全美貞(ジョン・ミ・ジョン)と思えば今度は宋(ソン)ボべです。その前の週は申智愛(シン・ジエ)が勝っていますから、日本の女子ツアーは、目下3週連続韓国勢が優勝をさらっています。いまさらではないですが、韓国勢はホントに強いです。31試合を消化した今季の国内女子ツアーは、うち10試合が韓国人が制しています。賞金ランキングではトップ10には4人、トップ20には6人の韓国選手が名前を連ねています。そんな現状の中、来年は米女子ツアーで活躍する韓国女子プロの10人以上が日本ツアーへ殴りこみ?をかけるとの情報です。″韓流〝旋風に来年はさらにかき回されそうな日本女子ツアーです。
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11月8日に終わったミズノクラシック(三重・近鉄賢島CC)は、日米女子両ツアーの共催による公式戦。日本で戦っている宋ボべがこのビッグゲームを制して「米女子ツアー1勝」を記しました。2日目に65を出して首位に立った宋は最終日、フェアウェイをほとんど外さない安定して強いゴルフをみせました。13番までに5バーディーとスコアを伸ばし、14番を唯一のボギーとしましたが、64で追い上げてきた″女王〝オチョアらに3打差をつける15アンダーでの優勝でした。オチョアはじめ米ツアーからも大勢の選手が参加していましたが、ここでもトップ10に宋ボべはじめ6人の韓国勢。改めて韓流ブームを実感させられました。
いまはもう″昔の名前〝になりましたが、当時新鋭だった朴セリが1998年に全米女子プロと全米女子オープンのメジャーにたて続けに勝ったことで韓国に大きな流れが生まれました。第2の朴セリを目指して、以来、何人の韓国の若者が太平洋を渡ったことでしょう。いまや米女子ツアーでは52人が参戦(09年)、30人を超えるシード選手が活躍しています。今季も米女子ツアーで延べ10人の韓国籍がすでに優勝を勝ち取って″韓流〝は広く世界に勢力を伸ばしています。
申智愛(シン・ジエ)。最近では何度もマスコミに載る名前でご存知でしょう。まだ21歳の若さですが、米国に渡り今年はすでに米ツアー3勝(通算6勝)を挙げて目下賞金ランキング1位にいます。米女子ツアーは残り2試合。ミズノでは5位タイに終わりましたが、申智愛は韓国人初の米ツアー賞金女王に大きく前進しています。申は日本ツアーでも今季マスターズGCレディスで勝って通算3勝を挙げていて日本のツアーメンバーの資格も持っています。
韓国ではジュニアから親たちが厳しい監視下でプロゴルファーを目指す若い子を育て上げます。そして一家を挙げて米国へ移住するケースも少なくありません。そうした背景があるのですが、米ツアーの現場でも「試合が終わって練習場にいくと、遅くまで打ち込んでいるのは韓国人が4分の3です」(ゴルフ評論家・岩田禎夫氏)といいます。米ツアーでは今季、男子ツアーでもY・E・ヤン(韓国)が全米プロゴルフ選手権のメジャーに勝つなど、男女とも勢いを増す韓流です。
華麗さはなくても、力強くしぶといゴルフを身につけている韓国女子プロたちは精神的にも強い選手が多いです。その彼女たちが、来季日本ツアーに鞍替えする動きがあるといわれます。世界を襲っている経済不況は米国、中でもスター選手も少ない米女子プロゴルフに波が押し寄せています。今季は32試合あった米女子ツアーのうち、来季継続開催が決まっているのは20試合そこそこだといわれます。賞金額を減額する大会もあるなど、来季の米女子ツアーは厳しい現実が迫っているようです。そんな米ツアーを見限って、盛況の続く日本女子ツアーへ参戦しようというわけです。在米のゴルフジャーナリストの舩越園子氏によると「10人以上の韓国女子が自国にも近い日本ツアーへの挑戦を計画中」とのことです。韓国人だけでなく、米国等の外国人選手の来日の動きもあります。
もちろん米ツアーの選手が日本ツアーに腰を据えて出場するには、申智愛のように日本ツアーのライセンスを持っている選手以外はQTを受験するなどの資格取得を果たさなければなりません。それなりの条件はありますが、世界を股にかけて戦う彼女たちは、どんなハードルも乗り越えて進むバイタリティーをもっています。日本の女子ツアーも人気に浮かれてのほほんとはしていられません。このオフ、世界の動向が注目です。