今年の日本ジュニアゴルフ選手権(男子15歳~17歳の部)を制したのは、広島・瀬戸内高2年の唐下明徒(とうげ・はると 17歳)でした。第25回日本ジュニアは埼玉・川越市の霞ヶ関カンツリークラブで行われ、来年の東京五輪ゴルフ競技で使用する東コース(パー71)でのテスト大会を兼ねた男子の部。初日から首位タイに立った唐下明徒が最終日も粘りのゴルフでパープレーの71で回り、3日間通算4アンダー。2位に3打差をつけての初優勝でした。広島県出身。ドライバーの平均飛距離290ヤードの飛ばし屋で、これまで広島県オープン選手権アマの部で2回(15年、17年)優勝の経験がありますが、全国レベルの日本ジュニアVで
一躍脚光を浴びました。大会連覇を目指した杉浦悠太(福井工大福井高3年)は通算1アンダーの2位タイ。女子の部(15歳~17歳=西コース)は、渋野日向子プロと同じ岡山出身で親交のある梶谷翼(かじたに・つばさ 兵庫・滝川2高1年)が、通算8アンダーで初優勝。
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今年の日本ジュニアは、東京五輪ゴルフ競技のテストイベントとして注目を集めました。来年の五輪本番は、男子が7月30日~8月2日。女子は8月5~8日。今年、8月14日から始まった日本ジュニアとほぼ同じ時期にこの霞ヶ関東コースで開催されます。国際ゴルフ連盟のピーター・ドーソン会長ら15人が今回の日本ジュニアを視察に来日。暑さ対策はじめ五輪組織委員会が行った成績の集計、スコア速報の試験的運用。さらに打球の距離や落下地点を計測するボールポジション端末の作動などすべての面をチェックしていました。ジュニアのプレーとは別に、本番仕様のリハーサルが随所で行われたのです。
そんな中、初日からトップタイに立った唐下。同じトップタイには松山英樹の後輩、岡田晃平(高知・明徳義塾高3年)が出だしの10番でホールインワンを記録するなどでスコアを伸ばしともに5アンダー、66の首位発進。2日目は岡田が76と崩れ、唐下もいきなり3連続ボギーをたたくピンチでしたが、なんとか1オ-バーの72に抑えて首位タイをキープ。最終日は「気持ちを引き締めなおした」と、課題だったスタートの3ホールをパーで乗り切るリベンジ。台風10号の影響で雲が多かった午前中から、午後には天候が回復して酷暑の中での優勝争いでした。4アンダーの首位タイで出た唐下は、並んでいた小林大河(西武台千葉高1年)と前半はパープレーで譲らず、10番で唐下がボギーでいったんは首位を明け渡しますが、すぐに追いつく粘り腰。今度は小林が15番から連続ボギーで失速。唐下は後半も2バーディー、2ボギーのパープレーで粘り抜き、2位グループを3打差引き離してのフィニッシュでした。
☆3日間首位を守り抜いてビッグタイトルをつかんだ唐下明徒(とうげ・はると)のコメント。
「自分が優勝できるとは最後まで思ってませんでした。嬉しいのは嬉しいですけど、最終日も1日中耐えるゴルフで、緊張続きで疲れました。でもホッとしています。2日目は1番からいきなり3連続ボギーをたたき、父から″気持ちが緩んでる〝といわれました。最終日は2番で40ヤードのアプローチから2.5㍍のパーセーブパットを入れたのが大きかったです。2日目みたいにボギーを打つのは仕方ないんです。打ってもそれを取り戻すことが大切です。最終日はそのことを考えながらやってました。日本とか全国のタイトルを取れたのは、いろんな意味で大きい。来年に繋がると思います」
2020東京五輪開催が決まってからコースの改修を手がけた霞ヶ関CCは、大きく変貌を遂げています。日本有数の名門コースと謳われてきた林間コースも、米国の設計家、トム・ファジオ(父)、ローガン・ファジオ(息子)親子の手によってアメリカンスタイルのコースに一変しました。日本庭園を思わすような樹木にセパレートされていたいくつかのホールも、木が伐採され広々としたコースにその顔を変えました。広くとったフェアウェイ。世界のトッププロが打ち込んでくる300ヤード付近にはクロスバンカーが左右に口をあけています。グリーンは従来の2グリーンから1グリーンへ。大きなアンジュレーション形態は、まさにアメリカンスタイル。そのグリーンを囲む深いガードバンカーの数々は、グリーン攻略を一層難解なものにしています。世界からやってくる猛者連の前に立ちふさがる新しいカスミは、間違いなくより一段と戦略性が増したコースになっています。
今回の日本ジュニア男子が使用した東コース(五輪コース)は、7466ヤードでパー71でした。「本番仕様でのテストイベント」だったことから、東京五輪の男子ゴルフもこれに近い設定で開催されるものと思われます。17歳の唐下明徒が4アンダー(3日間)で制した″ニュー霞ヶ関〝。1年後の本番ではどんな大会になるのでしょうか。
(了)