タイガー(泰果)は強かった!好ライバル・中島啓太との“死闘”を制した蝉川泰果(せみかわ・たいが=22)。明暗分けた17番(パー5)。惜敗・中島は米下部ツアー最終予選会挑戦へ渡米!

ツアー最終戦のメジャー「ゴルフ日本シリーズJT杯」を激戦の末に手にし喜びの蝉川泰果(東京よみうりCC)

タイガー(泰果)は強かった。今季、賞金王が決まった中島啓太(23)との最終日、最終組直接対決に臨んだ蝉川泰果(22)。持ち前の攻めのゴルフに徹して中島を圧倒。2アンダー「68」で回り、「69」だった中島を1打差2位に抑える通算15アンダーで「ゴルフ日本シリーズJT杯」(東京よみうりCC、パー70)を獲得しました。22歳326日での戴冠は、大会最年少優勝。賞金4000万円を手にし、今季獲得賞金は1億5581万9749円。4月の「関西オープン」以来のプロ2勝目でアマ優勝から通算4勝目。中島啓太に次ぐ賞金ランク2位(来季欧州ツアー出場権獲得)でシーズンを終わりました。最終日はこの2人に石川遼(32)が加わり最高の組み合わせで大会を盛り上げましたが、前日「62」を出した石川遼は後半優勝争いから脱落して通算8アンダー、7位と息切れ。ゴルフ界も世代交代の波が押し寄せている感、ひとしお。中島啓太は国内戦は終わりましたが、来季の米下部ツアーへの参戦をかけた最終予選(12月14~17日、フロリダ州TPCソーグラス)に向け、休む間もなく渡米します。

 

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蝉川泰果のダイナミックなドライバーショット。

今季の男子ツアーを盛り上げた蝉川泰果と中島啓太。それに大会2勝を挙げている石川遼。さらには賞金ランク3位の金谷拓実(25)が優勝争いに加わる展開は、男子ゴルフ“今季最高”ともいえる最終日でした。シーズンを締めくくる最終戦のメジャー大会。蝉川は3日目のラウンドでは1番(パー4)でいきなり100ヤード弱の第2打をバックスピンで直接カップインさせると、17番(パー5)では2オンして2つ目のイーグル。飛ばし屋の本領を発揮する“泰果チャージ”でトップに立ちました。ただし18番(パー3)ではカップの上サイドにつけて、傾斜の強い下りとなって4パット。“東京よみうりの洗礼”を浴びる体験もしました。そして最終日。中島らとの一進一退のデッドヒートは最後まで続き、ひとつ前の組の金谷がバーディーをとった17番では3人トップに並ぶ大激戦。

最終日、最終組で同組で戦った(左から)中島啓太、石川遼、蝉川泰果。ギャラリーの目を一身に集めた(日本シリーズJT杯・東京よみうり)

しかし蝉川はその17番(パー5)で2オンしてバーディー。単独トップへ出て最終ホールへ。1打リードを持った最難関の18番では「きのうは奥につけてしまったので警戒した」と、今度はグリーン右手前ラフへ。“魔の18番”がまたたちふさがるのかと思われましたが、ここで蝉川は25ヤードのアプローチで絶妙なショットを見せます。スピンを効かせたボールはカップ40cmにピタリととめるスーパーテクニック。大ギャラリーの拍手喝采を浴びながら勝利を引き寄せました。叩けば320~330ヤードを飛ばす蝉川ですが、勝負どころでこんな小技の冴えをみせられるのも泰果の“強さ”の秘密です。

 

★このスーパーショットについてのコメント、

ルーキーで賞金王となった中島啓太のゴルフも魅力いっぱい!

「パーかダブルボギーかという覚悟でイチかバチかでした。強く振ってスピンをかける。打った瞬間に手ごたえが凄くあったので“きたな!”と感じた。大混戦にピリオドが打てて自分でもビックリしている。相手はすごいスーパースター選手ばかりなので負けないように、ひとつでもいいショットをと、必死に打って優勝できた。(地元の)大阪で勝てたり、いろんなところで応援してくれるみなさんのおかげ。来年は今年よりも進化していいプレーがもっと生まれると思う。テレビ観戦の方もぜひ会場に足を運んで、応戦してくれると嬉しいです」

ルーキーにして賞金王を決めた中島啓太の安定したゴルフも魅力はたっぷり。賞金王の面目にかけてもライバルに負けられない一戦でしたが、17番(パー5)の明暗が勝負を分けました。最終日、蝉川が17番で2オンのバーディーで通算15アンダーと一歩リードしたあと、中島は2打目で入れたグリーン右のバンカーからカップ1.5mへ。問題のないバーディーパットでしたが、強めに打った1打は左カップをなめ、1回転して外れたのです。天を仰ぐ啓太。
「少し強めにヒットしてしまった。それまでもカップ1個分強めに打つミスが3回あった。ラインは読めているのに・・」と唇をかんだ中島。大詰めでのパットミスが命取りになりました。
今季はお互いに同期のルーキーとしてツアーを一緒に盛り上げてきた2人。
「泰果は最後まで集中していた。でもお互い、いい精神状態の中でプレーできた。最高のライバルと優勝争いができてうれしかったし、楽しかった」と中島。18番を終えると肩を抱き合ってコースから離れました。

同期の桜、中島啓太(手前向き)との死闘を演じ、ビッグタイトルをつかんだ蝉川泰果(手前)。戦いを終わってお互い肩を抱き合って健闘を称え合った(東京よみうりCC)

【蝉川泰果】2001年1月11日、兵庫・加東市生まれ。大阪・興国高から19年に東北福祉大入学。22年9月「パナソニック・オープン」でアマ優勝し、10月の「日本オープン」で95年ぶりのアマ優勝と史上初のアマでツアー2勝目を達成。11月にプロデビュー。今季は「関西オープン」(4月)でプロ初優勝。トップ10入りを9回記録しながらプロ2勝目が長かったが、8ヵ月ぶりにビックな2勝目を引き寄せた。アマ、プロでのメジャー2冠は初の快挙でした。名前の由来はタイガー・ウッズから。来年は主戦場を国内としつつも「目標は海外で1勝すること」(蝉川)と、広く世界へ歩を進めます。

(了)