★病魔と闘う星野英正、会心の優勝!期待を最大裏切ってきた男が・・やっと。

スパルタ教育で星野を作り上げた父親・尹浩鎮さん(右)と母親・喜美江さん(左)
スパルタ教育で星野を作り上げた父親・尹浩鎮さん(右)と母親・喜美江さん(左)

難コースに仕上げられた宍戸ヒルズCC(茨城)を征服した星野英正(30)が圧倒的な強さをみせて男子ツアーの頂点を極めました。大器といわれる選手の中で、もっと も期待を裏切ってきた″未完の大器〝にようやく光が当たってきたようです。父親からはスパルタ教育をうけて育った星野ですが、まぶたがはれ上がって三半規管もおかしくなるというアレルギー系の奇病とも闘いながらの初メジャーV。来年から5年間のシードを獲得、プロ9年目にしてやっと飛躍へのジャンプ台に立った感じです。UBS日本ゴルフツアー選手権は6日に最終日を迎え、星野英正は2位に5打差をつけて通算12アンダーでの優勝。ツアー3勝目で今季の賞金ランキング3位(4492万2300円)に浮上しました。

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念願のメジャートロフィーを会心の笑みで掲げる星野英正(UBS日本ツアー選手権)
念願のメジャートロフィーを会心の笑みで掲げる星野英正(UBS日本ツアー選手権)

端正な顔立ち、スラッと伸びた上背、上体を揺るがさずにスッスッと歩を進める。バーディーがきても渋い顔を二コリともさせない無表情・・。父親・尹浩鎮(ユン・ホジン)さん(62)はこういっていました。「英正が感情を表にあらわさない性格になったのは、私が厳しくし過ぎたせいじゃないかと、ずっと悩んできた」さらに「プロに入って伸び悩んだのも自分が厳しす過ぎたせいじゃないかと・・」とも。アマチュア時代、星野が父親から受けたスパルタ鉄拳指導は並みのものではなかったのです。12畳ほどの自室にネットを張ってアプローチ練習も日課で「700球くらい入るカゴを2箱を打ちきるまで、さぼったりしたら殴られた。もう殺されそうでした。でも、いまの僕があるのはオヤジのおかげ」と星野はいっています。その父親と母親・喜美江さん(59)が仙台の自宅から試合会場に駆けつけ初めてナマで優勝を見せられたのです。「いいプレゼントで親孝行ができました」としんみりとする星野でした。

 宮城県生まれ。東北福祉大時代は日本アマ3勝(96、98、99年)。96年は2位に15打差をつける9アンダー、大会最少スコアで勝っています。97年は日本オープンローアマもとるなどアマ通算52冠。それこそ鳴り物入りで00年にプロ転向しました。そのプロ転向時にはダンロップと5年4億円の用具使用契約、化粧品メーカーのマンダムとは3年1億5000万円プラス出来高払い(金額はすべて推定)で所属契約。新人としては破格の扱いで登場してきたものです。しかしプロ入り後の星野は遅々として花が咲きませんでした。プロ4年目、江連忠コーチと出合った03年5月、中日クラウンズでようやく涙の初優勝。しかしその後も伸び悩んで06年10月、コカ・コーラ東海クラシックで2勝目と亀のような足取りでした。

 

奇病と闘いながらメジャー初Vを手にした星野英正の
奇病と闘いながらメジャー初Vを手にした星野英正の

苦労続きの星野は病魔と闘いもありました。2年前(06年の夏ごろ)のことです。肩甲骨付近の筋肉痛から始まって、その後はアレルギー症状に悩まされました。昨年の6月後半には3週間の入院をするほどの重症でした。まぶたがはれる病気で、眼球も圧迫されて平衡感覚をつかさどる三半規管までおかしくなったそうです。昨年の日本ゴルフツアー選手権は欠場して病院のベッドの上でTV観戦でした。
「去年のいまごろはゴルフどころではなかったんです。3週間入院しても原因がいまだにはっきり分からない。徹底的に調べるなら目を切らなくてはダメといわれています。今年など花粉アレルギーは大丈夫だったのに、まぶたがはれてくるんです。いまもステロイド系の薬を飲んでいます。飲むと収まるんです」平衡感覚を失うのでティーグラウンドが傾いて見えたり、傾斜地でのショットが不自由になるときがあるそうで、クルマの運転も危険なときがある厄介な病にとりつかれているのです。

 そんなハンディをはね返しての今回の勝利は嬉しかったでしょう。飛ぶようになったドライバーも正確で、4日間のフェアウェイキープ率は80.36%。2位を7%も上回った抜群の安定度でした。「正確なティーショットとフェード、ドロー、高い球、低いと、幅広くいろいろな球が打てること。オールラウンドプレーヤーで高いレベルでないと征服できないコースだった。それが自分のペースで3日目もできたので、最終日も初めから自信はあった」と、江連忠コーチと組んで一段とレベルアップした星野ゴルフを自画自賛していました。

 

「ウイナー 星野英正」 を称える18番グリーン脇の電光スクリーン(宍戸ヒルズ)
「ウイナー 星野英正」 を称える18番グリーン脇の電光スクリーン(宍戸ヒルズ)

鳴り物入りでプロ入りしてくる選手の中でも、星野英正は特に期待を裏切ったトップの選手でしょう。その遅咲きの男が、30歳になってようやく自分のゴルフを作り上げてきた感があります。プロツアーで9年がかかった星野の歩み。それをみていると16歳のスーパールーキー、石川遼クンが予選落ちを繰り返しているのも、むべなるかなというところでしょうか。
星野は体調だけは気がかりですが、この優勝で7月31日からの世界選手権シリーズ、ブリヂストン招待(米オハイオ州)の出場権を得ました。5年シードを得た星野が、世界へ羽ばたく手ごたえをつかめるかどうかの試金石にもなる米ツアー挑戦です。