★日本オープンVの“怪物アマ”、今週にもプロ転向か。いくら稼ぐ?蝉川泰果(タイガ)21歳!

ゴルフ界最高峰の「日本オープン」を完全優勝。最終ホールでガッツポーズの蝉川泰果。

日本オープンでアマチュアとして95年ぶり2人目の優勝を成し遂げた蝉川泰果(せみかわ・たいが=東北福祉大4年)が、今週にもプロ転向します。11月3日開幕の「マイナビ ABC選手権」(兵庫・ABC GC)。アマチュアですでにツアー2勝を挙げているタダモノではない飛ばし屋。今度はプロとしてどんなゴルフをみせるか。10月28日に終わった常陸宮杯全日本大学選手権(石川・片山津GC)をアマ最後の試合として、試合後、東北福祉大・阿部靖彦監督とともに日本学生ゴルフ連盟に退会届を提出しました。日本オープン(10月)、パナソニック・オープン(9月)とプロツアー2勝を挙げる「顕著な成績」を収めていることから、「プロテスト」や「QT」(予選会)を経ずに“特別措置”としてツアー出場が許された“怪物”です。日本オープンVによって「プロ転向後の当該シーズンの残り試合+5年シード」というビッグな権利も付与されます。

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国内男子プロの資格を得るには、通常日本プロゴルフ協会(PGA)のプロテストに合格。国内プロツアー出場には日本ゴルフツアー機構(JGTO)の予選会(QT)をそれぞれ通過しなければなりません。しかし、プロツアー2勝の蝉川は、いきなりのプロデビューです。

 

うれしい優勝カップを抱える“タイガ”。

日本OPでは、ナショナルオープンのハードなコースセッティング(兵庫・三甲GCジャパンC)をものともせず、初日から「64」のロケットスタートの単独首位。緊張が張り詰める最終日も2連続バーディーでスタート。9番でトリプルボギーを叩きながらも耐え、最終18番グリーンでは右カラーから7㍍はあったパーパットをジャスト・インで沈めました。最後、右こぶしを振り下ろしたカッコいい仕草は、まさにタイガー・ウッズばり。4日間を1位で守り抜いた“心技体”は、まさにタダモノではありません。
「(最後2打差と迫られていた場面で)あんなパットが入るなんて、“自分は何かを持っているな”と思いましたね」と、いたずらっぽくいうあたりも並みの選手じゃありません。プロ転向にあたって「魅せるゴルフ、見て喜んでもらえるゴルフを目指したい」といっているのも、プロとしては頼もしい言葉です。“名誉”を重んじるアマチュアゴルフでは、ツアーに出場しても順位賞金はもらえません。ちなみに今年の蝉川は、パナソニックで2000万円、日本オープンで4200万円の優勝賞金は、そのまま2位の選手(パナソニックは岩崎亜久竜。日本オープンは比嘉一貴)に“進呈”しました。2試合だけでも計6200万円をもらいそこなった?蝉川の、プロ転向が早まったのも納得でもありますー。

力強い蝉川泰果のドライバーショット。300ヤード超の飛ばし屋だ。

泰果(タイガと読む)が生まれたのは、2001年1月。ウッズが前年の全米OP、全英OP、全米プロに続くメジャー4連勝を、マスターズ2勝目で果たした絶頂期。ゴルフ好きの父親・佳明さんが「海外でも通用する英語の名前を・・」といい、祖父がタイガーにちなんで「タイガ(泰果)」と命名したという。“アマ返上”後の「次の試合にも絶対勝つという気持ちです」と、タイガー顔負けのガッツをみせる蝉川は、どこまで強い根性を持っているのでしょう。

日本オープンの練習日。蝉川は招待選手の13年マスターズ覇者アダム・スコット(豪)や石川遼と一緒にラウンドしました。
「スコットさんは“本物”ですね。飛ばしにきたときは、50ヤード近く置いていかれた」と笑った泰果ですが、最後は「ビッグドライブ!」と声をかけられ、ボールまでもらったという。

日本オープン優勝後、アマ最後の試合に東北福祉大の主将として臨んだ常陸宮杯全日本大学選手権(石川・片山津GC、パー70)。2日目ベストスコアの「65」。最終日(4日目)は10バーディー、1ボギーの9アンダー「61」と驚異的なベストスコアを出して、泰果は通算12アンダー。個人トップスコアで最優秀選手に選出されました。が、チーム戦で日大に8ストローク差の準優勝となり、笑顔はなし。が、表彰式では日本オープンでの快挙を称えて、日本学生ゴルフ連盟から特別表彰を受賞するなど、プロ転向前からいまや“時の人”となった蝉川泰果です。

父親・佳明さん(左)ら家族と優勝カップを囲む喜びの蝉川泰果一家(兵庫・三甲GC)

兵庫県加東市生まれ。興国高から東北福祉大へ進み、21年末にはJGAナショナルチームメンバーに。15年の関西オープンにツアー初出場。以降17戦中12戦予選落ち。18戦目の今年9月、パナソニック・オープンで史上6人目のアマチュア優勝で一躍脚光。続く10月にゴルフ界最高峰の「日本オープン」をアマで制覇。ドライバーの平均飛距離は300ヤード。

さて、同学年の中島啓太(日体大4年)のあとを受け、10月5日付で蝉川が世界アマチュアランキング1位にランクされました。中島も9月にはプロ転向。蝉川も束の間の「1位」になりそうですが、中島のあとを追ってプロの世界に飛び込みます。ツアー秋の陣、今季は残り5試合。高賞金のビッグゲームばかりです。「プロ・蝉川泰果」の剛腕は、いくら稼ぎ出すでしょうか。

(了)