海外進出を目指し、この2ヵ月日本を離れて戦った金谷拓実(23)のトライアルが、いったん終わりました。その締めくくりとして勝負をかけた男子メジャーの今季最終戦、全英オープン(英ロイヤル・セントジョージズGC)は、痛恨のOB一発で1打足りず、2日間トータル2オーバーでカットされました。5度目のメジャー挑戦。全英はアマチュアで初出場した2年前に続き連続の予選落ちです。5月「全米プロ」から始まって米国、欧州5試合の海外転戦は、米国で予選落ち2回、欧州では予選落ち1回、BMWインタナショナルOPの17位が最高という厳しい現実でした。笑顔なく帰国した金谷は、隔離期間を過ごしたあと、8月から国内ツアーで心機一転の再調整を図ります。人気の金谷拓実にもシビアな勝負の世界です。
☆★ ☆★ ☆★ ☆★
全英オープン特有のリンクスコースが金谷を苦しめました。フェアウェイはうねり、いい球を打っても運が悪いとどちらにはじかれるかも分からない。左右には、ラフというよりは深いブッシュが迫ってきます。そのフェスキューに入れたら容易に1打では出ません。強く、重たい海風が吹きつけてきて、アゲンストでは極端に距離が落ちます。今年のグリーンは意外と重たかったといわれます。
それでも「欧州ツアーが好き」という金谷は、難コース相手に頑張りました。初日は2バーデイー、2ボギーのパープレー(48位)。予選カットがかかる2日目。ポットバンカーに入れてダブルボギーが先行(4番)しながら、すぐ5番で取り返し、そのあともバーディーチャンスに何度かつけるなど、辛抱強いゴルフを続けました。パー3の11番では、長いバーデイーパットを沈めて、先行したダボを帳消しにするいい展開。ところが13番(パー4)でブッシュにつかまってボギー。インコース唯一のパー5となる14番に“まさか・まさか”の悪魔がひそんでいました。前日はバーディーを奪っているこのホール。フェアウェイからの2打目が、右サイドのフェアウェイで弾み、コロコロと右側の白杭(OB)の中へ転がり込んでしまったのです。
唖然とする金谷。打ち直してグリーン手前。5打目も寄せきれずに5オン2パットのダブルボギーは、まさに痛恨。一気に順位を落とし、18番約3㍍のバーディーパットを沈めて意地をみせたものの、この日2オーバー72。トータルでも2オーバーで予選カットの1オ-バーに1打足りませんでした(78位)。右側のOBゾーンが非常に近い14番ホールではあったのですが「まさかOBを打つとは思わなかった。残念です。自分のプレーがうまくできなかったのが悔しい」と、唇をかんだ拓実クン。大事な2日目に2つのダブルボギーを犯したツケは致命的でした。2年前の全英でもカットラインに1打及ばず、プロになりリベンジを期した今年も、またも1打の重みに泣かされました。
アマチュア時代、数々の栄光を残し、20年10月にプロ転向すると、早々と11月「ダンロップ・フェニックス」、今季4月の開幕戦「東建」優勝と、国内ツアーでは旋風を吹き込んでいる男です。太平洋クラブとは5年間のスポンサー契約。ウエアに「ラルフ・ローレン」などと契約。、今年7月にはビーズソファーなどで知られる「Yogibo(ヨギボー)」と所属契約を締結して人気のほどをみせつけました。多くのスポンサーに支えられ、一方で世界の厚い壁に跳ね返された『敗戦』は、替え難い“良薬”となるでしょうか。「次に出るトーナメントに向けてしっかり調整したい」ー帰国した金谷の、短い一言でした。
(了)