまた違ったゴルフを楽しめるシニアです!
(了)