女子プロゴルフに19歳のニューヒロイン誕生!笹生優花(さそう・ゆうか)。父が日本人、母がフィリッピン人の異色ルーキーは昨年11月に日本のプロテストに合格。日本ツアー2戦目のNEC軽井沢72で最終日3位から出てボギーなしの1イーグル、7バーディーの大会タイ記録「63」をマーク。通算16アンダー、2位に4打差をつける圧巻のゴルフで21世紀生まれの初優勝者となりました。19歳57日でのツアー初優勝は史上7番目の若さ。同組で回った藤田さいき(34)は「天才ですよ。ゴルフがでかいし、まるでタイガー・ウッズと回ってるみたいだった。(無観客だが)ギャラリーさんに見てもらいたかった」と、そのスーパーゴルフに驚嘆の声を惜しみませんでした。女子ゴルフ界にまたひとり、大器を予感させる若い力が芽生えました。
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日焼けした茶褐色の肌につやのある黒髪。目はパッチリとして太い眉毛。精悍な風貌でサイズは1㍍66、63キロ。鍛え上げたバネのような若い足腰は、いかにも強そうに躍動しました。最終日、すでにボギーなしで7つのバーディーを奪い首位に躍り出ていた16番パー5(480ヤード)。「17番のパー3が難しいので、16番はイーグルが欲しかった」(笹生)というように、強めに振ったドライバーは、なんと283ヤード飛び、しかも着実にフェアウェイを捉えました。残る距離は197ヤード。やや短めのパー5ですが、グリーン手前には入りくんだんクリークが横たわって決して楽なホールではありません。2オンを狙った笹生は、迷わず6番アイアンを手にして右目に立つピン目がけてフルショットでした。高い弾道で飛んだ打球はピン手前2.5㍍に見事に着弾。ミドルアイアンなのに、男子プロのようにスピンが効いてランがなく、ピタリとグリーンに止める圧巻の1打でした。この2.5㍍を慎重に沈めて狙い通りのイーグル奪取。2位に4打差をつけ、右こぶしを小さく握り締める勝利へのスーパーショットでもありました。
コロナ禍で約4ヵ月遅れの開幕となった6月下旬のアース・モンダミンカップ。初日に66を出してトップスタートだった笹生優花。この試合は5位に終わりましたが、第2戦のNEC軽井沢72でもまた初日65で2試合とも初日1位スタートでした。2戦目も2日目がパープレーで順位を3位に下げましたが、初日の貯金を最終日の大爆発につなげました。爆発力を秘めた優花のゴルフは、まさにタイガー・ウッズを思わせるような攻撃的でファンを引きつけます。
2001年6月20日、日本人の父・正和さんとフィリピン人の母との間にフィリピンで生まれた長女で、弟3人、妹1人。5歳から8歳まで4年間東京で過ごし、8歳でゴルフを始めると、よりよいゴルフ環境を求めて小学3年でフィリピンへ。小さいころから「下半身を鍛える」という父親の指導で飛距離が徐々に伸びたという。14歳でフィリピン女子プロツアーで優勝。18年にはアジア大会でフィリピン代表として個人、団体ともに金メダル獲得。19年春には米オーガスタ女子アマで日本の安田祐香と並び3位。同じ19年は米ツアーのQスクール(予選会)に失敗したが、11月の日本プロテストに18位で合格。今年1月に入会。東京代々木高(通信制)を卒業。日本のプロテストに合格したため、進学が決まっていた米国のジョージア大を断念、日本でのプロ生活を選びました。国内QTランクは28位で通過。今季は2月に豪州でも米ツアー2試合に出場し予選落ちと25位。昨秋日本のプロテスト合格後には尾崎将司が主宰する「ジャンボアカデミー」に入門。ジャンボを師匠と仰いでいます。
ルーキー2戦目での初Vを知ったジャンボからは「パワーとスピードを兼ね備えた体をつくり上げた本人の努力以外にない。米ツアーでトップになりたいと目指しているが、それが見えてきたかな。まずは1勝。よかった」との祝福のことば。これには感激ひとしおの優花でした。
フィリピンと日本との両方の国籍を現在持っている笹生ですが、日本では22歳までに、どちらかの国籍を選択する必要があります。来年の東京五輪はフィリピン代表をめざし、五輪後は日本国籍を取得して念願の米ツアーに挑戦するプランを立てているようです。日本語を含めフィリピン語、英語、韓国語、タイ語と5か国語を操る語学堪能。優勝スピーチでは「日本人の心を持って頑張りたい」といまの胸中を語りました。日本、米国両ツアーを視野に入れて表舞台に登場してきた優花のゴルフ人生は、どんな大輪の花を咲かすのでしょうか?!
(了)