オーガスタを体験した5人目の日本女子・吉田鈴(18)。帰国初戦の「KKT杯バンテリン」見事予選通過で最優秀アマに。姉・優利プロを追う注目の“吉田シスターズ”!

21年度「オーガスタナショナル女子アマ」のチャンピオン・梶谷翼。今年日本勢2連覇は成らなかった。

夢の国際舞台「オーガスタナショナル・女子アマ選手権」で日本勢ただ一人予選を突破、オーガスタナショナルGCの本コースで決勝ラウンドをプレーしてきた吉田鈴(日本ウェルネススポーツ大1年)。帰国後初戦のプロツアー「KKT杯バンテリンレディス」(熊本空港CC)で通算1オーバー32位に食い込むベストアマ(最優秀アマ)の殊勲をたてました。プロツアー出場9戦目にして予選を通過したのは初めて。そのうえ、うれしい“上位フィニッシュ”に「オーガスタでの予選通過が大きかったです」と、“オーガスタ効果”をかみしめました。姉の吉田優利プロが4人プレーオフで惜しくも敗れツアー3勝目を逃がしましたが、若い吉田姉妹への反響は大きく、意義ある大会となりました。
【優勝は4人プレーオフを6ホール目のバーディーで制したプロ6年目の植竹希望(23)がツアー初V】

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男子ゴルフの祭典「マスターズ」が開催されるオーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)でその前週に決勝ラウンドが行われる「オーガスタナショナル女子アマ選手権」。第1回大会(2019年)には安田祐香、笹生優花の日本勢が3位に入る健闘。昨年度は梶谷翼(当時17歳)がプレーオフを制して快勝。日本勢2連覇を目指した今年は、選出された5人のうち、ただ一人吉田鈴(りん、18=千葉黎明高→日本ウェルネススポーツ大1年)が決勝ラウンド に進出。“聖地”オーガスタを体験しました。まず予選の2日間は、オーガスタ近郊のチャンピオンズ・リトリートコースでの36ホール。上位30人が1日の練習日をおいて4月2日、オーガスタ・ナショナルGCでの決勝18ホールです。日本勢を代表して進出した吉田鈴。トップとの4打差逆転の夢を追ってのラウンドでしたが、距離感やグリーンのタッチがどうしても合わず、大苦戦。2バーディーはとったものの、5つのボギー。予選からの通算で7オーバー。出場30人中20位の終幕でした。ホールアウトした鈴は優勝争いに絡めなかったこともあって「最終日、緊張で自分のプレーができなかった」と、大粒の涙を流しました。しかし、世界トップクラスのアマチュアが終結した国際大会で予選をクリア。オーガスタ・ナショナルの土を踏んだのは5人目の日本人女子です。大舞台での貴重な経験は、これからの鈴のゴルフ人生に得難い糧となって生きてくるでしょう。

オーガスタナショナル女子アマで決勝進出した吉田鈴。

「すごくきれいなコースで感動でした。アップダウンも結構あったし、グリーンの傾斜も強くて難しかった。試合になると緊張してスイングが止まってしまった。いいショットが打てなかった。海外の選手はいろんな球の打ち分けができるけど、私の球は転がってしまう。その辺から直していかないと・・。満足のいくプレーができなかったけど、頑張らなきゃいけないと思いました。これからはマスターズを観るたびに“ここはこういうショットを打ったな”と思うでしょう。一生の思い出になる試合でした」。心に残った強烈な体験をかみしめた鈴。オーガスタでの戦いで学んだことは、有形無形で尽きることがないでしょう。

帰国して3日間の隔離。「体が少しなまったかな」と笑顔でのぞんだ“オーガスタ帰り”の初戦「KKT杯バンデリンレディス」。初日は「73」で54位とカットラインギリギリのスタートでしたが、2日目、粘りのゴルフで4バーディー(3ボギー)を奪って「71」。昨年は9オーバーで予選落ちした同じ試合を9打縮めて通算イーブン、30位で堂々とプロツアー初の予選通過する“成長”をみせました。最終日はパー5の11番をダブルボギーにしたのが痛く、「73」とスコアを落としてトータル1オ-バーの32位タイ。しかし、この秋に目指すプロテスト合格へ、グンとレベルを上げたゴルフを身につけてきました。

今春大学生になった18歳・吉田鈴。オーガスタ女子アマ帰国初戦の「KKT杯バンテリンレデイス」でもプロツアー初の予選通過。
32位タイに入って「最優秀アマ」を獲得。姉・優利プロともども話題の「吉田シスターズ」だ。

吉田鈴にとって「オーガスタ女子アマ」が初めての海外での試合でした。今年1月16日、千葉の自宅に突然舞い込んできた「オーガスタナショナル・女子アマ選手権」への招待状。世界アマランキング38位だった吉田の順位で届いた招待でした。「何も知らされてなかったので、もうびっくり」と振り返った鈴。「オーガスタへ行けたらゴルフに対する気持ちもまた変わるかも。うまくなるきっかけになればうれしい」と、わくわくする気持ちを抑えながら準備を進めました。4つ上の姉・吉田優利を追って自身もプロゴルファーを目指し、昨年11月には初の最終プロテストを受験しましたが、合格に1打及ばず涙をのんだ鈴です。夢のオーガスタへ行ける!その思いは自然と練習にも熱がこもりました。飛距離アップへのトレーニングも欠かしませんでした。
そしてオーガスタでの決勝進出。帰国後は9回目だったプロツアーに初めて予選通過のご褒美が待っていました。今年4月には大学生になった18歳。ひとつひとつの経験が、見るからに血となり肉となって腕を上げていくゴルフ人生、真っただ中の吉田鈴です。

帰国後の「KKT杯バンテリン」ではキャディーを務めてくれたコーチ格、男子ツアー7勝の今野康晴プロも「オーガスタの経験が大きかった。これを期に、もっと磨いていけば楽しみな逸材」と言っています。この後は「全米女子オープンの日本予選」、「日本女子アマ」、昨年は予選落ちした「日本女子オープン」のローアマ、11月の「女子プロテスト」・・とビッグイベントのターゲットが控えています。そしてツアー2勝の姉・優利プロ。“吉田シスターズ”から目が離せません。

(了)