国内ツアーを留守にして約2ヵ月間英米を転戦していた渋野日向子(21)が、いよいよ今週30日からの樋口久子・三菱電機レディス(埼玉・武蔵丘)で日本ツアーに復帰します。昨年8月、AIG全英女子オープンでメジャー優勝を果たし″時の人〝となったしぶこは、今季は6月に国内1試合をこなしたあと日本をあとにし、AIG全英女子オープン、全米女子プロなど海外6試合に挑戦。″世界のしぶこ〝を目指しましたが、メジャーの厚い壁にはね返されていいところなく、全6試合を終え、10月中旬に帰国。2週間の自主隔離を経て同じく一時帰国中の河本結(21)とともに樋口久子・三菱電機にエントリーしました。久々、日本のファンの前にお目見えするしぶこがどんなプレーをするか。注目です。
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8月初旬に日本を離れ、昨年に続く連覇を狙った全英女子オープンなど英国での2戦は連続予選落ちといきなり悔しさを味わいました。傷心のまま英国から米国に渡ったしぶこは、米国でのメジャー大会ANAインスピレーションではなんとか予選を通過し51位。そのあと参戦したポートランド・クラシック、ショップライト・クラシックの2大会は24位、27位と持ち直したかにみえました。しかし、芝生の違い、アンジュレーションの強いグリーンなど、日本とは異なるコースの環境にはなかなかついていけない苦しみは続きました。そして迎えた英米遠征の最終6戦目の締めくくり、全米女子プロでした。
「英米で味わった悔しさは、日本で戦っていてもなかなか消えるものじゃない。米国での悔しさは、やっぱり米国で返さないと」と述懐したしぶこ。全米女子プロでの雪辱を期しましたが、世界のメジャーはそう簡単なものではありませんでした。6577ヤードと6500ヤードを越えてパーは70という女子にはタフな設定。パー4のセカンドをフェアウェイウッドで打たなくてはならないホールもいくつかあります。全米女子プロ、46位で予選は通ったものの3Rでは開始10番のパー4で「8」の大たたきを演じました。ラフからピンを狙った7Iの第2打が池ポチャ。ドロップ後の第4打はグリーンの厳しい傾斜も手伝ってグリーンの端まで返ってくる始末。「びっくりしてもうぼう然でした」(しぶこ)と、そこから悪夢の4パットして8打。一気にスコアを崩して76。予選通過者では最下位の73位までの陥落でした。 最終日は3バーディー、3ボギーと70のイーブンで締め、なんとか11オーバーの58位でフィニッシュしましたが、海外6試合のうちメジャー3試合は、予選落ち、51位、58位と厳しい壁にはね返されました。
「米国にくるまでは、飛距離が必要と思ってましたが、グリーン周りでは何打もミスをしてる。日本に帰ったら、やることがいっぱいだし、やることも変わりそう。メジャー王者なんていう看板は、もう捨てていい。そしていままで以上に米国で戦いたいと思わせてくれました」-しぶこは海外でやってみて一段と技術の向上、ゴルフの奥の深さを知り、挑戦者としての強い決意を話しました。苦闘も、それが″収穫〝と捉えたようです。
コロナ旋風に翻弄(ほんろう)された国内女子ツアーでは、しぶこが留守にしている間に8試合。計9試合が開催されました。そしてツアーを支配したのは小祝さくら、原英莉花、稲見萌寧(もね)らの黄金世代、2000年生まれ・ミレニアム世代の古江彩佳、さらには21世紀生まれの新世代、笹生優花ら際立った若返り現象でした。黄金世代の一員でもある21歳の
人気者・しぶこが、その国内では負けてはいられません。いいことがなかった約2ヵ月間の海外遠征の結果を国内ツアーにまで引きずってきては大変です。帰国2週間の自主隔離期間には、頭を切り替えての練習を積んだようです。同じく今季から米ツアーを主戦場にしている河本結(21)も米国では苦戦が続いています。この秋の陣、帰国して国内ツアーでの出直しを図ります。
国内女子の残り試合は、30日開幕の樋口久子・三菱電機を含めて5試合です。12月10日からは延期されている今季最後のメジャー、全米女子オープンが控えています。日本ツアーは11月末には終わるので、しぶこは再渡米して挑戦するチャンスが残されています。世界を見やるプロゴルファー・しぶこの戦いは、立ち止まっているヒマはありません。どん底を味わったいまが、新しいスタートラインともいえるかもしれません。
◆渋野日向子、今回の欧米遠征成績◆
スコットランドOP(8月)予選落
AIG全英女子OP (8月)予選落
ANAインスピレーション(9月)51位
ポートランドクラシック (9月)24位
ショップライトクラシック(10月)27位
全米女子プロ選手権(10月)58位
(了)