ゴルフ界にまた″金の卵〝誕生です! 日本ゴルフ協会(JGA)が毎年表彰しているJGAアカデミック・ゴルフ・アウォード(09年度=第19回)表彰式が3月29日、東京・中央区のJGAで行われ、高校の部では松山英樹選手(18=明徳義塾高3年)、大学の部では槙谷(まきたに)香選手(21=名古屋商科大3年)を選出、それぞれ表彰されました。この賞は、単にゴルフの技術だけでなく、学業、人間性、ゴルフ界への貢献活動など総合的に優れた学生ゴルファーと、そのゴルファーを育てたゴルフ部を表彰するもので、学生ゴルフの健全な発展に寄与することを目的・主旨としています。これまでにも女子で宮里藍、諸見里しのぶ、原江里菜、若林舞衣子、上原彩子、北田瑠衣、森田理香子ら、男子では池田勇太、小林伸太郎、永野竜太郎ら、現在はトッププロとして活躍している人たちが、最優秀もしくは優秀賞を受賞しています。プロへの登竜門としても注目されるアカデミック・アウォードです。
表彰を受けた選手は、それぞれに1200字程度のゴルフに関する作文をJGAに提出しています。学生ゴルファーが書くゴルフ作文とはどんなものなのでしょうか?今回は最優秀賞を受賞した2人の作文(主旨)をのぞいてみました。
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このアウォードは高校生の部、大学生の部に分かれており、両部門別に最優秀賞のほか、優秀賞、奨励賞と3段階の表彰があります。09年度は高校生の部が5人、大学の部が3人の計8人が表彰されました。
高校の部の最優秀賞に選ばれた松山英樹選手は愛媛県出身。09年は日本ジュニア選手権、全国高校ゴルフ選手権、アジアジュニアゴルフチーム選手権の個人優勝とビッグゲームで優勝を重ねました。すでに280ヤードのドライバー飛距離をもっていて大柄な本格派です。08年と10年のJGAナショナルチームメンバーに選ばれています。今春高校を卒業、今年からは東北福祉大に進学。その後プロの道を目指すという新鋭です。
松山英樹選手の作文(主旨)
「4歳のとき、父の練習について行ったのが私のゴルフとの出会いでした。父が1打1打気持ちよさそうにスイングしている姿を見、幼い心は強く引かれていった。~父のドライバーを持ってひたすらボールを打っていた私のあまりの入れ込みぶりに、父が私専用に短く切ったクラブを作ってくれた。それからというもの、私は毎日のようにクラブを振ってはボールを追っかけた。~小学2年生になり、初めて四国ジュニアゴルフ選手権に出て、その試合で百を切ることができたのが自信になり、小学5年で四国ジュニアで優勝することができた。6年生では初めてのプレーオフを体験し、プレッシャーの中競り勝つことができたときの嬉しさ、達成感は以前優勝したとき以上のもので、勝つことの喜び、努力はウソをつかないということを実感することができた。中学1年の春、初めて全国大会に出場し、レベルの差を痛感させられて一層の技術の向上を目指して、何人ものプロゴルファーを輩出している明徳義塾に編入した。~高校に進み、日本アマベスト16、全国高校ゴルフ選手権優勝、世界アマ出場など数々の大会を経験した。~幼いころ見よう見まねで始めたゴルフが、私に努力の大切さ、プレッシャーに耐える精神力、ゴルフをやらせてくれた両親、応援してくださる方々に対する感謝の気持ち・・さまざまなものを教えてくれた。これからも、私を成長させてくれるゴルフを一生懸命頑張っていきたい」
大学の部で最優秀賞を手にした槙谷 香さんは広島県出身。09年度は広島県女子ゴルフ選手権に優勝。日本女子アマゴルフ選手権でベスト16。日本女子学生ゴルフ選手権6位タイなどの実績があります。07年7月にプロ転向した服部真夕は名古屋商科大の1年先輩(2年で中退)。ドライバーの飛距離は230ヤードと、ちょっと物足りないですが、正確なショットと安定したパッティングを身につけているショットメーカーです。大学4年生ですが、今年7月にはプロテスト、秋にはQT(最終予選会)にトライします。早ければ今秋にもプロとしてお披露目する″金の卵″です。
