賞金ランク1位に浮上!23歳の新星・桂川有人。今季4戦目、所属のISPSにホスト優勝で脚光!

ISPS恒例の勝利のカブトをかぶって、ツアー初優勝を味わう桂川有人(コース内の特設舞台で)。

男子ツアーの新しいスターに名乗りを挙げてきた男がいます。桂川有人(かつらがわ・ゆうと)23歳。今季男子開幕戦、アジアツアーと共催の「SMBCシンガポール・オープン」で日本人最高位の2位に入って全英オープン(7月、英国セント・アンドリュース)の出場権をつかむと、国内第1戦「東建ホームメイト杯」では香妻陣一朗とのプレ-オフに敗れはしたものの通算14アンダーでまた単独2位。そして4戦目の「ISPSハンダ欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント」(茨城・PGM石岡)では、ついに通算24アンダーのビッグスコアを出してツアー初優勝です。新型コロナウイルスの影響で多くの選手が参戦できず、国内ツアーの賞金加算対象外となった「シンガポールー」を除く3試合で、早くも3380万円を稼ぎ出し、賞金ランクトップに躍り出ました。大会主催者(国際スポーツ振興協会=ISPS)と今季から所属契約を結んだホストプロが、ツアー2年目で飾った初優勝。半田晴久会長は「167㌢の小柄な桂川有人がすばらしいゴルフで勝った。松山英樹を追って次期スターになりうる逸材」と、絶大なる賛辞を贈りました。大会最終日ホールアウト後、コース内の特設舞台では自らが主宰する劇団による「野外演劇公演」を行うなど、常々訴えている「ゴルフツアーはエンターテイメントであるべき」との実践も怠りません。半田晴久会長の意気も高まります。

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桂川有人のドライバーショット(茨城・PGM石岡)

ジャック・ニクラウス設計の戦略性豊かな石岡コース。池もふんだんに配したアメリカンスタイルのレイアウトですが、桂川のゴルフはクラブ選択、考え抜いたコースマネージメントで、着々と進みます。半田会長がいう通り、167センチの上背は物足りない桂川ですが、鍛え抜かれた隆々とした筋肉はほれぼれします。しっかりとトレーニングを積んだ証拠でしょう。叩いたときのドライバーは300ヤードを超えますが、アイアンの使い分けなど、精度の高いショットをもっています。トップタイで出た最終日。9番では10㍍以上の長いバーディーパットを沈めるなど、前半だけで6つもスコアを伸ばしました。そして後半。桂川の真骨頂は16番(パー5)、17番(パー3)、18番(パー4)の上がり3ホールでした。16番、バーディーチャンスから3パットしたボギー。1組前を行く星野陸也が追い上げてきて並びます。心の動揺は隠せませんでしたが、次の17番谷越え184ヤードのパー3で桂川の“ハートの強さ”をみせつけました。左端の難しいピンに向かって、8番アイアンが冴えます。ピン1.5㍍につくバーディーチャンス。これを確実に沈めるバウンスバック(スコアを落とした後、すぐにバーディーで取り返すこと)。先を行く星野は最終18番、3㍍強のバーディーパットを外します。場合によっては一気に逆転劇となるところを、桂川は見事に24アンダーをキープしました。最終18番はフェアウェイ右サイドから「一番好きなクラブ」(桂川)という7番アイアンで、ピン左に2オン。急追・星野に1打差をつけての快勝でした。

いろんな球が打てる桂川有人(ISPSの大会で)

「やっと勝てて嬉しいです。2位が続いていたので・・。17番は何も考えずにピンに向かって打ちました。いろいろ緊張感はあったのですが、一緒に回っていた大西(魁斗)選手がすごいいいプレーをしていたので、負けずにやっていたら、たくさんバーディーがとれました。いい調子で優勝にもっていけた。この調子のまま、次はなるべく早く2勝目、複数回優勝できる選手になりたいです」。
3年間のフィリッピンゴルフ留学では「いろんな方々に支えていただきゴルフも教えてもらった。風への対処法や日本ではなかなか見られない小技なども覚えました」という。帰国後は日大で腕を磨き、今回は先輩・星野にも競り勝つ成長を遂げたのです。「首位に立ってもひょうひょうとして、謙虚にゴルフをやっている。ヘッドスピード“53”というのもすごい。次期のスターになれる」と、半田会長からのお墨付きも一流です。これからのに日本男子ツアーを担っていく大物に成れるかどうか。今週の中日クラウンズ、そして7月には全英オープンの大舞台も待っています。ここでいまのゴルフができたら本物でしょう。すでに昨季プロツアーで1勝、今春にはマスターズにも招待されたアマチュアの世界1位男・中島啓太と並ぶスター候補です。これからの1戦1戦が楽しみな若者の出現です。

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コース内の特設舞台で野外劇を演じる団員(PGM石岡)

プレー終盤から降り始めた雨のなか、特設舞台での演劇公演には、配られたレインポケットコート姿の1000人を超える“ギャラリー”がゴルフのあとは野外演劇に見入りました。この日は「明るすぎる劇団・東州」が『ある愛のかたち』『バッタに抱かれて』の演目を演じ,幕間には半田晴久団長が自らパントマイムを披露して拍手喝采を浴びました。

その舞台で演劇後、優勝の表彰式にのぞんだ桂川有人。ISPS恒例の勝利のカブトと羽織をまとい、大ファンという新日本プロレスの人気レスラー内藤哲也のポーズも決めるなど、こちらも大きな拍手を受けました。

愛知県・清須市生まれ。シングルプレーヤーだった祖父の勧めでクラブを握り、ルネサンス豊田高(通信制)⇒フィリピン・マニラにゴルフ留学。帰国後、日大2年の2018年日本学生などに優勝。18年10月の日本オープン2Rでは単独トップに立ちました(最終33位タイ)。2020年にプロ転向。21年10月、2部ツアーで1勝。21年プロツアー8試合に出場。賞金ランク87位でした。

(了)