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68歳・青木功の強気のパットを見て目が覚めた! シニアツアーでやっと勝てた芹澤信雄

シニア初優勝のカップを富士フィルム・古森重隆社長(右)から受ける喜びの芹澤信雄(左)=富士フィルムシニア
シニア初優勝のカップを富士フィルム・古森重隆社長(右)から受ける喜びの芹澤信雄(左)=富士フィルムシニア

 国内シニアツアーの”プリンス”といわれた芹澤信雄(50)が、やっとシニアツアー初勝利を挙げました。昨年11月に50歳になり、シニアツアーは今季から参戦しました。人気と期待を背負い、自らもこの年頭「シニアの賞金王を取ります」と公言してはばからなかったのですが、いざツアーが始まってみるとさっぱり優勝争いにさえ加われませんでした。シニアツアーも残り2試合になって賞金ランキングも28位(30位までが来季のシード権)。シード落ちの危機さえ感じはじめた土壇場での富士フィリムシニア選手権(6日最終日、千葉・平川CC)初勝利。何が芹澤をこうも苦しめたのでしょうか?
 
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シニア初優勝で喜びの心境をTVインタビューで語る芹澤信雄(富士フィルムシニア)
シニア初優勝で喜びの心境をTVインタビューで語る芹澤信雄(富士フィルムシニア)

 「いや~もう、最高です。何もいうことありません!」優勝してプレスのインタビューエリアに呼ばれたときの芹澤の第一声でした。それもそうでしょう。今年は10人を上回るシニアルーキーが参入したのですが、真板潔、高見和宏、加瀬秀樹・・次々とルーキー初優勝は先を越されました。明るいキャラクター、年齢を感じさせない若々しさ。テレビのゴルフ番組にも多く出演してシニアでも人気の点ではだれにも負けない芹澤がいつ勝つのか。シニアツアーの活性化、人気向上にもつながると、多くの関係者も首を長くして待っていました。開幕戦のスターツシニアを21位でスタートしたのですが、来る試合来る試合、順位は上がってきませんでした。9月のコマツオープンで9位というのがありましたが、トップテン入りはこの1試合だけ。優勝争いにも顔を出せず「芹澤信雄はその程度の選手だったのか」などという声も聞かれ始めていました。
 

優勝カップを抱え、あまり公式の場には出さない幸子夫人(51)=左=と、珍しい芹澤信雄の2ショット(千葉・平川CCで)
優勝カップを抱え、あまり公式の場には出さない幸子夫人(51)=左=と、珍しい芹澤信雄の2ショット(千葉・平川CCで)

 そんな矢先、残りも2試合になった土壇場での初優勝が”突然”きたのですから、まわりも驚きましたし、何よりも本人がびっくりです。3人首位での最終日。10年ぶりのトーナメント優勝、シニア8戦目での初優勝・・という中で、どれだけプレッシャーがかかるか、と心配されましたが、なんとノーボギーで4つスコアを伸ばす68で回りました。並んでいた植田浩史、三好隆は途中で脱落、ベテラン室田淳が67のベストスコアで追い上げてきましたが、動じませんでした。トータル10アンダーと、ただ1人、2ケタアンダーにしての堂々たる勝ちっぷりでした。
 
 レギュラーツアーでは5勝を挙げ、”パットの芹澤”といわれたほどのパットの名手でした。その得意のはずのパットがシニアにきてからというもの、すっかり往年のカゲをひそめていたのです。同僚プロからの「芹澤はパッティングが変わったね」とのカゲの声は随分聞いていました。フォローまでしっかり打っていたパットが、こわごわとミートして終わりといった打ち方になっていたのです。
 「オーバーしたら返しが怖いと、ジャストタッチのパットになっていた。カップをオーバーするような強気のパットが打てなくなっていた」と、いま芹澤は述懐しています。あまりの不振続きで悩み、年頭に公言した「賞金王・・」発言も反省、「自分はシニアにきたからといってすぐに勝てるような選手じゃないんだ」と、自らに言い聞かせてから気持ちが楽になったそうです。
 

ドライバーも46インチにして「10ヤード伸びた」と、やっと好調を取り戻した芹澤信雄(富士フィルムシニア=千葉・平川CC)
ドライバーも46インチにして「10ヤード伸びた」と、やっと好調を取り戻した芹澤信雄(富士フィルムシニア=千葉・平川CC)

 とにかくカップの向こうまで”打つ”パットを心がけるようにしたのです。この試合は、上海のHSBC選手権に遠征していた藤田寛之の梅原敦キャディーを借り受けました。「こんなとき藤田はどう打ってる?」ー何度も芹澤は梅原キャディーに聞きました。「怖れずに、もっとガンと打ってますよ」ー梅原キャディーが答えました。今季好調でパットも上手な藤田寛之からも何かを盗み取ろうとしたのです。初日、同じ組になった青木功にスタート前「そんなひ弱な打ち方じゃダメだよ」と、助言も受けました。68歳にして強気で打つ青木功のパッティングを身近で見てハッとしました。1番ホール(グリーン)で同じように強気で打ったら、4パットのダブルボギーにしたという笑えぬエピソードもありましたが、快速グリーンと評判だった平川コースで「勇気をもって”打ち”続けたらレギュラー時代に近いパットの感覚を取り戻した」(芹澤)そうです。
 
 2日目には8バーディー(2ボギー)も奪って「66」を出し、優勝への大きな土台を作りました。「8バーディーなんて久しぶり。自分でないみたいでびっくりした」と振り返っていました。3年前に長尺パターにしたことがジャストタッチしか打てないパッティングになったそうで、長尺は1年でやめたのですが、その弱い感覚が残ってしまったのです。
 
 43歳のころには左肩を痛めてシード落ちの苦しみも味わいました。47歳のとき「シニアには間に合わそう」と、左肩けんばん損傷を人工腱でつなぐ内視鏡手術も受け、いまでは左肩の違和感は全くなくなっているそうです。さまざまな苦労の末に、芹澤信雄はなんとか蘇りました。今年はシニアツアーは残り1試合。優勝賞金2,160万円のHANDA CUP シニアマスターズ(埼玉・おおむらさきCC)です。もしこれに芹澤が勝つようなことがあれば、大逆転の賞金王に上り詰める可能性が残っています。年頭に公言して自分を苦しめた”賞金王発言”も、ウソではなくなるのですが・・。