日本シニアで“無敵”といわれたプラヤド・マークセン(タイ、56)の恐るべき“復活”です。9月の日本シニアオープンで2位に4打差をつけて圧勝したのに続き、次のメジャー、日本プロシニア・住友商事サミットカップ(10月6~9日、茨城・サミットGC)で、今度は2位に5打差をつける通算13アンダーの完全優勝。賞金ランキングは1位に急浮上。シニアで3度の賞金王(16、17、18年)に輝いた男が、「4度目」への挑戦宣言です。コロナ禍で20年は来日せず、21年5月に再来日した後、じわじわと実力を取り戻し、この秋の陣を迎えて一気に2つの日本タイトルを連取です。56歳になったいまも完ぺきなゴルフに衰えをみせず、メジャーの舞台で“強さ”を実証してみせました。国内シニアツアー通算17勝。怖い男がシニアツアーに戻ってきましたー。
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コロナ禍で20年は来日できず、21年5月に再来日したマークセンは、やや鳴りをひそめて“強さ”にカゲリがみえたかに思えました。しかし“シニアの鬼”の健在ぶりは、この秋にきて蘇りました。国内シニアのメジャー大会、9月の日本シニアオープンに続き、メジャー第2戦、「日本プロシニア」で一気にメジャー2連勝です。舞台は10年連続開催の茨城・サミットGC。今季からシニア入りしたレギュラー16勝の宮本勝昌。若々しい50歳が、初日は4アンダー、トップタイとマークセンに肩を並べました。2日目は「66」を出した19年日本シニアオープン覇者の谷口徹が2打差の2位に。3日目はシニア24勝、日本タイトル3冠の“シニアの鉄人”室田淳(67)が「68」をマークして1打差の2位と追い上げます。かつては好敵手だった室田もここまでが精一杯でした。宮本も3日目まで2打差の3位と粘って、鬼のマークセン包囲
網は実力者が次々と迫りましたが、動じませんでした。
最終日のマークセンは、1番からいきなり3連続バーディーの強烈パンチで、追ってくる猛者連の度肝を抜きました。変わりやすい気ままな風を考え、ドライバーをおいて3W(スプーン)のコントロールショットを多用。「僕のフェードボールは風に流されるので、3Wでコントロールしていった」(マークセン)という。3Wでのティーショットは「6~7回は使った」と明かしました。ベテランらしいコースマネージメントも冴えて、全く危なげがありません。後半にターンすると、11番、16番でもバーディーを重ね、16番までに2位の谷口、宮本に早々と6打差をつける横綱相撲。17番でフェアウェイバンカーに入れて2オンを外し、唯一のボギーとしましたが、最終18番(パー5)では約5㍍を沈めてバーディーフィニッシュ「67」。落ちつき払ったプレーに終始して誰の追撃も許しませんでした。
★マークセン★「最初に3バーディーがきて、きょうはいけそうだなと思った。宮本さんや室田さんがどんなプレーをするのか分からなかったけど、自分の調子のよさで自信になった。コマツのときからパターを替えて(オデッセイのNO5からNO7に替えた)パットがよくなった。パットがよくなると、セカンドやドライバーにも影響して調子が上がった。(2016年に同一年メジャー2勝しているが)それを知って驚いています。シニアオープン3連覇(16、17、18年)したときと同じくらい凄いことと実感してます。あと残り1試合1試合を大事にベストを尽くす。その結果、賞金王になれたら嬉しい。でもいまは賞金王は目指していません。日本のシニアツアーが終わったらアジアンツアーに行きます」
9月初旬の「コマツオープン」で、打倒・マークセンに燃えた深堀圭一郎の追撃に遭い、プレーオフ負けした手痛い“1敗”(2位)はありましたが、マークセンの強さはやはり盤石です。
ショットは安定しているし、パットの精度の高さは抜群です。50歳を過ぎたいまでも、母国・タイの試合だけに留まらず、日本ツアー(時にはレギュラーも)はもちろん、アジアンツアー、欧州ツアーなどを渡り歩き「年間40試合はこなしている」(マークセン)という。まさに世界のゴルフ場で腕を磨き、賞金も稼ぐハンターです。
今季の国内では出場8試合で優勝2回、10位以内が5試合。獲得賞金は3761万4966円(1位)。平均ストロークは68.43で1位。部門別では、このほかパーキープ率、パーブレーク率、バーディー数で1位。中でもバーディー数108個は他を圧する数値です。平均パット数の7位、パーオン率の2位など、どれをとっても上位をキープするのは、マークセン・ゴルフのレベルの高さを示しています。国内シニアツアーは残り5試合。「いまのところは全部予定しています」と、日本での全日程はクリアするスケジュールです。18年以来4度目の賞金王へ、ゴールは日ごとに鮮明になってきました。深堀圭一郎に続いて打倒・マークセンを果たす日本勢はどこに?!
(了)