宮里藍(26)は、ヤニ・チェン(23=台湾)にどうしても勝てません! 米女子ツアーの今季第4戦、RRドネりー・ファウンダーズカップ(アリゾナ州フェニックス)。宮里藍は最終日、ヤニ・チェンと最終組を回って、今度こそ、と期待がかかりましたが、またまた藍69、ヤニ68で1打負け。通算ではヤニ18アンダー、藍17アンダーでヤニが今季2勝目です。藍は今季第1戦のホンダLPGAのビデオをみているような1打差2位。プライベートでは“親友”のヤニは、まさに目の上のたんこぶです。藍ちゃんは、3戦して2位2回と6位。全てトップテンに入って優勝にからむ好調なシーズンの出足ですが、今季の賞金レースを制するには、ヤニ・チェンに勝てるかどうかにかかっているようです。
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会場のアリゾナ・フェニックスは、藍がここ4年間春の合宿を続けたなじみの土地。ご当地がお気に入りの藍は、昨年このフェニックスに自宅を購入したばかり。大会は自宅から通う好条件。アリゾナ在住で指導を受けているメンタルコーチ、ピア・ニールソンらも顔をみせ、米ツアー7年目の藍には準ホームの試合でもありました。初日からパットも好調。ショットは全部フェアウェイをとらえる(初日)ゴルフで、4日間とも60台で回る安定度でした。特に風が強かった3日目。6バーディー、ノーボギーのベストスコア66。首位を走る世界ランク1位、ヤニに一気に肩を並べる勢いもみせました。
「今度こそヤニにリベンジできるか!」藍の胸中にも熱いものがふつふつと・・。藍の今季第1戦、タイでのホンダLPGAを思い起こさずにはいられませんでした。やはり首位で迎えた最終日。1打リードされた最終18番(パー5)。藍が3打目のアプローチを2メートル強につけたあと、ヤニはその内側、ピン30センチにつけるスーパーショットで譲らず、ともいバーディー。1打差は縮まらず、ヤニに競り負けての悔しい2位。「自分の力は出し切ったけど、ヤニがひとつ上だった気がする」と、シャッポを脱いだ藍でした。
今季3戦で、もうヤニと2度目の最終日決戦。雪辱に燃える藍の闘志は、素晴らしいゴルフで実証されました。4日間を通して19バーディー。ボギーはたったの2つでした。
勝っておかしくない藍のゴルフでしたが、勝負事は相手に勝たなくてはなりません。同スコアで出た最終日。ヤニの7、8番の連続ボギーがあって、前半9ホールでは藍が3打のリードでターンしたのです。
「きょうこそは勝ったか!!」藍がそう思ったとしてもおかしくありません。しかし・・世界ランク1位の底力は、ここからでした。10、11番を連続でとったヤニは13番でもバーディー。バックナインに入ってバーディーがピタリと止まった藍をここで捕らえました。と思うと、14番、15番も・・何と3連続バーディー。 残り3ホールとなったところで藍に逆に2打差をつけて単独トップに立ったヤニ・チェンの強さは、どこからくるのでしょう?
16番のパー3で藍はようやくバックナイン初のバーディー。1打差に詰めましたが、もうそこまででした。バックナイン5バーディーで31で回ったヤニ。35の藍。絵に描いたような逆転うっちゃり負けでした。
最終日。藍はフェアウェイキープは14ホール中13回。パットは28。パーオンは18ホール中13回。サンドセーブは1回をミスなく成功させ、文句のない内容でした。あえていえば、ドライバーの飛距離は228.5ヤードとやや物足りませんが、得意のアイアンとアプローチ。それに好調だったパットも加えてトップクラスのゴルフをしながら、ヤニとの「勝負」に勝てなかったのです。
「ヤニとプレーするのは常に楽しみ。彼女とラウンドすると、いい刺激をいつももらえる。今週も最終日最終組で一緒に回れるのはホントに楽しみ」と藍が語ったのは、3日目のホールアウト後でした。その最終日は、またヤニに名をなさしめました。26歳の藍。23歳のヤニ。相手を称えるのは素晴らしいですが、もっとこの強力なライバルに襲いかかる“激しさ”が、藍に欲しくなります!
静かに、マイペースでことを運んでいくのが″宮里藍のゴルフ〝なのでしょうが・・。
今季の藍は、昨年まで使っていたブリヂストンのGRC1から「ツアーステージVIQ(フォージド)プロトタイプ」にアイアンだけ変えました。球が上がりやすく方向性もいいアイアン。スピンに弱かった藍にもよくスピンが効いて、今季のアプローチは冴えています。
試合が終わって宮里藍のコメント。
「ショットもよくチャンスも多かったが、大事なところでパットが決まらなかった。そこがヤニとの差になった。フィーリングはいいので優勝は近いと思う」
2週後には、今年初のメジャー「クラフトナビスコ選手権(カリフォルニア・ミッションヒルズCC)」が近づきました。今季、早くも2度までも痛い目にあわされたヤニ・チェン退治は、メジャー大会が似合います!!