古閑美保をあわてさせた新人・綾田紘子(22)のいけいけゴルフ!

どっしりと安定した綾田紘子のアドレス。ターゲットをにらむ眼光も鋭く、飛ばし屋らしい構えだ(ヤマハレディスの葛城GC1番ティー)
どっしりと安定した綾田紘子のアドレス。ターゲットをにらむ眼光も鋭く、飛ばし屋らしい構えだ(ヤマハレディスの葛城GC1番ティー)

 国内の女子ゴルフツアーは沖縄で開幕した後、四国、九州と転戦してきましたが、4戦目を迎えていよいよ本州に移ってきました。4日に終わった「ヤマハレディス」は静岡・葛城GCの山名コースでの熱戦でしたが、昨年優勝のなかった古閑美保(27)が大混戦を最終18番のバーディーで制して、約1年4ヶ月ぶりの嬉しい優勝を遂げました。宮里藍、上田桃子らが米ツアーに戻ったのをはじめ、横峯さくら、有村智恵、諸見里しのぶ、三塚優子らが米国でのメジャー、クラフト・ナビスコ選手権出場で不在。そのスキ?を狙って古閑美保の優勝でしたが、最後まで古閑を脅かし「あわよくば初優勝!」とまで思わせた新人・綾田紘子(22)のいけいけゴルフが特筆ものでした。″法大5年生″の綾田、一躍名前を売ったシンデレラガールですー。
 
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沖縄で開幕した女子ツアーは、4戦目で本州に登場。ヤマハレディスが行われた静岡・葛城GCは大勢のギャラリーが集まった。(1番ティーグラウンドとスタンド)
沖縄で開幕した女子ツアーは、4戦目で本州に登場。ヤマハレディスが行われた静岡・葛城GCは大勢のギャラリーが集まった。(1番ティーグラウンドとスタンド)

 初日の30位タイ、2日目は13位タイ。最終日は最終組から5組前でプレーした綾田の猛烈チャージでした。アウトは1バーディーの35でしたが、10番の第2打が直接カップインするイーグルで火がつきました。12、13、14番と3連続のバーディーで6つ伸ばして優勝戦線に割って入ってきました。1打差で迎えた最終18番(パー5)では、残り54ヤードのサードショットをSWで「あわや二つ目のイーグル!」と思わせる会心のショットでカップ20センチ。″お先に″のバーディーフィニッシュでこの日7つ伸ばして(ノーボギー)通算3アンダー。この時点で後ろからくる古閑美保と肩を並べるトップでプレーを終えました。
 

昨年優勝のなかった古閑美保。今年は開幕4戦目で早々と2年振りの優勝。美しいドライバーショットが蘇った。(葛城GC=ヤマハレディス)
昨年優勝のなかった古閑美保。今年は開幕4戦目で早々と1年4ヶ月振りの優勝。美しいドライバーショットが蘇った。(葛城GC=ヤマハレディス)

 最終組の古閑が18番で2メートルのバーディーパットを沈めて4アンダー。実力者の貫禄をみせて2位以下を振り切りましたが、綾田はクラブハウスにも戻らずプレーオフの準備をしていたほどでした。きわどい優勝をつかんだ古閑から「ドキッとしたよ!」と声をかけられた綾田は、「上の人にプレッシャーをかけることはできた」と、悔しさの中にも満足感があふれていました。
 
 法大4年生は今春卒業のところ、″留年″でことしはもう一年、大学生プロを演じる綾田です。プロでの新人でありながら、4試合目で優勝争いの2位タイをかちとった彼女は、早くも獲得賞金717万3500円で12位に駆け上がり、シード権獲得へ大きな前進を果たしました。この綾田、ただの″ねずみ″ではありません。プロでのブレークは大いに予測されたルーキーなのです。
 

10歳からテーチングプロの指導を受けた綾田紘子のスイングはダイナミックで本格派。(ヤマハレディスで)
10歳からテーチングプロの指導を受けた綾田紘子のスイングはダイナミックで本格派。(ヤマハレディスで)

 四国・高松の出身。小学時代はサッカー、中学ではテニスにも熱中でした。10歳のころから父親の影響でゴルフのクラブを振り始めると、めきめきと腕を上げゴルフが面白くなったそうです。早くからレッスンプロの指導を受けて本式のスイングを身につけました。父親の仕事の関係で中学卒業のあと東京に転居。高校は共立女子第2高のゴルフ部に入って腕を磨きました。当時から260ヤードのドライブと思い切りのいいアイアンショットが身上でした。04年の関東ジュニアで優勝。05年(17歳・高3)は東日本パブリックアマチュア選手権で勝ちあがり、全日本女子パブリックアマ選手権でも優勝。ともにプレーオフ勝ちという勝負強さも持ち合わせています。
 
 四国にいたころは、明徳義塾高にいた2つ年上の横峯さくらとも顔見知りで戦った仲。その綾田のゴルフは、法大へ進んでからさらに開花します。07年(法大2年)は日本女子アマチュア選手権で福島・東日本国際大昌平高2年の″大物″・酒井美紀をエキストラ2ホール目で破って涙の制覇。同世代の上田桃子、原江里菜、有村智恵らがすでにプロで活躍しているとあって「待ってろよ、って感じ」と言い放ったのは有名な?一言でした。09年(法大4年)は日本女子学生にも優勝。ナショナルチームのメンバーにも選ばれて、朝日杯は07年・09年ととるなど、アマチュア界の第一人者でした。
 

続々登場する若手群像。綾田紘子の最大のライバルは、開幕から2試合連続で「初日首位」に立った森田理香子。(右は古閑美保=ヤマハレディスで)
続々登場する若手群像。綾田紘子の最大のライバルは、開幕から2試合連続で「初日首位」に立った森田理香子。(右は古閑美保=ヤマハレディスで)

 09年は大学4年生で「就職活動の意識で・・」と受験したQT(予選会)でファイナルまでいき41位となって今年のツアー出場が実現しました。従ってまだプロテストは受験しておらず、TPD単年登録者としての扱いです。シードをとればツアー出場には影響ありませんが、今年はプロテストも受験する予定で、それに合格すれば晴れて日本女子プロゴルフ協会のプロフェッショナル会員となれます。 
 この綾田にはサポーターもいち早く目をつけています。所属は伊藤園。クラブなどの用具はヤマハ。ウエアもFIDRAがサポートする予定です。未知数の綾田にこれほどのスポンサーが早くもついているのは驚きです。それほどに彼女にかける期待が大きいのでしょう。
 今年の女子ツアーは森田理香子や藤本麻子、森桜子、宅島美香といった有望新鋭が目白押しです。これら金の卵群像から誰が先に抜け出すか?開幕戦から2試合連続で「初日首位」に立った森田理香子に続くヤマハでの綾田紘子のブレーク。若手の激しい先陣争いに一層白熱度が加わった感が強いですね。韓国勢の強さも凄みがありますが、人気が続く女子プロツアーを支えていくヤングパワーにもご注目を!