史上3人目の女子高生プロ、共立女二高・山口すず夏(18)が豪州ツアー、ISPSハンダ・ビックオープン(米ツアー共催)でプロ初戦に挑み、通算1アンダー、22位の健闘をみせました。最終日、13番までは4つスコアを伸ばし、ベストテン・フィニッシュする勢いでしたが、最終ホールでまさかのダブルボギーをたたく失速で、トータル1アンダーとしました。波乱万丈のプロ初戦を終えたすず夏は、次週も豪州にとどまり、同じく豪・米両ツアー共催のISPSハンダ・女子オーストラリアンオープンに出場。リベンジの戦いに挑みます。
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ビックOPは腰痛からカムバック、昨年8月以来の復帰初戦の野村敏京(26)が通算5アンダーで5位。米ツアー7年目のベテラン上原彩子(35)が通算3アンダーで11位。横峯さくら(33)は2日間通算2オーバー、88位で予選落ちでした。2打差2位スタートのセリーヌ・ブティエ(27)=フランス=が、72で回り、通算8アンダーで逆転のツアー初優勝。
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真夏の豪州南部ジーロングにもこんな寒風が吹きぬける日があるのです。2日目、3日目「手がかじかむような寒さ」(すず夏)に見舞われた大会は、各選手の行く手をさえぎりました。初日、6バーディー(1ダブルボギー)を奪って69。首位から4打差の10位と好発進したすず夏が、2日目からはリンクス風のコースで強風と寒さに悩まされ、クラブ選択にも迷いが生じました。2日目は前半の12番(パー3)でバンカーに入れてダブルボギー。13、14番でも連続ボギーにするなど予選落ちの危機に直面しました。しかし、後半の5、8番で渾身のバーディーを奪って75。53位に降下しながらも60位までの予選通過を辛うじて果たしました。
この大会は2Rと3Rと2度の予選カットがあり、冷たい雨風が続いた3日目も厳しい戦いが待っていました。カットラインは上位35位タイまで。すず夏はスコアを前日から一つ伸ばして迎えた後半の7番(114ヤード、パー3)。バンカーに入ったボールが砂にめり込み、脱出を図った2打目、クラブがバンカーの淵に当たって空振り。3打目は後ろに出したものの4打目もグリーンをこぼれ、痛恨のトリプルボギー。スコアを落として73でホールアウト。トータルイーブンパーでこの時点で52位。セカンドカット(35位まで)は免れない位置でしたが、後続の午後組が軒並みスコアを落として、終わってみればなんと27位まで浮上。宿舎に帰ってから命拾いの2次カットクリアの嬉しい情報がすず夏に知らされたのです。
その3日目を振り返ったすず夏「2日目よりも風が一日中強かった。7番は48度のウェッジ。右から左へのフォローとは思ったのですが、まさかキャリーでオーバーするとは思ってもいなかったです。クラブが(バンカーの)淵に当たるなんてことも、思ってもいませんでした。学習不足でした」ー。
いったんは予選カットを覚悟したのに、最終日へ生き返ったのですからまさにラッキー。
その最終日は前半をボギーなしの3バーディー。13番では8位タイまで順位を上げて波に乗ったはずでした。しかし、勝負は大詰が問題です。17番をボギーにすると最終18番(パー5)で3打目をグリーン右のバンカーへ。ここから4打を要してまたも手痛いダブルボギー「7」。終盤2ホールで3つスコアを落として5バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの「71」。一気に22位タイまで陥落して″初戦トップ10〝の夢は一瞬にして消え去りました。勝負の厳しさをいやというほど味わったすず夏クン。
「プレッシャーはずっとかかっていたと自分でも気づいてはいました。もっとあったバーディーチャンスも決められなかったし、最後にガタガタきてしまった。すべてが台無しです」ープロでこそ身に沁みる1打の重み。
22位の賞金は約1万1000㌦(約120万円)。自ら演じたポカで、ウン万円を水にながしたすず夏には、貴重すぎる経験のプロ初戦でした。
「スコアは納得いかないですけど、デビュー戦は楽しかったです。収穫のある1週間になりました。来週はもったないミスをしないように、また上位を目指します」と笑顔の裏側で悔しさをにじませました。
弱冠14歳で全米女子OPに出場して始まったすず夏の海外挑戦の旅。昨年11月に米女子ツアーの出場権をかけたQT(予選会)を受験して36位。45位までが得られる今季の出場権を18歳で獲得。日本の女子ツアーを飛び越えて今春から米ツアーに本格参戦と、着実な足取りで階段を上がっているのです。今回の豪州シリーズには父親裕之さんが帯同。航空券や宿舎の手配から、夕食は父の手料理ですず夏を熱血サポートしています。
新人離れした強心臓でモノに動じないタイプのすず夏。まさにプロ向きですが、「この風でもアンダーパーで回っている人もいます。日本とはレベルが違うなと思いました」。手痛いしっぺを食ったデビュー戦。さあ次戦です!
(了)