“Abemaから世界へ”ーチャレンジツアーのキャッチフレーズを地でいくようなニュースが飛び込んできました。国内男子ゴルフの下部ツアー「Abema TVツアー」の今季第13戦「ISPS HANDA ヒーローになれ!チャレンジトーナメント」(栃木・アローエースGC=3日間大会)で19歳の久常涼(ひさつね・りょう)が最終日、1打差2位で迎えた18番(パー4)、第2打のアプローチを直接カップインさせるイーグルを決め、通算18アンダーで逆転サヨナラ優勝の離れ業を演じました。久常はチャレンジツアー今季3勝目。1シーズン3勝を達成するのは、2001年のS・K・ホ(韓国)以来20年ぶりの快挙。規定により、久常には次週以降のレギュラーツアーへの出場資格が与えられます。また優勝賞金360万円を加え、1シーズン獲得賞金1000万円突破は、1999年からスタートしたチャレンジトーナメント史上初の出来事。“ヒーローになれ!”のタイトルそのままの新英雄の誕生です。
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2002年生まれ、19歳の若者・久常涼です。岡山・作陽高卒。4つ年上には女子の渋野日向子(22)がいるゴルフ名門高の出身。ナショナル・チームのメンバーで国内・外で活躍。「日本ジュニア」、「全国高校ゴルフ選手権」、「ISPSハンダ全国高校選抜マッチプレー選手権」、「APGCジュニア」・・各優勝。20年12月にはプロ転向。21年からプロとして本格活動。20年のQTランキングは1212位と超下位で迎えたルーキーシーズンでした。ツアーデビューは21年4月の「関西オープン」で予選落ち。5月の「ゴルフパートナー・プロアマ」(ツアー)では16位に入りました。今季の主戦場はまだAbemaツアーで8試合に出場。「ジャパンクリエイトチャレンジin福岡雷山」「南秋田カントリークラブみちのくチャレンジ」「ISPS HANDA ヒーローになれ!チャレンジ」の3試合に優勝。トップ10入り3回(優勝以外)。予選落ちなしの好成績を挙げています。
チャレンジツアーでシーズン3勝を挙げると翌週からレギュラーツアーに参戦できます。今回の舞台は栃木・矢板市にあるアローエースGC。初日から激しい伸ばし合いとなり、久常も2日間「66」を続けて2日目には待望の単独首位。「目標にしてきた年間3勝のチャンスがきたので、この試合はどうしても勝ち切りたかった」。そう思いながらも最終日は思うように伸ばせず、苦しい展開でしたが「腐ることなく粘り強くプレーしたのが最後につながった」と試合をふりかえっています。
今週、試合がスタートする前には「頭の中では来週の東海クラシック(レギュラーツアー )に出ることを考えていた」とか。どうしても勝ちたくて会場に入る前には近くの日光東照宮に行き「お参りをしてきたんです」(久常)。そして大詰めには、劇的な幕切れが待っていました。
一時は2ストローク離されることもあった最終日。最後は1打差の2位で迎えた18番。390ヤード、パー4ホールで、第1打をグリーン右手前、ピンまで約20ヤード付近まで飛ばします。バンカーを挟んだ背水のアプローチは、カップ手前で軽くバウンドすると、ボールはそのままカップに消えました。逆転のイーグルショットが決まって、両腕を高く掲げて奇跡をかみしめる久常。この日も「66」で3日間とも「66」を続けた18アンダーの勝利でした。
シーズン3勝すれば次週からレギュラーツアーに行けるのは、2007年に作られた資格です。これを行使するのは今回の久常が初めてです。さらにレギュラーのツアープレーヤーになるためには、次はAbemaツアーの賞金王になることが必要ですが「うれしい。訪れた目先のチャンスはとりあえずつかめた。あとはガンガンいくだけなので、思い切って戦いたいと思います」(久常)
下部ツアーから頭をもたげた大物ニューヒーロー。高1のころからゆうに300ヤード超のドライバーを打っていたという飛ばし屋です。目標はあくまでも“世界”だという。その新たな第1歩が、今週のバンテリン東海クラシック(9月30~10月3日愛知・三好CC西)で始まります。見ものです。