ジェットこと尾崎健夫(55)が09年のシニア賞金王となり、日本シニアツアーの頂点に立ちました。シニア入り6年目での栄冠。獲得賞金は3305万5000円でした。今季はシニアツアー全6試合に出場。優勝1回、2位が3回という大暴れで、ツアーの″主役〝を演じたジェットでした。最近はいい話もなかった尾崎一家にとっても久々の快挙でしたが、そのジェットがレギュラーツアーのQT(ツアー出場への予選会)を受験します。今季レギュラーツアーの賞金シードを失うことが決定的でその復権を目指すためです。シニアの賞金王がレギュラーツアーにかけるあくなき挑戦魂はすさまじいものがあります。
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シニアツアー最終戦となった先週のHanda Cup フィランスロピーシニア(千葉・スカイウェイCC)。尾崎健は「調子が下降気味で、初日から″重いゴルフ〝をやってしまった。いいプレーをして最後を締めくくりたかったのにはがゆかった」と14位タイに終わったのを残念がっていました。でも難しいコースで最終ラウンドはベストスコアの「70」をマーク、面目を施しました。優勝は、91年のアマスターズチャンピオンの特別招待選手、イアン・ウーズナム(英国)が、風の中低い弾道の球を駆使して4アンダーで日本での初Vを果たしました。
シニア賞金王になった尾崎健は、シニアとレギュラー両ツアーをかけもちしている数少ない選手です。ほかに室田淳、永久シード権を持っている中嶋常幸、倉本昌弘らがそうです。中嶋、倉本は別格として、尾崎健と室田は背水の陣で今シーズンを戦ってきました。両選手とも昨年でレギュラーツアーの賞金シードを失いましたが、そうした選手が救済されるルールがあります。
「生涯獲得賞金ランクで25位以内の選手には1年間(選択する年は自由)の特別シードを行使できる」
というものです。
尾崎健、室田の二人は今年この特権を使ってのレギュラーツアーで、まさに必死でした。室田はすでに1373万2448円(59位)を稼いで何とか賞金シードをとりそうですが、尾崎健は132位(賞金145万450円)に低迷して、賞金シードを失うことは決定的です。シニアの賞金王も、レギュラーツアーの厳しいコース設定などに泣かされての不振でした。
「50歳を過ぎたら特に大事なフェアウェイウッドがレギュラーの試合では悪すぎた。曲がる、当たらないで苦しんだ」とジェット。今年レギュラーでのシードを失うことは、来季から生きていく道はQTしかありません。「このトシになって一度落ちたら、なかなか戻ってこられない。次の年がなくなる。だから1年1年が勝負なんだ」(ジェット)。落としたシードを間隔を置かずにすぐにとり返したいのでしょう。
来季のツアー出場をかけたファイナルQTは、日本シリーズJTカップが開催されている同じ週、12月2日から6日間(6R)茨城・セントラルGCで行われます。ジェットはこれに挑戦します。出場権のある残り2試合(ダンロップフェニックス、カシオワールド)は捨てて体調を整え、QT用の練習をするそうです。優勝賞金ともに4000万円の2つの試合を捨てるのですから相当の覚悟です。「いま、この2つに出るよりも、体を休めてQTで頑張る方がオレにはいい。どうしても来年の(レギュラーの)権利を取り戻して立て直す。その気力は残っているから」ときっぱりといっています。
ところでジェットが今年、シニアツアーで絶好調を維持できたのは「40歳を過ぎたころからおかしかったパットとアプローチのイップス系が取れたから」と、その理由を話してくれました。大きなミスをしないように用心深く1打1打根気よくやってきた結果が「今年、打てるようになった」といいます。「もともとショットはよかったのだから、小技で立ち直ったのが、シニアでは高いレベルのゴルフができた」と、振り返っていました。同じゴルフをしていて、シニアでは賞金王、レギュラーではシード落ちと、両極端を味わったジェットの得たものは何だったのでしょうか。ファイナルQTでのカムバックを期待しましょう。