今年こそは!と日本中のゴルフファンの期待を一身に背負って出かけた石川遼のマスターズトーナメントは、昨年に続いて今年も予選通過ができませんでした。6オーバーで5打足りなかった昨年に比べると、今年は1打不足(4オーバー)の惜しい予選落ち。予選カットラインが気になりだした終盤の5ホールは攻めるゴルフを忘れていました。ただただ予選カットラインで頭の中がいっぱいで「体も燃えるように熱くなって、息をするのもやっとだった。パットが打てなくなった」と、涙ながらに語った遼クン。足が俵にかかったとき、逆に開き直れる度胸がほしかった。石川遼に18歳の若さを感じざるを得ませんでした。マスターズの夢舞台で、のびのびと自分のゴルフができる石川遼になれるのは、いつの日なのでしょうか!?
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特別招待で出た昨年と違って、今年は「世界ランキング50位以内」、そして若き日本の賞金王という、堂々たる資格で2度目のオーガスタに乗り込んだ石川遼でした。初日はパープレーで32位とまずまずの出足でした。予選カットが行われる2日目も、アウトはパープレー、インに入ると10、11番で連続ボギー。それでも通算1オーバーで踏ん張り14番パー4を迎えました。5ホールを残したこの時点では30位。予選通過は問題ないかに見えました。
ところが、ゴルフのプレッシャーは″ゴール″が近づくにつれて大きくのしかかってきます。その14番で1.5メートルほどのパーパットを外したのが金縛りの始まりでした。池がきれいな名物ホールの16番(パー3)。右上に立つピンを攻めきれず、バックスピンもかかってボールはころころと傾斜を下ってピンから遠ざかること12メートル。傾斜を打ち上げていくロングパットになって打ち切れず、3メートルショート。パーパットも外して3パットのボギーです。もう遼クンの頭の中は冷静さを欠いていました。17番の長いバーディーパットも僅かに弱くてパーどまり。
大詰めの18番を迎えて3オーバー。「パーなら予選は通る。ボギーなら予選落ちと分かっていた」そうです。重圧は頂点に達した中での最後のドライバーが左に曲がり林の木を直撃です。この1年、なにをさておいても磨きに磨いてきた主武器のドライバーが、ここ一番の勝負どころで曲がるのですからもういけません。林から出すだけで、何とか3オンしたパーパットは5メートル弱。予選通過をかけて、祈るように打ったパットは、カップの左淵をかすめて抜けました。攻めを忘れた遼に、オーガスタの女神は無情でした。
「最後18番のパットは絶対に決めようと思う気持ちでした。タッチはよかったのでカップの1メートル手前までは入ると思ったのですが・・。終盤にきて、強めに打って入らなければ返しで入れるという自分のパッティングができなくなった。体も硬くなり、何を考えたらいいのかも分からなくなった。去年とはまた違う緊張感でした。マスターズの重圧は大きかった。自分の中の自分が、自分を崩していった。最後の方はもうボロボロ。精神的にもきつくなったですね」ー。
考えれば2日間いくつもあった「あとワンストローク」が果たせませんでした。昨年も予選に落ちて涙しましたが、それとはまた違った感情が一気にこみ上げてきた遼クン。小学校の卒業文集に「20歳でマスターズ優勝!」と書いたほどで、オーガスタへの思い入れは人一倍です。その強い思いがまた一層強い金縛りを招いたのでしょうか。しかし、オン・ザ・バブルー予選カットライン上を行き来し始めたとき、パーを守ることにきゅうきゅうとせず「どうせ落ちるのなら勝負をかけて・・」と、むしろ開き直ったクソ度胸をみせてほしかったですね。池田勇太にはあるこの男っぽい勝負魂です。遼クンはまだ若い! 昨年に続いて同組となった24歳のアンソニー・キム(米=韓国出身)は最後まで攻めのゴルフで石川遼を圧倒していました。「アンソニーは楽しんでいるように見えた。ああいうゴルフを僕もしたいんです」と、あとではいえるのですが・・。
日本では18歳にして精神的にも強いプレーヤーに見える石川遼ですが、メジャーの舞台では我を見失ったというほかありません。「自分のゴルフとは何かを考え直し、またあすから練習するしかないです」ー昨年に続いて流した悔し涙は、石川遼をまた一段大きくするのでしょうが、それを見るのは来年でしょうか、再来年なのでしょうか。″20歳″にはあと2年ですが・・。
★予選カットライン★
通常の米ツアーでは第2ラウンド、36ホール終了時点で「70位タイ」まで。マスターズでは2日目を終わって「44位タイ」か、首位から10打差までの選手が決勝へ進める。