槙谷 香選手の作文(主旨)
「私がゴルフを始めたきっかけは父の影響でした。~小学5年生のとき、練習場のジュニアスクールに入会し、こんな面白いスポーツがあったのかと思うくらい夢中になってボールを打っていました。球を打てば打つほど、もっとうまく打てるようになりたい、さらにはプロゴルファーになりたいという夢を持つようになりました。~ 中学、高校は地元の学校に通いながらゴルフを続けましたが、たくさんの経験をし、もっと視野を広げたいと思い親元を離れて名古屋商科大学に進学しました。大学2年生のときに任された女子副キャプテンの仕事は、キャプテンの補佐をはじめ試合のエントリーなど、ゴルフの練習以外のことに時間を費やさなければなりませんでした。学業もおろそかにすることもできません。私はプロを目指すならゴルフだけに打ち込みたいと思うようになり、先輩に大学を辞めたいと相談すると、「何事も一生懸命取り組むことが大事だ」と、叱ってくださいました。私はこの言葉をすぐには理解することができませんでした。
しかし、強いプロゴルファーとは、ゴルフの技術のみならず精神的にも人間的にも強く、成長した人なんだということに気付きました。そして、3年生になり女子キャプテンを任されました。その甲斐があっていろいろな方々とお会いすることができたり、たくさんの経験をさせていただいています。その中で、目上の方と接するときの礼儀やキャプテンとして、上級生としての責任感を身につけることができました。
現在、女子プロゴルフ界は低年齢化が進み、学生ゴルファー(註=大学生)は減少の傾向がみられます。『プロゴルファーになる』という目標は同じであってもそれまでの過程は人それぞれです。大学に通いながらプロゴルファーを目指すことが『遠回り』だと思う人もいるでしょう。しかし、私はこの大学を選択し学生としてゴルフをさせてもらっていることは、決してムダではなく自分を成長させてくれる大きな意味があり、これからの人生につながるものがあると思っています。
学生生活も残すところあと1年となりました。最後まで学業とゴルフを両立させ、また女子キャプテンとして部活をまとめ「何事も一生懸命」を胸に、さまざまなことに取り組んでいきたいと思っています。それと忘れてはいけないのは、いま私が学業とゴルフに打ち込むことができるのは、ゴルフ部の監督はじめ、叱咤激励してくれるクラブの仲間、どんなときでも見守ってくれている家族、そしてたくさんの方々の支えがあるおかげだということです。この感謝の気持ちを忘れずにゴルフを続け、今度は自分が人のために感動を与えることのできるプロゴルファーになりたいと思います」
《2009年度JGAアカデミック・ゴルフ・アウォード受賞者》
★高校生の部
最優秀賞 松山英樹(明徳義塾高3年・愛媛県)
優秀賞 青木元美(東北高3年・大阪府)
優秀賞 荒井 舞(沖高3年・福岡県)
奨励賞 高田聖斗(まさと)(水城高3年・新潟県)
奨励賞 矢代直仁(なおと)(千葉学芸高3年・千葉県)
★大学生の部
最優秀賞 槙谷 香(名古屋商科大3年・広島県)
優秀賞 袖山哲朗(日本体育大3年・静岡県)
奨励賞 東(あずま) 香里(同志社大3年・岡山県)
安西孝之JGA会長
「ただゴルフがうまいというだけではなく、学業とも両立させた立派な人たちが受賞されるのがアカデミーアウォードです。受賞されたみなさんは、人生において一つの宝物を得たのだと思います。この宝物をさらに磨いてほしい。多くの人にサポートされていることを忘れず、ゴルフルールの第1章にある『エチケットとマナー』をゴルフだけでなく社会に出てからも生かしていってほしい。2016年からはゴルフもオリンピックに参加できることとなりました。新しい目標もできたことは、皆さんともども楽しみでもあります。頑張ってください」