いま脚光を浴びる“韓国パワー”は、日本のシニアツアーにも勢力を伸ばしてきました。日本のゴルフ界は男子も女子も、そしてシニアツアーまでもいまや韓流に席巻されそうです。21日に終わったシニアツアー今季第2戦「ファンケルクラシック」(静岡・裾野CC)は、50歳から参入できるシニアルーキー、金鍾徳(キム・ジョンドク)が初日から突っ走って完全優勝。しかも16アンダーは大会新記録。シニア参戦2試合目での初優勝は、2005年の室田淳以来のスピード達成。優勝賞金1,500万円を獲得して賞金ランク1位に立ちました。日本のレギュラーツアーでも4勝している金は、旧知の中嶋常幸や室田淳から「キムさん、日本はいいから早く米シニアに行って!」とやんわりと追い出し?にあっているらしい。そのためではありませんが、今秋には米シニア(チャンピオンズツアー)のQT(最終予選会)に挑戦する金鍾徳です。
◇◆ ◇◆
3日間トップを守って完全優勝した金は、試合後18番グリーンでの表彰式のスピーチで「日本の先輩のみなさん、ごめんなさい!」と、帽子をとってペコリと頭をさげました。シニアツアーは、全選手が表彰式に居残って参列するのですが、日本のシニア連もなんだかなめられた感もしないでもありません。金はこんなことも言いました。「このコースは、自分の韓国のホームコースに似ていて、とてもやさしく感じました」ー。
もういけません。必死になって追いかける日本勢は形無しです。初日はノーボギーの9バーディー、63の大会ベストスコアで飛び出した金は首位を走り続け、最終日は3打差で追った奥田靖己や、6ホール連続バーディーなどで一時は1打差にまで迫った佐藤剛平をものともせず、自分も3つ伸ばし、3日間60台のスコアで追随を許しませんでした。
何といわれても仕方のない完全優勝。50歳になっても「285ヤードは飛ぶ」(金)という長打力と、長尺を操ってのパットのうまさは1級品。この大会でも322ヤードを飛ばしてドラコン賞(2日目・16番=賞金50万円)をゲットしています。最終日、佐藤剛平に1打差と迫られたあとの14番では、右に曲げてつま先上がりの深いラフ。前方には立ち木が並ぶピンチがありましたが、慎重なクラブ選びのあと8番アイアンで185ヤードを木越えに打って6メートルに2オン。これをねじ込んでバーディーにしてしまうしぶとさでした。降雨で中断した16番では、15分後の再開直後、残していた1.5メートルのバーディーパットを確実に沈めるなど、全くスキをみせない韓流の強さ。まるで、レギュラーツアーの賞金王、石川遼の天敵・金庚泰(キム・キョンテ)をほうふつさせるゴルフでした。
キョンテといえば、金の25歳の長男は、韓国の名門・延世大学でキョンテと同期生だとか。日本はじめ海外で活躍する韓流ゴルファーのパイオニアとして日本ツアーで地盤をつくった金鍾徳。今度はシニアエイジになって、再びよみがえってきたという感じです。友人5人と副業で経営していた化粧品会社がうまくいかず、「3年前にはストレスで胃を痛めた」そうですが、いまではそれも解消して元気いっぱい。「私、まだ若いですから体も大丈夫。QT受かったら来年からはアメリカにいきます。アメリカのシニアは賞金も高いし、試合数も多いから」と、貪欲さも人に負けていません。
ただひとつ、気になることは、金鍾徳のプレーの“遅さ”です。ひとつ間違えばスロープレーにもなりかねないプレーぶりは、同伴選手からブーイングが聞こえてきます。最終日、3打差の2位で金と同組でプレーした奥田靖己は逆に早打ちで有名な選手。「疲れたよ。最後まで自分のリズムになれなかった。パットがまるで入らなくなった。キムさんのゆっくりしたテンポに合わなかったけど、それを理由にはしたくない。次には頑張るよ」と、言葉すくなにコメント。2位から5位に落ちて終戦でした。ゴルファーにはいろいろなタイプがいます。相手のペースにはまっては負けですから、泣き言はいってはいられないのも現実ですがー。
それはともかく、男子レギュラーツアーでは昨年の賞金王の金庚泰(キム・キョンテ)が今年も断然の強さを誇っていますが、ファンケルと同時に開催された関西オープンでは、趙珉珪(チョ・ミン・ギュ=23)が日本ツアー初優勝を果たしました。女子では昨年の賞金女王、アン・ソンジュ(23)が今年もすでに3勝して連続賞金女王を狙っています。
ああ、韓国パワーに飲み込まれそうな日本のゴルフ界です・・。