「リバプールの体験」歴然!平田憲聖(22)。“148位から1位へ”平常心で「日本プロ」制す。平田時代到来か!?

今年の「全英オープン」出場権を得た4人(左から平田憲聖、中島啓太、金谷拓実、安森一貴=5月のミズノオープンで)

22歳の平田憲聖(大阪学院大出)が初日からの首位を守り切り、国内メジャー初制覇の偉業を完全優勝で達成しました。先週終わった海外メジャー「全英オープン」に出場した平田は、2日間14オーバー、148位のどん底で予選落ち。「“世界”をみて自分に対する厳しさを変えないといけない。すべてがいい経験になった」とコメントしたその1週間後、言葉通り、最終日一時は首位を明け渡す苦しい流れから、勝負のバックナインで4バーディーを連発。一皮むけたゴルフで「71」をマークして通算11アンダー。最終18番は余裕のボギーで勝利を決めました。まさに“148位から1位へ”全英効果をみせて早くも国内2勝。男子ツアー中島啓太、蝉川泰果らと同年配「平田憲聖」新時代の幕開けです。22歳246日での制覇は、戦後では大会最年少記録でした。

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やったー!バンザイ。「全英オープン」の体験を生かして「日本プロ」の激戦を勝ち取った平田憲聖(北海道・恵庭CC)

平田憲聖の帰国早々の勝利をみるにつけ「全英オープン」の憲聖を語らずにはいられません。今年の「全英」は、イングランドの名門「ロイヤル・リバプールGC」で行われました。国内ツアーの「~全英への道~ミズノオープン」で中島啓太をプレーオフで破り、「全英」への出場権をつかんだ平田は、一躍夢の舞台へ乗り込みましたが「75」「81」の惨敗。平田は「2日目、6番までガマンできたのに、ダボが続いて気持ちを切り変えられなかった。日本ではミスにならないものがミスになる。レベルの差、コースのセッティングも大違い。毎ホール、毎ショット考えながらプレーしないといけない。自分に対する厳しさをもっと考えないと。素晴らしい経験でした」ー2日間でコースをあとにした平田はこうコメントしました。“世界の舞台”を身をもって体験し、いままでやってきたこととあまりにも違った現実にショックを受けたのでしょう。雨に打たれて体調を崩しながら「全英」最終日は会場へ足を運び、ローリー・マキロイ(英)の1番ティーショットを目に焼きつけてきたという。月曜日に現地を立った平田は火曜日に帰国。そのまま北海道・恵庭入りする強行軍でこの大会に臨みました。体中で感じ取ったリバプールの経験は、生々しく平田のゴルフに乗り移った感じがします。

 

平常心を失わず、淡々とショットする平田憲聖。(PGA提供)

初日から安定したゴルフをみせ「68」でトップタイのスタートでした。2日目には「69」で2打差をつけた単独トップ。3日目も「69」と60台を続けた平田は、3日目で早くも10アンダーと伸ばして首位を守りました。日本のゴルフコースは、メジャーであっても「全英」に比べればやさしく感じたのかもしれません。優勝がちらついてきた最終日。「(スコアを)崩して終わるのはいやだった。1番でピンに絡めてバーディースタートが切れたので、このまま伸ばして優勝しようと思ったとたん、6、7、9番とパットが入らずボギーが続き首位を(上井邦浩に)明け渡してしまった」(平田)。微妙なメンタル面の崩れから2打ビハインドで折り返すピンチでしたが、平常心を失わない平田は表情も変えません。
「最終日、前半は情けないゴルフをしたけど、後半からは切り替えようと思っていた」という。
12番(パー5)のチャンスホール。2オンさせて着実にバーディーをとると、14番で15㍍もあろうかというロングパットが決まります。これが大きな転換点となりました。ここでトップを取り返すと、続く15番も6㍍の長めのパットを沈め、表情を変えない男が連続バーディーに珍しくコブシを握りしめました。勝負どころとみたのでしょう。追っていた上井、金谷、中島、蝉川といった強敵が次々とスコアを崩していくのと対照的でした。2位グループと3打差がついた最終18番は、ティーショットをアイアンで打ち、これを右の林に入れてボギーにする場面もありましたが、3打のリードでは危なげもないフィニッシュでした。

 

急きょ大阪から駆け付けた母(右)と姉(左)&優勝カップに囲まれた嬉しい平田憲聖ファミリー(恵庭CC「日本プロ」)

「こんなに早く2勝目がくるとは思ってもいなかった。それがメジャー大会になるとはー。うれしいですね」(平田)。大阪吹田市の出身。2000年生まれで中島啓太、蝉川泰果らと同い年。「関西アマ」(2017年)、「日本学生」(2021年、大阪学院大3年)で優勝。2021年12月に大学3年生でプロ転向。国内ツアーQTで2位となり大学生プロとなる。ツアー初年度の22年は「BMW日本ゴルフツアー選手権」7位で存在感を示す。23年ツアーは「ミズノオープン」でツアー初優勝して「全英オープン」出場。「ASO飯塚チャレンジド」で5位。「ハナ銀行招待」26位。「日本プロ」優勝。

(了)