★1万人超えのギャラリーを呼んだ蝉川泰果(せみかわたいが、21)。男子ゴルフの新しい“主役”へ名乗り。御殿場で逃がした優勝賞金・4000万円は「ダンロップフェニックス」で!

星野陸也とのプレーオフ2ホール目、バーディー決着で3年ぶり、ツアー通算18勝目を飾った石川遼。(写真提供:太平洋クラブ)

50回目の記念大会を迎えた男子ツアーの“御殿場”に、連日大ギャラリーが集まりました。中でも好天に恵まれた3日目は1万人超えの大盛況。

雨がパラついた最終日も7334人で4日間合計26702人のファンで溢れました。 男子ゴルフでこんな賑わいをみせたのは何年ぶりでしょうか。最後は、石川遼(31)2年11ヵ月ぶりの復活優勝(ツアー18勝目)で劇的フィナーレでしたが、大会が大観衆を呼んだのは、まぎれもなくアマチュアでツアー2勝、プロ転向2戦目の若武者・蝉川泰果(せみかわ・たいが、21=東北福祉大4年)の登場でした。熱く盛り上がった舞台は「三井住友VISA太平洋マスターズ」(太平洋クラブ御殿場C)。TV解説に登場したレジェンド、中嶋常幸プロは「間違いなくこれから男子ゴルフの“主役”のひとりになりそう」と高い評価。攻めのゴルフで300ヤード超を飛ばす“タイガ”の魅力は抜群で、今週「ダンロップフェニックス」(11月17~20日、宮崎)でのリベンジは成るでしょうかー。

☆★      ☆★      ☆★

大きなフォロースイングで正確な打球を飛ばす蝉川泰果のショット。

今年の御殿場は50回目の記念大会。霊峰富士の麓で半世紀に渡って開催されてきたビッグゲームです。ファンに感謝の意を込めて今年は4日間とも入場無料としたのも人気に拍車をかけ、初日から4170人、2日目5131人、3日目10067人、最終日も7334人で今季最高の入場者数を記録しました。男子ツアーで1日1万人超えは、10573人を集めた2018年5月の「日本プロ」最終日以来のこと。低迷を続けた男子ツアーに、久々に明るい灯をともした「タイガ旋風」といえそうです。
お目当ての蝉川泰果は、期待通り3日目には通算10アンダーで2位に3打差をつけて単独首位。ツアー初の「アマ&プロ同一年V」達成かと視線を独り占めでしたが、最終日、プレシャーからか御殿場コースの快速グリーンで突然の乱調。バーディー1個しか奪えず、6オーバー「76」の大たたき。通算4アンダー8位に沈没する洗礼を受けました。

満員のギャラリースタンドから見守られて、ビッグドライバーを放つ蝉川泰果(静岡・御殿場コース10番ティー)

「蝉川タイガが見たい」。「中島啓太がカッコいい」。「飛ばし屋の河本力は?」と、御殿場コースにつめかけたファンは、口々に興奮げに叫びました。見栄えのする若者の出現で男子ゴルフも大きなさま変わりをみせてきた感が強烈です。2打差2位タイから出た3日目のタイガ。4番(パー3)で11㍍、6番(パー4)では13㍍、12番(パー4)ではカラーから8㍍と長いバーディーパットをこともなげに次々と沈めていくこの若者に、ギャラリーの熱狂はヒートアップするばかり。14番(池越えのパー4)、上からの5㍍を決めて遂に9アンダーで単独トップに立ったのです。17番(パー3)で1㍍のパーパットを外してボギーとしますが、最終18番(パー5)は、会心のドライバーをフェアウェイに飛ばし、残りは143ヤード。持ったクラブはなんとPWという見せ場。「最後はピンにピタッとつけて沸かせたかったのに“つかまりすぎた”」(タイガ)と残念がったボールは、ピン左10㍍に2オン。イーグルフィニッシュは成りませんでしたが、50㌢に寄せるOKバーディー。2位に3打差をつける「66」のホールアウト。初優勝の夢を膨らませて「あすはもっとお客さんが楽しんでくださるプレーがしたい」と、明るく話したタイガでした。

 

アプローチショットにも非凡なところを見せる“タイガ”。

そして最終日。標高約500㍍の御殿場コースに冷たい風が吹き抜けました。1番バーディー発進したタイガは2番、3番で短いパーパットをミスして連続3パットボギー。これでリズムを崩したよう。チャンスにつけてもことごとくカップを外して立ち直れないまま。同組で回った石川遼、星野陸也の優勝争いを横目にするばかり。プロ2戦目でワーストの「76」。プロの厳しさを知らされる辛く、長い1日になりました。それでも惜しまず声援をくれる大勢のギャラリーの前で、悪びれずに精一杯のプレーを最後まで続けたのは、さすが“アマの王者”らしいすがすがしさでした。

「きょうのゴルフにはがっかりでした。何もかもうまくいかなかった。流れが悪くなったときに、自分のプレーを見失ったり、1打1打に集中できなかった。優勝スコアや周りを見過ぎたなと。いいところにいたのに、もったいなかった。実力不足です」と、反省また反省の蝉川。

 

アマチュア世界ランク1位から今年9月にプロ転向した中島啓太(22)。蝉川泰果らと同世代、期待の若手の一人。御殿場では35位タイと振るわなかった。

同年代の中島啓太や河本力。さらには今回の御殿場で大健闘した勝俣陵(26=埼玉栄高→日大)ら、若手軍団のはつらつとしたゴルフが目をひきます。中でも蝉川泰果への注目度は抜群。大きなフォロースイングとり、フルスイングでもあまり曲がらないロングショットを飛ばす魅力。グリーン周りからのアプローチも多様な引き出しを持っているのは、さすが日本オープン覇者です。その攻撃的なゴルフがファンに大受けです。10月31日にプロ転向したばかり。「日本オープン優勝」で、来季から5年間のシードを付与されているのも大きい。今回は目前にあった優勝賞金4000万円は逃がしましたが、プロとしての初優勝もそう遠いことではないでしょう。
今季残りは3試合ですが、次週、プロ3戦目「ダンロップフェニックス」での“タイガのリベンジ”が待たれます。御殿場では入場無料で足を運んだ観客も、見て楽しい男子若手群の台頭には、ハットオフです。有料入場料でもお客を呼べる男子ゴルフの時代が、やってきそうですがー。

(了)