あれから4年7ヵ月。プロテストから2年目。泣かなかったツアー初勝利! 20歳になり大きく成長した勝みなみ。

 

悲願のプロツアー初優勝を果たした勝みなみ。

アマ15歳、史上最年少Vで騒がれた勝みなみ(20)が、あれから4年半、ようやくツアー初優勝をつかみました。今季は残り1試合となった大王製紙エリエール(愛媛・エリエールGC松山=4日間競技)。3日目に首位に立つと、最終日は7バーディー、ノーボギーの「65」で回り、2位に4打差をつける通算20アンダーでの圧勝。″ただのネズミ〝ではなかったところをみせつけました。若手・黄金世代の象徴とされたみなみが、苦労の末にプロ40試合目での美酒でした。この試合終了時点で賞金ランク50位以内に来季のシード権、55位以内に前半戦出場権が決定。勝のほか小祝さくら、新垣比菜、原英莉花、大里桃子ら黄金世代11人が初シード。笠りつ子、川岸史果、渡辺彩香らシード常連の実力者がシード落ちする明暗が描かれました。

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4日間競技の3日目、18番(パー4)。残り99ヤードを50度のウェッジで打ったみなみのセカンドショットは、ピンそばに落ちてそのままカップイン。会心、イーグルの上りが、最終日の栄冠を予感させました。悲願の初Vを目指した最終日。4人が首位に並ぶ混戦の中、1番2㍍を沈めたバーディースタート。前半4バーディーで流れをつかむと、後半も3バーディーを重ねてボギーなし。バックナインは2位をグングン4打差に引き離した独走の初優勝でした。あれほど苦しんだ今シーズンがまるでウソのような″強かった勝みなみ〝の再現でした。プロテスト同級生の新垣比菜は4月のサイバーエージェント・レディスで勝ち、今年のプロテスト合格の大里桃子も8月のCATレディスで初優勝を遂げています。同じく小祝さくらの躍進などもあって勝の胸中も穏やかではなかったのでしょう。

小柄ながら体をフルに使ってナイスショットを飛ばした勝みなみ

勝みなみブームを巻き起こしてから4年7ヵ月。鹿児島高1年のアマチュアとしてKKT杯バンテリンレディスを制した時の興奮がよみがえリます。バンテリン優勝時にプロ宣言をしていれば、テストを受けずにツアープロになれたのですが、みなみはあえて″〝回り道〝を選びました。プロへ転向したのは昨年7月のプロテストでの9位合格。1ヵ月後のステップアップツアー(下部ツアー)で早々とプロ1勝はしましたが、長かったツアーでの初勝利への道のりでした。

今季好調だった前半戦から急転した後半戦。8月のニトリレディスから12試合で予選落ち8試合。9月には腰痛に悩まされて棄権した1試合もありました。「ショットがおかしくなり、右や左にいって尋常でないほど曲がりまくった」(勝)という苦しみ。
この試合も初日にOB2連発を出し32位タイと最悪のスタートでしたが、よくぞそこから立ち直りました。思えば、10月中旬、富士通レディスで同組になった西山ゆかりの師匠・芹沢信雄プロがたまたまコースに来ていて、ホールアウト後練習場でスイングを診てもらいました。「曲げないように曲げないようにとして、体が回っていない。もっと体を回せ」とアドバイスを受け、それから徐々に立ち直ってきたのだという。

今季初めての最終日、最終組。「4年前にバンテリンで勝って以来、ゾーンに入ったことがなかった。でも今回はパッティングでラインが浮き上がり、ショットは上から自分の姿を見下ろしているいるような醒めた感覚だった。(同級生たちが先に勝ったりしたが)私は私、人は人という気持ちでしたね。でもプロに入って2勝目がこんなに遅くなるとは思っていなかったです」(みなみ)。

 

次週。最終戦での勝のゴルフがみもの

18番グリーン脇では、新垣比菜ら黄金世代の仲間たちが待ち受けてくれてました。荒々しい祝福の輪の中で、みなみに涙はありませんでした「泣きたかったけど泣かなかったですね。何でですかね?今シーズン初めての最終日、最終組で嬉しかったし、ノーボギーも嬉しかった。その中で優勝できて、嬉しさがいっぱい。嬉し泣きもいいんですけど、最後は笑顔で終わりたかった。表彰式のときはもう我に返って冷静でした。次に切り替わっている自分がいました」(みなみ)

悲願のプロ1勝を果たした勝には、もう次週の最終戦「LPGAツアー選手権」(宮崎)で頭がいっぱいのようでした。「アマチュアは優勝しかないですけど、プロはお金がもらえる。頑張れば頑張った分だけ返ってくるので、そこが4年前とは違いますね」
4年7ヵ月の歳月は、勝みなみをグンと成長させました。初めて経験する限られたものだけが出場できる最終戦のメジャー「ツアー選手権」。ゴルフだけでなく精神的にも大人になった勝みなみが、今度はどんなゴルフを見せてくれるでしょうか。

明があれが暗もあります。シード選手の
常連だった笠りつ子、渡辺彩香、金田久美子、原江里菜、川岸史果、吉田弓美子、西山ゆかり、服部真夕らのシード落ちも決定しました。今回の最終日最終組が、20歳の勝みなみと松田鈴英。18歳のアマチュア上野菜々子(東海大大阪仰星高3年)の3人で、平均年齢は19.3歳。ツアー史上最も若い最終組でした。新しい時代へと急速に移り変わる女子プロ界。シード喪失した笠りつ子、渡辺彩香らは55位以内で来季前半戦の出場は確保しましたが、そのほかは出場優先順位をかけたQT(予選会)へと回ることになります。厳しい勝負の世界の掟です。

(了)