先週は日本で池田勇太が優勝すれば、今週は石川遼(19)が米ツアーで惜しくも初優勝を逃がす4位フィニッシュ(米ツアー自己最高)と、日本の誇る“遼&勇太”が暑さを吹っ飛ばしてくれました。年間4試合あるWGC(世界ゴルフ選手権シリーズ)の今季3試合目、ブリヂストン招待(米オハイオ州アクロン)の最終日は、石川遼がアダム・スコット(豪=31)と最終組を二人で回る初めての経験。1打差2位からのスタートで、初優勝の夢がふくらみましたが、一時はトップに並んだ興奮も、最後はすきをみせないスコットに突き放されて5打差の4位タイに終わりました。最終日・最終組の優勝争いで競り勝つ力は、まだ遼にはありませんでした。ズルズルと大きく後退しなかった頑張りが、せめてもの救いでしょうかー。次週は、今年最後のメジャー、全米プロゴルフ選手権に続いて挑戦する“遼&勇太”が、どんなゴルフを見せてくれるか、注目です。
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最終日を迎えて初優勝が見える位置に浮上した石川は、あえて淡々とした顔で話しました。「最終日、冷静に回るのは難しいと思う。初めてのことなのでどうなるか分からないですが、今週は“コースではなく練習場だと言い聞かせて打つ”に専念してきたので、明日もそう思い込むしかない。今週は(リカバーショットも)うまくいき過ぎくらいうまくいっていますから」。
今年のマスターズでは20位に入る健闘をみせた遼です。昨年の全米オープンでは、首位に9打差の7位で最終日を迎えましたが「80」の大たたきで33位に沈みました。米ツアーでこれまで24試合。さまざまな経験を積み重ねて成長してきた石川。「最終組で回っても、不思議と場違いな感じはないですね」といえるまでになりました。
そんな石川ですが、1番で3メールにつけたいきなりのバーディーパットをミスしました。2番(526ヤード、パー5)、ピン右2メートルあまりに2オンしたイーグルパットがまた入りません。イージーバーディーにはしましたが、ここはスコットもバーディーで差は縮まりません。3番、4メートルのバーディーチャンスをやっと沈めて連続バーディー。首位スコットに並ぶトップタイで色めきたちました。しかしすぐ4番で左ラフに入れたボギーで後退。パーを続けるスコットに対して石川は出入りが激しくなります。6番では5メートルを沈めてまた首位に並びかけたと思うと、8番はグリーンを外し、3メートルのパーパットが入らず、1打差をつけられたまま前半を終えます。まだまだ大健闘でした。
最終日の大詰め、バックナインに入ってからが、スコットと石川には歴然としたキャリアの差が出てきます。10番はともにバーディーでしたが、石川がスコットに対等に戦ったのはここまででした。スコットは12番、グリーンエッジのラフから5メートルをチップインバーディ。14番は長いパットを見事に読んで、相次いでバーディーパットを沈めます。15番で二人の象徴的なパー3がやってきます。221ヤードのショートホール、石川は4Iで手前15メートルに乗せました。5Iのスコットはグリーンを外して左ラフ。チップも3メートルショートして、唯一のピンチらしいピンチでした。が、スコットはこれを難なく沈めてパーセーブ。ここがチャンスと思ったのでしょうか、石川の強気のパットは2メートルオーバー。返しも外して3パットのボギーという結果です。16アンダーのスコット。12アンダーまで落とした石川。4打差がついては、“残り3ホール”では苦しい展開でした。
まずボギーをたたかないスコット。豪州の期待の星として登場してきたころは「ホワイト・タイガー」の異名をとるほどで、天才肌のゴルファー。いまや31歳と時間は過ぎましたが、米ツアーではすでに7勝。今年のマスターズでは2打差の2位に入っている実力者です。17番に続いて最終18番もドライバーは置いて、フェアウェイウッドでフェアウェイを確実にキープ。1.5メートルにつけた最終ホールをバーディーで締めて計5バーディーでノーボギー、65。最終ホールを右ラフに入れてボギーとした石川は、それでも1アンダーの69で回りましたが、逃げるスコットの17アンダーには全く追いつきませんでした。通算12アンダーの4位タイ。石川の米ツアー25試合ではベストのフィニッシュでしたが、前日まで好調だったパターがいまひとつ決まらず、ショットも曲げて4つのボギーは致命的でした。最終組で勝ち抜く力量は残念ながらまだ持ち合わせていない、というのが正直なところでしょう。
石川遼のコメントですー。
「きょうもリラックスしてプレーができました。自分としてはいいまずまずのゴルフができたと思いますが、スコットのゴルフはほぼ完璧。スキがありませんでした。自分がトップに並んだときも、リードされたときも特に気持の変化はなかったです。最後の3ホールが勝負と思っていたので1打1打に集中してやっていました。いいプレーもできたのに、ボギーが多かったのは残念です。その分(スコットに)離されていったですね。最終ホール(右の林)はセカンドでもっとグリーンの奥にいくくらいに打てばよかった(グリーンをショート)。あれも悔しいですね。でも、いくつか“ナイスプレー”と声をかけてもらってうれしかった。次につながる試合でした。来週の全米プロ(11日初日)もまたスコットと回るので楽しみです」
全米プロは初日、2日目、石川遼はアダム・スコットとマテオ・マナセロ(イタリア)と同組で回る組み合わせが決まっています。
RYO ISHIKAWA
この名前は、今回で一層世界に発信されたことも間違いありません。テレビ中継でも最終組で最後まで優勝争いを演じた石川のプレーは最大もらさずにカメラが追っていました。初日の最終18番で民家の庭先に打ち込み、柵や街灯でグリーンが見えない約55ヤードを3メートルに寄せたミラクルパーセーブのシーンも全米に放映されました。これをTVで見た著名なレッスンコーチ、ブッチ・ハーモン氏が2日目の練習グリーンで石川に歩み寄り「テレビで見たよ。すばらしいパーセーブだった」と声をかけたそうです。タイガーも教えたハーモン氏に「石川遼」はしっかりと覚えられました。2日目には2番(パー5)で左ラフからの82ヤードをSWで直接放り込むイーグルも披露しました。3日目の10番(パー4)では第1打を左の林に曲げ、木の下からの残り120ヤード。地面とすれすれの低い弾道で打ち、花道を転がし上げて2.5メートルに寄せ、バーディーを奪う離れ業もみせました。連日、ハラハラドキドキさせる石川のゴルフは、まだ未熟な一面なのでしょうが、すっかり米国ギャラリーを楽しませたようです。
この試合、石川は4日間でパット数平均25.3で2位。サンドセーブ83.3%で7位。バーディー17個(10位)は立派。ドライビングディスタンスは300.8ヤードで29位でした。
ロリー・マキロイ(英国)、リッキー・ファウラー(米国)に石川遼を加えた若手3羽ガラスが「トリプルR」と呼ばれています。
「僕の実力は二人にはまだまだ及びません」と謙遜してきた石川ですが、今回は2位のファウラーには負けましたが、6位のマキロイのは勝ちました。一歩一歩、階段を力強く上っていく「石川遼」は頼もしい限りです。