日本女子プロゴルフ協会(LPGA)は、昨年暮れに発表した今季の日程で、開催中止とした3試合を、一転継続開催すると1月25日になって異例の日程変更を発表しました。テレビ放映権の帰属をめぐり日本テレビとその系列局がLPGAに反発、「KKT杯バンテリンレディス」、「中京テレビ・ブリヂストンレディス」、「ミヤギTV杯ダンロップ女子オープン」の3大会が期限までに開催申し込みをしなかったため「3試合は開催中止」として19年度日程から削除していました。しかし、この事態に存続を求める選手やスポンサー側から強い反発の声があがり、LPGAはTV局、スポンサーと昨年暮れから交渉を再開。その結果「両者一定の合意を得た」として中止した3試合の″復活〝が決まったものです。また、12月の日程発表では仮称としていた「LPGAウィメンズチャンピオンシップ」(5月9~12日)が「ワールドレディス・サロンパス杯」(主催:LPGAと日本テレビ)と従来通りの名称で開催(茨城ゴルフ倶楽部東コース)することも併せて発表されました。 しかし″放映権の帰属〝については明確な回答はなく、今後もLPGA対TV局・スポンサー間での大きなテーマとして先送りされたのは気がかりです。
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中止とされていた3試合が″復活〝したことで、今季の女子ツアーは1試合増の39試合となり、過去最高の試合数を堅持。賞金総額も39億4500万円で、7年連続の史上最高額が途切れることなく更新されました。また、協会が持ち出した「放映権の協会一括管理」に反発した日本テレビが、今季の開催申し込みを保留していたシーズン最初のメジャー「ワールドレディスサロンパス杯」が、従来通りよみがえったことで、女子プロ協会もほっと胸をなで下ろしたことでしょう。協会は最悪の場合スポンサーなしの自主開催に踏み切るとして「LPGAウィメンズ選手権」という仮称で日程発表をしていました。放映権そのものに関しては明確な解決には至らず、継続審議の形をとっていますが、「ファンファースト、選手ファーストの見地からの決断」とする日本テレビ側の一部譲歩により、LPGAはとりあえず一方的な″敗北〝は免れたといえるでしょう。
LPGAでは今回の妥協について「放映権の帰属は別にして、協会の考え方に合意を得られた」(広報)としていますが、小林浩美会長のコメントでは「トーナメント中継映像における選手の肖像価値を全ての主催者様が認めてくださった。協会創立いらい51年間あやふやだったLPGAツアーの放映権の考え方がこれで明確になった。また国内外への動画発信を協会が一括管理できる体制になったのも大変意義があること。これまで選手や会員はじめ全国のゴルフファンや大会関係者に多大な心配とご迷惑をおかけしたことを、改めてお詫びいたします」としました。TV局側も開催の意思があることから両者一定の合意を得たものです。
協会が帰属させたいとしている放映権については、そう簡単にはテレビ局から奪い取る?ことはできないでしょう。これまで女子プロの人気が薄かった時代から、テレビ局が受け持ってスポンサーを探し、集客から試合運営まで、スポンサー企業と手を組んで女子ツアーを支えてきた歴史があります。放映権を協会自ら持っている米国のLPGAなどとは形態を異にしているのです。
一方で日本のLPGAがここで放映権を欲しがる大きな理由として、今季から女子ツアーのインターネット放映を計画していることがあげられます。協会の財務基盤の確立、組織力の強化でツアー価値を高めようとする一環で、新たに加えたインターネット配信計画。すでにインターネット業者との交渉も進めているといわれますが、小林浩美会長は「今回の交渉で女子プロ協会が国内外への動画配信を一括管理することができる体制になったのは意義深い。今後、その実現に向けて鋭意努力する所存です」としているのは、″放映権の一括管理〝は成らなかったものの、協会側が得た大きな収穫だったのでしょう。
昨年8月から勃発したLPGAとTV局&スポンサーとの放映権問題。その根幹の部分は棚上げされた感は強く残りますが、3試合減、さらに「ワールドレディスサロンパス杯」のメジャーまでも姿を消すのか?と懸念された最悪の事態だけは回避した″第1幕〝は終わりました。″第2幕〝はいつになるのでしょうか?
(了)